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ギフト〜君を信じていいのかな?〜
作:氷乃涙



第一章:異能者×銃撃者


 翌日学校へ行った俺は、机を枕代わりにして寝ていた山形に「山形は異能者なのか?」と聞いてみた。すると、あっさり「そうだけど、それがどうかしたの?」と言い返され、あっけなく会話が終了した。

 その日の昼休み、大地が相変らずなテンションで喋りかけてきた。
「おいソウソウ! お前あの話聞いたか?」
「あの話って?」
「本当にお前は何も知らないのな」
 あの話だけで、これから先の会話の内容が理解できる奴などいないだろう。
「四組の佐伯が異能者になったらしいぜ!」
「佐伯って……あの佐伯か?」
「その佐伯だ」
 佐伯とは、俗にいう不良である。
 元々は同じ道場に通っていたのだが何度やっても俺に勝てないため、ふてくされて辞めてしまった奴だ。しかし、そうは言っても何の経験もない一般人からすれば十分すぎるほど強く、そのおかげで一年の生徒の中では一番大きな顔をしている。
「めんどくさい」
「絶対お前に絡んでくるぞ」
 今までの経緯を考えればそれは間違いないことだろう……だが! お前は何故そんなにも面白そうなのだ? 出来れば詳しく理由を説明してもらいたいものだ。
「理由? 一般人が異能者倒すところなんて普通見られるものじゃないからな」
 そう言った大地の表情を見る限り、俺が負けるなんて事はこれっぽっちも考えてはくれていないらしい。
 そんな会話をしていたその時、騒がしかったクラスが静まり返った。
「ソウソウ! 早速お出ましだぞ」
 そう言われ扉の方に目をやると、でかい図体をした佐伯がだらだらとこちらに向かって歩いてきた。
「おい!」
 人を見下すような低い声で佐伯が声をかけたのは、俺ではなく山形だった。
「なに?」
「お前俺の女になれ」
 その言葉にイラっとしたのかどうかわからないが、山形は佐伯を睨みつけ、
「君は何を言ってるんだい? 話したことも無い男の女になるような、軽い女にあたしは見えるのかな?」
「お前の意見なんか聞いてないんだよ。お前は今から俺の女だからな」
 間髪いれず佐伯は答えると、山形の体を片手で持ち上げ強引に唇を奪おうとした。
「異能の力だかなんだか知らんが、調子に乗りすぎじゃないか?」
 俺は思わず口を開いた。
 その言葉に反応したのか、佐伯は山形から手を離して振り返りこちらを見た。
「なんだ? 力も無いお前なんかお呼びじゃないんだよ」
 異能の力を手に入れたせいだろう。明らかに人を見下しているのは非常に腹立たしい。
「それは一度も俺に勝ったことの無い奴が言うセリフか?」
 挑発するように俺が言うと、何も言わずに全力で殴りかかってきやがった! だが、佐伯の拳は空を切り俺に当たることは無かった。
 その直後反撃に出ようとしたのだが、後ろからガラスの割れる音が聞こえたためそちらの方に目をやると、何も当たっていないはずの窓ガラスに拳よりやや大きいぐらいの穴が開いているではないか!
「驚いたか? これが俺のギフト『銃撃者(ガンナー)』だ」
 銃撃者ね……今の現象とその名前から察するに、拳が銃の代わりってところか? しかも、山形を片手で楽に持ち上げていたことから腕力なんかもあがっているのだろう。なんとも迷惑な能力だ! これでは思うように避けることが出来ないではないか。
 先ほどの攻撃から察するに、殴る速度が上がっているわけでもないようだから避けるだけなら、正直楽勝だろう。しかし、俺が避けることによって拳の先に人がいた場合、その人に被害が出ることになる。
 この場合喧嘩を売ったのは俺になるだろうから、なんとしてもクラスメイトに被害が出ないようにしなくては……
「なんだ? びびって動けないのか? なら、もう一発いくぞ!」
 そう言うと佐伯は再び攻撃をしようとしたのだが、それよりも早く懐に飛び込み、数発拳を叩き込んだ。すると佐伯は、床にうずくまり小さくうなり声を上げていた。
 どうやらこいつのギフトは、攻撃力だけをあげるもので耐久性はこれっぽっちもあがってはいなかったらしい。

 その後、佐伯を叩きのめした俺は校長を含めた四名の教師にお叱りを受けたのだが、佐伯が異能者として力を身につけていたため、正当防衛ということで謹慎処分を免れることとなった。不幸中の幸いとは、こういう状況のことを言うのだろう。一方佐伯の方は、異能の力を人に向けて使ったと言うことで退学処分を免れないらしい。
 そして、六限目も残り十五分で終わろうかと言うときに、俺は説教を聞き終え教室に戻った。すると、普段は自分から男に喋りかけるなんて事をしない奴が話しかけてきた。
「君さ、昨日のあれ見てたんだよね?」
「あれってなんだ?」
 わざととぼけたように言うと、
「街中でのあれ……見てたんでしょ?」
「派手に男を宙に浮かせてたあれか?」
 その光景を見ていたことを告げると、山形は不思議そうにこう続けた。
「うん。しかも君は、あたしが異能者だって知ってるんだよ? なんで助けるようなことしたのかな?」
 そう言い終えた山形は、手を出す必要なんてなかったのに。と言わんばかりの表情をしている。
「悪かったな。勝手に口が動いてたんだよ」
「ふーん」
 その後会話は無く、話しかけられたはずの俺がなぜか気まずい雰囲気に追いやられるも、六限目の授業が無事終了し帰ろうとしたその時だ。
「さすがソウソウだよなー」
 顔なんか見なくても誰かわかる。大地だ。
「なにが?」
「異能者を倒す一般人! 世界広と言えども、そんなことができる奴ってのは中々いないもんだぜ?」
 何を言い出すかと思えばくだらない。
「あれは相性が良かっただけだ。元々の力の差もあったしな」
「またまたー謙遜しなさんなって」
 謙遜などしていないしする気も無い。
「あっ! そういや今日掃除当番だったわ。早く行かないと委員長に怒られる」
 思い出したように大地は走り去っていった。
 頼むから余計なことを言わないでくれよ。いつぞやの様に話しを誇張されて困るのは、お前じゃなく俺なんだからな……







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