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通訳 高嶋弥生
作:○


 きらびやかなスタジオに、輝く笑顔の女性アナウンサーの声が響く。
「本日のスペシャルゲストは、このたび来日したジェフ・ミントさんです」
 カメラは、女性アナウンサーの隣にいる長身痩躯で金髪碧眼の男を写す。
「Hello」
「通訳は高嶋弥生さんです。よろしくお願いします」
 金髪の横には、黒くまっすぐな髪を肩まで伸ばした真面目そうな女性が立っていた。
「よろしく」
 女性アナウンサーの先導で、三人はスタジオ中央のソファに腰をおろした。
「それではさっそくですが、ジェフさんの来日の目的はなんですか?」
 金髪の男はオーバーアクションを取りながら、にこやかに言った。
「I am a pen」
 通訳の女性は表情を変えずに抑揚のない声をマイクにのせた。
「新作のアルバムをばらまくついでにライブで何人か殺すぜ」
「なるほど、殺害を……って、え? 本当に?」
 金髪の男は片目を閉じて親指を立てた。
「My name is Mike」
「この糞野郎、産婦人科医最高」
 少し唖然としてしまった女性アナウンサーだったが、気を取り直すと次の質問に取り掛かった。
「……えーと、それでは次の質問ですが、このアルバムの中でおすすめするとしたらどの曲ですか?」
 金髪の男はあごに手をかけてうつむいた後、真剣な表情で呟いた。
「Is this a chair?」
「今なら分かる。あいつは男だったんだ。道理で狭いわけだぜ」
 女性アナウンサーは、ハンカチで額の汗を拭った。
「……えー、ジェフさんのライブにはいつも人をドッキリさせるような演出があるのですが、今回はどのような仕掛けを予定しているのですか?」
 金髪の男は笑顔でソファの前の机を指差しながら答えた。
「Here is three desks」
「お前の死をもって神へのささげ物としよう。今夜ヒマ?」
「今デスクって言ってませんでした?」
「いえ、Death 苦といったのです」
「はあ、なるほど……漢字!?」
「ジェフさんは日本文化に造詣が深く、漢字を独力でマスターされたのです」
「それはすごいですね! ジェフさんの好きな漢字はなんですか?」
 金髪の男は白い歯を見せながら、親指を自分に向かって立てた。
「I love me」
「ピザです」
「ピザ!? いやそれ漢字じゃないですし、ラブがどうとかいってませんでした?」
「それはジェフさんがラブラドールレトリバーを食べた事を言っているのです」
「ああ、そうだったんですか……食べた!?」
 金髪の男は女性アナウンサーが座っているソファを指差した。
「A chair is bigger than a desk」
「ここはどこだ。俺は誰だ」
「いきなり記憶喪失ですか! といいますか、あなたさっきから適当な通訳をしてません?」
 女性アナウンサーの指摘に、金髪と黒髪の二人はきょとんとした表情をしたあと、揃って反論した。
「ソンナコトナイヨ」
「何を言っているんですか」
「はあ……え? 今ジェフさん日本語喋ってませんでした?」
 黒髪の女性は心外だという表情を見せた。
「そんなわけないでしょう。ジェフさんはこう見えても英検三級なんですから」
「エイゴヨクワカンナイ」
 しばらく固まっていた女性アナウンサーは、こめかみの辺りに静脈を浮き上がらせると、小刻みに震えながら金髪にマイクを向けた。
「意味がわからないので殺していいですか?」
「イイトモ」
「駄目だそうです」
「きいいいいいー!! あんたの通訳は

――しばらくお待ちください――

 所々ちぎられた金髪が痛々しい男と、爆発したような黒髪が面白い女性が、綿の飛び出したソファに座っている。女性アナウンサーが座っていた少しささくれたソファには、熊のぬいぐるみが置いてあった。
 金髪の男がカメラに向かって笑顔で手を振りながら口を開いた。
「ソレデハミナサンゴキゲンヨウ」
「いい感じよ、ジェフ」
 笑顔で手を振る二人の映像でフェードアウト。














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