使命・月裏・共歩
―使命―
その花を
あなたは何に使うのですか
よければ私に一輪
譲っていただけませんか
居間に飾るのです
長椅子に腰掛けると
ちょうど見える辺りに
ほら
分かりますか
あそこに茶色い
小窓があるでしょう
そう
ツタの絡まった
赤い煉瓦の古い家です
あの窓辺に
飾ろうと思うのです
我が家にはランプしかありませんから
夜になるとえんじ色のカーテンに
ぼうっと花の絵が浮かぶでしょう
たいそうきれいだと
思いませんか
だからその花を一輪
私に譲ってくださいな
あなたが切り捨てたその命を
私に拾わせてください
―月裏―
月の裏側に
落とし物をしたので
今から拾いに行こうと思うんだ
もうすぐ電車が来るよ
薄暗い車内
がたがた揺れる椅子に座って
一緒に月まで
付いて来てくれないか
何分怖がりな性格で
ひとりで行くには心細いし
たまには君とふたりきりで
星を眺めたりしたいんだ
そうするとね
そうするときっと
月の黄色と
地球の青とが
重なってひとつになって
あの冷えた空高く飛ぶ
緑色の大鷲みたいに
淡くて儚い色になると思うんだ
だからねぇ
どうか僕と一緒に
月まで
月の彼方まで
忘れた色を探しに
行ってはくれないだろうか
―共歩―
ただ私は
あなたに笑っていてほしかっただけなのに
やはり人など信じてはいけなかったんだ
やはり人に期待してはいけなかったんだ
分かっていたんだ
分かっていたんだけど
今回だけは違うんじゃないかって
思ってしまった
想ってしまった
愛してしまった
でもやっぱり
出会えてよかった
あなたが居たから私は変われた
あなたが居たから成長できた
泣いたり叫んだりしたけれど
笑ったり喜んだりもしたんだよ
夢を語って歩きたかったな
励まし合って生きてみたかった
宝石みたいじゃなくてもいい
地味でもいいから静かに強く
一緒に光っていたかった |