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ギフト〜君を信じていいのかな?〜
作:氷乃涙



第四章:旅行〜其の三〜


 日が暮れてくると遊びすぎたせいか、かなりの肉体的疲労を覚えつつ別荘に戻ることとなった。遊びすぎ以外にも相当の気疲れをしているのだが、あの顔を見ていると疲れも吹き飛ぶというものだ。
 別荘に戻ると、木下・山本・山形の三人は――山本(いわ)く――こじんまりとした備え付けの温泉にシャワーを浴びに行った。俺と大地と久米は、本来ならその後にシャワーを浴びにいく予定だったのだが、昼から何も食べていないためそれなりに腹も減っており、それはあの三人も同じだろうと言うことで女性陣が風呂から上がってくる前に夕食の準備を済ませてしまおうと、庭でバーべキューの準備をせっせとしていた。
 三十分ほどすると、「おや? いい匂いがするね」「おいしそうですね」「私達別に頼んでないぞ」と三人が庭に顔をだし、そのまま夕食となった。
 はっきり言って、この夕食はメチャメチャ旨かった。疲れていたせいもあるのだろうが、山本父の用意してくれた食材はどれをとっても特選素材といって過言ではないものばかりであり、野菜一つとっても、普段家で食べているものと比べたら味の深みや甘味に違いがあるのが俺ですら簡単に解るほど新鮮で、肉などスーパーで売っている安物とは違い見事なまでの霜降りがのっていた。これで、まずいとでも言おうものなら罰があたるのは間違いないだろう。
 初日の夕食用に用意してもらった食材を見事なまでに食べきった後、俺・大地・久米の三人は風呂に行くこととなった。後片付けは「頼んでなかったけど用意してもらったからな。私達が片付けといてやる」という山本の言葉に甘えさせてもらうことにした。
 風呂場に付いて思ったのだが、どの辺りがこじんまりとしているのか教えてもらいたい。
 シャワーは一つしかついていないものの、高校生の男三人が一緒に入っても余裕でくつろげる湯船。小さな子供なら、はしゃぎまわれるのではないかという洗い場……山本本宅の風呂というものを是非見たいものだ。俺の部屋なんかより、よっぽどでかいに違いない。

 夕食も食べ風呂にも入りあとは寝るだけという状況なのだが、さすが娯楽のために買った別荘というだけのことはある。リビングの隣に設置された遊技場には、卓球台にビリヤード台。ダーツに麻雀。各種ボードゲーム等が用意されているのは流石としか言い様が無い。そして、そんな部屋を見たこいつが黙っているわけが無い。
「すげー! 誰か卓球しようぜ卓球!」
 相変らずというか何と言うか……元気な奴だ。
「あれ? 誰もやらないのか? 頼むから誰か卓球やろうぜ」
 その言葉に反応したのは意外にも山本だった。なにやら楽しそうに卓球をしているでないか。大地が言っていた「山本はあれで結構優しいんだぞ?」という言葉を思い出してみたのだが、あながち間違いでもないらしい。しかしだ、今日一日を振り返って思い出してみると、優しいというのは大地に対してだけ当てはまる言葉な気がしてならない。
 なぜなら、俺が些細な頼みごとをしても「自分でやれ」と言われていたのに対し、大地が頼んだときは、不機嫌そうな顔をしながらではあるが「仕方ない」だとか「何も自分でできないのか」と言いながら頼みを聞いていたからである。
 女は自分の父親と似た相手を好きになるとか言うのをどこかで聞いたことがあるが、あれも意外と正しいのかもしれん。俺が見た限りでは、山本父と大地は同じ種類の人種に見えたからな。美男美女で馬鹿とツンデレか……お似合いだろう。
 一方、その傍らで久米と木下はビリヤードをやっていた。
 木下はどうやらビリヤードをしたことが無いらしく、久米が上手いことおしえていたのだが……まだ割り込んでいける雰囲気だった大地山本ペアとは違い、二人の世界を展開してるように見えて仕方ない。なんとも羨ましいことだ。
 俺は何をしようかね? 別に寝ても構わないのだが……などと、ぼーっとしながら考えていると、
「君さ、囲碁ってできるかい?」
「囲碁? まぁ多少なら出来なくは無いが」
「ならあたしと打とうよ? どうせ体動かすのはしんどいんでしょ?」
 よく解っておられる。ビリヤードぐらいならまだしも卓球などやる気すら起きない。
「そうだな。別に構わないぞ」
 やった! という無邪気な笑顔を見せた山形は、置いてあった碁盤と碁石をこちらに運んできた。
「最近覚えたばっかりなんだよねー。だから、誰かと一回打ってみたかったんだ」
 覚えたばかりね……
「えっと、互戦(たがいせん)でいいのかな?」
「それでいいだろ。どうせお互い棋力(きりょく)なんてわからないだろうしな」
「それもそうだね」
 そう言って勝手に黒石を持ち山形は打ち始めたのだが、笑いが止まらない。
 相手が素人であれ、何の勝負であれ、俺は負けるのが大嫌いなのだ。しかも、山形は覚えたばかりと言っていたのだが俺は違う! 棋力でいえばアマの有段者クラスの実力は持っているわけだ。お前の悔しがる姿なんて想像もつかないからな。是非ともその顔を見せてもらおうじゃないか!
 ――十数分後――
「……ありません」
 完膚なきまでに叩きのめされた。どうやら頭の出来が違いすぎるらしい。極端な話し、俺が十手先を読んで動いているのだとしたら、山形は百手先を読んで動いているような感じだ。勝てるわけが無い。
「あー楽しかった」
 そうだな。お前はさぞ楽しかったろう。だが、俺は全然楽しくないぞ。
 その後、山形にリベンジをしようと色々な種類のボードゲームや、動かしたくなかった体まで動かし、卓球やビリヤードなんてものもしたのだが何一つとして勝つことは出来なかった。今まで勝負事で負けるなんて稀なことだったのだが、ここまで同じ相手に負け続けるとは……プライドや自尊心など保てたものではない。







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