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淡々とした話しです。盛り上がらな〜い。
ポストカード
作:urara


あいつは高校2年になってすぐに、親の都合で引っ越していった。近所に住む幼馴染で高校まで一緒。いつも眼鏡の奥で穏やかな笑顔を湛えていた。同級生からは「ちょっと変わった奴」という評価をもらっていた。でも、みんなあいつのことが好きだった。

引越し当日まで“あいつがいなくなる”という実感はわかなかった。だから別離の挨拶も日常のそれとたいして変わらなかった。
「じゃ、またね。」
「うん。またね。」

寂しいのかもしれない、と感じ始めたのは引っ越しからしばらくたってから。自分がこんなにも鈍感なのだと気づかされた日でもある。


あいつが引っ越していって翌月の10日、あいつから1枚のポストカードが届いた。挨拶も何もない。字は表の宛名書きのみ。裏は『赤い菊』の花写真だった。なぜ菊?私の中での菊といったら、言っては悪いが『お葬式』のイメージしかない。なんだかあまりよろしくないものをいただいてしまった、というのが私の正直な感想。あいつは一体何を考えているのだろう?

その翌月の10日にもあいつから1枚のポストカードが届いた。今度は私が名前も知らない花の写真だった。またしても文字は宛名のみ。一体あいつはこれで何をしようとしているのだろう?花の美しさを伝える伝道師にでもなりたいのだろうか?やっぱりあいつはちょっと変わった、変なやつのままなんだな、と思うとなんだか嬉しくなった。

またその翌月の10日にあいつから1枚の花のポストカードが届いた。これはもう、毎月10日には花のポストカード届くことが確定した、とみていいのだろう。今度はコチョウランだった。相変わらず花写真だけで文字はないけど、それでも嬉しい。毎月10日が楽しみになった。次はなんの花のポストカードをくれるのだろう?

かれこれポストカードが届き始めてから1年は過ぎた。手元には17枚の花のポストカードがある。結局今までに文字らしき文字は見当たらなかった。そして毎回違う花だった。意味なんてわからないけど、それでも良かった。あいつが私のことを覚えていて、気にかけてくれているのは確かなことなのだと思う。あいつとの繋がりがなんらかの形であり続けているのが嬉しかった。ただ、意味がわからないので、私は一度も返事を出していない。むこうも返事がこないのわかっていて、花のポストカードを送り続けているのだし、お互い様だと思う。

私の18回目の誕生日に届いたポストカードは白紙だった。軽く衝撃を受けた。そして今更ながらになぜ10日に届いていたのか、なんとなく読めてきた。10月10日は私の誕生日。だから10日に届くように送ってよこしていたのだろう。でも、なんのために?そしてなぜ今回に限り白紙?一体今までのポストカードに意味があったのだろうか?もしかして・・・。私は急いで『花言葉』を調べた。

1  赤い菊:愛・愛しています・真の愛
2  アネモネ(赤):君を愛す
3  コチョウラン:あなたを愛します
4 サザンカ:ひたむきな愛
5 チューリップ:永遠の愛情
6 ヘリオトロープ:永久の愛
7 プリムラ:永続する愛情
8 桃の花:あなたに夢中
9 スズラン:清らかな愛
10 トケイ草:聖なる愛
11 青いワスレナ草:誠の愛
12 苺:尊重と愛情
13 ルピナス:あなたは私の安らぎ
14 アナナス:大切な気持ち
15 アイリス:あなたを大切にします
16 ピンクのバラ:わが心・君のみが知る・温かい心・満足
17 ラベンダー:私に答えてください・あなたを待っています

脱力した。あいつは花に自分の気持ちを託していたのか・・・。花言葉という概念をすっかり忘れていた。毎月10日に送られてきたポストカードの意味がわかると、今度はじんわりと自分の体が熱を帯び始めた。そして目から雫が頬を伝い、机に落ちる。今すぐに大声で叫びたいような衝動と、なにかにゆったりと包まれているような感覚と・・・。不思議な感覚に私は襲われた。きっと全身全霊で彼がしてくれていたことを喜んでいるのだと思う。

私は急いで街に出かけた。ポストカードというと、雑貨屋を真っ先に思い浮かべた。私は目的のポストカードが見つかるまで、数日さまよい歩くことになってしまった。そして、やっとの思いで見つけた、私の返事。今日、私はこれを彼にだす。

『デージー:あなたと同じ気持ちです』














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