冬
花に水を遣るのが趣味であった
女々しいからやめろと言っても
聞く耳を持たなかった
口応えはしないが
はっきりと態度で示す子だった
家を離れる朝
何も言わずに玄関に座り込んだ
私が立たそうと手を取っても
黙り込んで頑なに
動こうとしなかった
この冷たさは今腰かけている
石段のものだろうか
はたまたあの子が座り込んだ
あの玄関の
やめよう
少し笑って首を振る
風が身に染みて凍える
冬も本番だ
いつの間にか目の前に車が止まっている
明るいオレンジのワゴン車
出て来た子どもが二人
甲高い声で叫びながら走り出す
やはり子どもは好きになれない
小さな手
小さな足
軽々と持ち上がる体
護られねば生きていけぬ存在
与えられたものしか受け取れぬ
その脆さが
その儚さが
重い
淋しげな黒木の下で
生の無い葉が踊る
色も音も消えるこの時期は
やはり好きになれない
風が吹いてもへし折れぬような
踏みつけられても伸びるような
そんな命が好きだ
だからだろうか
聞こえなかった
この冷えきった耳では
受け止められなかった
このかじかんだ手では
思うんだ今になって
悪かったのは
私だろうかと
「どうかしました?」
ふと我に返る
「行きましょうか
時間、押してるんです」
「色が無くて困る」
「え?」
「何にも無いだろう
あまりにも寒い」
「ええ
寒いですね」
薄ら笑いを浮かべている
早く動きたいのか
そんなに大事か
それが
そんなに
「賞を取ったんだ」
「え?」
「息子がコンクールで、賞を取ったんだ」
「……」
「内気な子ではあるけれど
口数の少ない子ではあるけれど
静かに努力できる子だと思うんだ」
「……」
「私は
私はあの子が」
「行きましょう」
子どもは嫌いだ
弱いから
色が無くて困る
私まで消されそうで
「なあ」
泣き濡れた空に問う
「私は何のために在るんだ
大事なものさえ守れずに」
空高く白鳥が鳴いた
真黒な空に
真白な鳥が
冬は色が無くて困る |