依存・命意・信頼
―依存―
―すみません
急に謝られた
僕は何の被害も受けていない
その人には何の非もない
謝りたかったから謝った
ただそれだけだ
何か返そうとしてしかし言葉が見つからず
冷めたコーヒーを口に運ぶ
じわりと苦味が広がる
カップを置いて居場所の無くなった僕の手は
ふわふわ彷徨って花瓶の花を潰した
じゅわっと音を立てて
命が消えた
―申し訳ない
再び声を聴いた
―もういいですよ
何も無かったくせに
―私はあなたを傷付けた
―もういいですよ
―赦してください
―もういいですよ
次第に不機嫌な声を出す自分に気付いた
お腹が空いたからかも知れない
そんなこと構いもせずに
その人は続ける
―花は死にましたよ
顔も見えない人は言った
―花は死にましたよ
窓硝子がその言葉を反射して
ぐにゃりと曲がるのを見た
仕方ないので僕は席を立った
空は真白だった
僕には帰る家が無い
花を潰して申し訳ないと思った
人を見つけて謝らなくちゃならない
重大な用事が出来た
探さなくちゃ
何をしても離れられない
自身のすべてを依存出来る人間を
―命意―
僕の命に意味があるとしたら
それは何ですか
誰にとってどんな意味があって
それが発揮されるのはいつですか
いろいろな人が僕を見て
大丈夫だよと励まして行きました
それを信じて生きてきました
本当ですか
僕はここに居ていいんですか
どうしてこんな不安定な僕を
君は愛してくれるんですか
寂しかったんです
自分にすら見捨てられて
誰も僕を見なかった
君以外誰も
どうして見てくれるんですか
どうして笑ってくれるんですか
どうして隣りに居てくれるんですか
僕でいいんですか
汚くて小さくて頼りないこんな僕で
本当にいいんですか
もし
もしも
いいと言うなら
君が頷いてくれるなら
僕はすべてを
持っているものすべてを懸けて
あなたを守ります
雨が降るなら傘になる
泣いているなら太陽になる
笑っているなら花を届ける
寒いのなら抱き締める
ひとりが嫌なら手をつなぐ
話したくないなら黙ってていい
動かぬ口にキスをするから
たとえ死んでしまっても
僕は君と居ようと思う
月になって雲になって風になって見守るから
いつか君が僕を
見てくれたように |