ブックリスト登録機能を使うには ログインユーザー登録が必要です。
注意。オリキャラ(転生系)が登場します。
―起―
講釈の一『天の御遣い光とともに落ち 桃園の姉妹義をもって起(た)つ』
「ここは何処?私は誰?」
いや、「誰」に関してははっきりしている。北郷一刀。間違い無い。
だが「ここは何処?」
どう見ても、聖フランチェスカではない。そもそも、日本であるかすら怪しい。
ひたすら地平線まで続く、黄色い平原。そのど真ん中。

そして、足元で目を回している「黄巾賊」3人組。
そう、一刀が好きな劇画やゲームに出てくる、黄巾賊のコスプレ(?)をしたこの3人にカツアゲどころか、
蛮刀(ただ刀というとなぜか自分の名前を馬鹿にする様な気がする代物)を突きつけられて、
身包み剥がされるかと思った刹那、
颯爽と現れた眼前の美少女が長刀(?)で薙ぎ払ってくれた。
先ず、その事については素直に礼を言っておこう。
だが「ここは何処?俺は何をしている?」
・  ・  ・  ・  ・
沛国譙(しょう)県「この時代」中国中にあったであろう、豪族の屋敷。
その中央にある楼閣を、一刀と同年ぐらいの少年が見上げていた。
「華琳姉さん、何を見ているの」
「何も。強いて言えば時代かしら。そうよ仲徳。時代が動き出しているわ」
楼閣上から、遠く地平を見据えている姉の声に、1人誰にも打ち明けられぬ想いを抱く。
「確かに、時代は動き始めている」
彼、曹仲徳には「前世」の記憶があった。その記憶が、時代が動き始めている事を教えてくれる。
そう「姉」が「兄」でない事に驚く様な類の「前世記憶」が仲徳にはあった。
・  ・  ・  ・  ・
「ええと…つまり」
「はい、私は姉妹の誓いをなした同志と2人、この乱世に苦しむ人々を救いたいと願い」
しかし、個人の「武」では目の前の何人かを救えるのみ、
われらの「武」を活かし、人々を救える主君に仕えたいと、使えるべき主を求めて旅をしてまいりました。
「その折、管路という占者から、この地に「天の御遣い」が落ちて来るとの予言を聞き、あなた様を探しておりました」

「いや、俺はそんな大層な者じゃ…」
「その様な事」
この予言の地に流星と共に降り立ち、光り輝く見た事も無き衣をまとったあなた様は、
まさしく「天の御遣い」に他ならず。
「光り輝く衣って…」
聖フランチェスカの制服は、ポリエステル100%の繊維にコーティングした生地で、しかも色は純白。
確かに陽光を反射して、光り輝いても見えるだろう。
この時代に、こんな生地がある訳でもないのだから、初めて見れば驚くかも知れないが。
そう「この時代」
目に耳に入る全ての情報が三国時代、それも「黄巾の乱」の真っ最中にタイムスリップしたと示していた。
「(落ち着け、落ち着け、俺)」
「(とにかく、現状を整理して)」
一刀が沈黙すると、目の前のサムライ美少女も言葉を待つように沈黙する。しかし、すぐに静かさは破られた。
「姉者―!!」
何やら、黄土を巻き上げて走って来る。いや、それは元気いっぱいの少女だった。

「誰なのだ、このお兄ちゃん」
その言い方がお似合いの年頃に見える「チビッ子」しかし、
一見、その身に似合わぬかとも見える「蛇矛」(?)を軽々と振り回し。
「蛇矛?そういえばあの長刀もまるで青龍偃月刀だな」
三国志ファンの一刀には見覚えがある。
(いやいや、それどころじゃない。とりあえず、とんでもない誤解を解かなくちゃ)
「ええと…さん?(しまった)ごめんなさい、何と呼んだらいいですか?」
「これはとんだご無礼を。あらためて名乗らせて頂きます。わが姓は関、名は羽、字は雲張」
「姓は張、名は飛、字は主君になる人に付けて貰うのだ」
「ええ?!」
関羽に張飛だって。女の子じゃないか。
・  ・  ・  ・  ・
曹操孟徳(真名華琳)と仲徳の姉弟は、祖母であり当主でもある曹騰に対面していた。
性:曹 名:騰 字:季興 真名:華恋(かれん)
華琳の祖母。宦官ではなく、当時の幼帝の乳母から権力を握り、
女性が当主となり、武将や文官として活躍できる先達となった。
しかし「十常侍」などが跋扈する先達にもなってしまったため、
曹一族の政敵etc.からは何かと当てこすられる所以にもなっている。
・  ・  ・  ・  ・
どうやら、単純なタイムスリップというよりは、パラレルワールドとからしい。もう、何でもありだ。
少なくとも、あの「銅鏡」が突然光りだした時から。
そう納得ないしは開き直ってみると、成る程、
女の子だけど、確かに関羽だし、張飛だと思えるようなキャラだし、それに結構可愛い。
それにしても、何故、2人だけ?劉備はどうした?
そういえば、張飛に字がなかったから、まだ、出会う前だったのかな。確か「益徳」という字は「玄徳」からもらった筈だ。

「ご主人様」
「え?」
「あなた様にここで出会った事が、われら姉妹の天命。さあ、われらとこの国の民を救いに…」
「待ってくれよ。俺は「天の御遣い」なんかじゃ無いよ」
たまたま、黄巾賊から救ってもらっただけの、何の力も無い男だよ。
「………………」
「………………」

「分かりました。残念ですが」
また、何時か出会う主を求めて旅を続けます。
しかし、その間も、この国の民は苦しみ続けます。こいつ等の様な賊や、民を護る事を忘れた官のために。

ズキッ…
良心が痛む。関羽の言葉には嘘は無い。
それに、やっぱりこんな可愛い女の子たちがガッカリしているのは見たくない。
「待ってくれよ」
背を向けて歩き出そうとした、関羽と張飛に一刀はもう一度呼びかけた。
「俺は「天の御遣い」なんかじゃ無いかも知れないけど」
君たちが関羽と張飛なら、そしてさっき言った様にここが幽州涿(たく)郡なら、
君たちが仕える筈の人というか、
君たち2人じゃなくて、3人の兄弟、ここでは姉妹かも知れないけど、
その一番上になる筈の人がこの近くにいる筈なんだ。

「まことですか、それは」
「うにゃ、もう1人お姉ちゃんが出来るのだ?」
「その人は劉備玄徳」
涿郡楼桑村の、今は没落しているかも知れないけど漢王朝の中山靖王の子孫で、
この乱世にはお人好しかも知れない、敵からは偽善と言われるかも知れない、
だけどそれだけに、関羽や張飛だったら、一度「妹」になったら,
どこまでも守ってあげたくなる様な、
どこまでも同じ理想を追いかけたくなる様な「義」の人の筈なんだ。

「その様な方がこの近くに」
「そのお姉ちゃんは何処にいるのだ」
「俺が知っている話だと」
確か、楼桑村と言うのは、タワーいや、この時代なら楼閣だよな。そんな感じの桑の大木が地名のゆかりで、
それから、今が君たちの出会いの時なら、おそらく近くに桃の花が盛りの果樹園がある筈なんだ

「うにゃ、あれなのだ」
背伸びしていた張飛が蛇矛を向けた先。
なる程、どこまでも黄色の地平線の中でその方向の彼方だけ、かすかにピンクに霞んでいて、
その向こうから、距離からすると、やけに大きい桑の木らしきものが頭を覗かせていた。
「有難う御座います。やはり、あなた様は「天の御遣い」でした」
いかにも関羽らしい丁寧な礼を残し、張飛の手を引いて歩み去っていった。

用件を1つ済ました気になって、さて、あらためて考えてみると、
「これからどうしよう」
ここは三国時代、それも黄巾の乱の真っ最中の乱世に1人放り出されてしまった。
とにかく、生き残らないと。とりあえず、直近の問題として「一宿一飯」があって、
それから、まだ足元で目を回していた黄巾賊がいる。
とりあえず、こいつらが来たのとは反対の方向が、安全だろうと考えて、先ず歩き出した。
さっきの2人の後を追いかける方向になっているのは、多分、偶然だよな。
・  ・  ・  ・  ・
なる程「楼桑」だな、これは。そう素直に思う桑の大木の根元というか、
「桃園」とその桑との間に、いかにも「没落した元お屋敷」らしきものがあって、塀の破れ目から覗くと、
さっきの関羽と張飛が、遠目にも「美少女ゲーム」の正統ヒロインといった女の子の前に片膝を付いている。
その少女は作りかけのむしろらしきものを膝に乗せて、じっと関羽の話を聞いている。
「あれが劉備?やっぱり女の子?」
やがて、劉備らしき少女は、部屋の隅に無造作に立てかけられていた、しかし、
改めて見ると、いかにも「伝家の宝剣」といった剣を手に取った。
・  ・  ・  ・  ・
「中山靖王伝家のこの宝剣を抜く時が来たのでしょう。分かりました。私もあなたたちの姉妹に加えてください」
・  ・  ・  ・  ・
「劉備玄徳」桃花の薄紅とモザイクになった蒼天を「靖王伝家」の宝剣が指す。
「関羽雲長」左右から「青龍偃月刀」が、
「張飛益徳」そして「蛇矛」が合わせられる。
「「「我ら誓う」」」
我ら三人、姓は違えども姉妹の契りを結びしからは、心を同じくして助け合い、困窮する者たちを救わん。
上は国家に報い、下は民を安んずることを誓う。
同年、同月、同日に生まれることを得ずとも、願わくば同年、同月、同日に死せん事を。
天よ地よ、この心の真実を。義に背き恩を忘れるならば、天も人も殺したまえ!
――― ――― ――― 
ここは、涿郡近くのただし楼桑村とは別の村の豪族の屋敷、
この屋敷の当主である簡擁は、劉備たちの義勇軍の“スポンサー”をかって出たそうで、
現在「桃園」の「2次会」ともいうところの宴会が開催されている。
で、北郷一刀は何をしているかというと、そのドンチャン騒ぎに紛れ込んで、ようやっと「一飯」にありついていた。
「(やっと、性別からして俺の知っている「三国志」通りのキャラがいたよ)」
さて、今度は「一宿」をどうするか?などと考えていると、
宴会の“ホスト”である簡擁がいつのまにかそばに居て、
それだけならともかく、
たしか上座で「爵」(この場合、伝統的な乾杯用の青銅器で間違いない)を持っていた筈の3姉妹が、近くに来ていた。
「あなたが「天の御遣い」ですか?」
このとき一刀は、初めて近くで、そして正面から劉備を見た。
「あなたは…」
「君は…」

「姉者、どうされました?」
「どうしたのだ?桃香お姉ちゃん」

劉備玄徳(真名桃香)を見た一刀の頭を駆け巡っていたのは、何と某ラブコメだった。
校則をかいくぐって寮に持ち込まれた「お見合い結婚から初恋と純愛が始まった」とかいう、
そういう漫画の中では有名な。
それでは続きは次回の講釈で。
次回は講釈の二『再びの天のお告げは伏竜鳳雛 三顧之(さんこの)礼にて魚は水を得る』の予定です。

― 蛇足 ―

曹仲徳
曹操「孟徳」という字は、普通「仲徳」とか「季徳」とかいう弟がいる長男が名乗るらしいです。
「正史」「演義」では、曹操の弟は余り目立たないので、返ってオリキャラにつくりやすいと思いました。


+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。