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ドール―迷子の音符たち―  作者: 粟吹一夢
第八章 金髪のドール
71/73

01

 いつもと同じように月曜日が始まった。

 しかし、都立美郷高校に登校していた生徒達は、レナと一緒に登校していた見慣れぬ女生徒を見て騒然となっていた。

「立花さんと一緒に歩いている女の子、誰だ?」

「立花さんと仲良くしゃべっているから、立花さんの友達か?」

「あれ、うちの制服だよな。あんな子、初めて見るんだけど」

「見た目、不良ぽいけど、けっこう可愛くない?」

「けっこうどころか、フランス人形みたいにめちゃくちゃ可愛いぞ」

「立花さんと一緒だと、まるで日本人形とフランス人形が並んで歩いているみたいだ」

 レナと一緒に登校していた小柄な女生徒は、手提げとリュックのいずれにもなるバッグを背負っていること以外は、ミニにしたスカートに紺のソックス、そして茶色のローファーと、レナと同じような格好をしていた。

 しかし、そのセミロングのストレートヘアはプラチナゴールドに輝いており、レナの黒髪ロングヘアと鮮やかなコントラストを見せていた。

 そして、その金髪少女の大きな目の瞳は、太陽の光の加減もあってか、やや緑色を帯びており、色白の肌と相まって、見ようによっては外国人の少女のようだった。

 その二人の目の前に、カズホとマコトとハルの三人組が珍しく揃って登校していた。

 レナと金髪少女は、目を合わせてうなずきあうと、早足で三人組に追いついた。

「おはよう!」

 金髪少女が三人組に声を掛けた。カズホは、声の主が誰かすぐに分かったようで、笑顔で振り返ったが、金髪少女を見たカズホの顔は、いつものクールさが微塵みじんもなく、ポカンと口を開けたままだった。

「み、水嶋!」

 カズホは、すぐに気がついたようだったが、マコトとハルは、その金髪少女がナオであることにまだ気がつかないようだった。

「どうしたんだ。その格好?」

「本当の自分に変わったの。レナちゃんにちょっと協力してもらったけどね」

「そ、それが、本当の水嶋なのか?」

「そうよ。ささきく……ううん、カズホと一緒にバンドをやる水嶋奈緒子はこんな感じかなって」

「水嶋なのか? どうしちゃったんだよ?」

 相当遅れて、マコトが騒ぎ出した。ハルも目を丸くするばかりで言葉が出なかったようだ。

「どうしたって、髪をおろして、ちょっと染めて、コンタクトにしただけよ」

 レナがナオに代わって解説をした後、真剣な顔付きになって、マコト達に手を合わせた。

「マコト。カズホ。それからハル君。ナオちゃんが軽音楽部に入ってくれるっていうから、私も復帰したいんだ。許してくれる?」

「あ、当たり前じゃないか! よし、今日の放課後は部室に集まって緊急会議だ!」

 マコトのテンションは、朝から爆発寸前であった。


 二年一組の教室にカズホとナオが一緒に入って来た。

 ミエコやハルカを始め同級生達も、ただ驚くばかりであった。

 担任の平野は頭を抱えた。金髪が二人になって、教室の右後方が異様に明るくなったからだ。

 一時限目の授業終了後、ナオは、平野に呼ばれて職員室に行き事情を聞かれたが、特に問題なしとして放免された。今までカズホの金髪を黙認していた教諭達は、ナオを罰する理由を見つけることができなかった。

 ナオが教室に戻ると、ミエコとハルカが飛んで来た。

「ナオちゃん、どうしちゃったの?」

「ひょっとして、佐々木君と何かあったの?」

「何もないよ。私、軽音楽部に入部して、カズホと一緒にバンドやることに決めたから、これはそのためのイメージチェンジ。それ以外、私は何にも変わってないよ。だから、これからも友達でいてね」

「カズホって……。ナオちゃん、佐々木君とつき合ってたの?」

「ううん、これから始まるの」


 ナオが、実は美少女だったという評判はあっという間に全校に知れ渡った。別のクラスから二年一組にわざわざナオを見に来る者もいた。

 いつの間にか、レナの「クイーン」に対抗して「ドール」というあだ名が男子達の中で定着していった。

 そして、放課後に開かれた軽音楽部の緊急会議で、レナの復部とナオの入部が承認され、ついに新二年生バンドが始動することとなった。

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