少女の我儘は叶わぬまま
注意
異世界で魔法などがある世界観ですが、それらの説明を一切しておりません。(表現したいものと違うため)
自殺について軽く触れていますが、この小説は自殺を誘引するものではありません。
自殺や死が苦手な方にも配慮した描写を心がけておりますが、苦手な方はブラウザバックを推奨します。
「逃げるなんて許さないです……。死なないでください」
なんて言った、私の顔はどんなに歪んでいるのだろう。
町外れの森の中、薄暗い夜にふたりきり。
私の言葉に、彼は首を横に振る。
「迷惑をかけるわけにはいかないんだ。君にも、町のみんなにも」
彼は、我儘な私に、諭すように答える。
「理解できないです! なんで! なんで! なんでですか!」
今日、私は何度同じことを彼に聞いただろうか。それにも関わらず彼は、悲しみと憐れみが混ざったような表情で。
「あの厄災が狙ってるのは、俺一人なんだ。俺が死ねば、奴は自分の世界に帰る。もう猶予はないんだ」
と答えてくれる。
悲しい。悔しい。彼が居なくなるのも怖いけれど、彼の憐れみを孕んだ顔を見るのも怖くて辛い。……私は我儘過ぎる。でも止められない。
「私だって、あなただって、あんなに修行したんですよ? 魔法も前より上手くなりましたよ? 2人で戦えば、勝てるかもしれないじゃないですか!」
「以前、厄災と戦った時は惨敗だったし、厄災が成長してないとも限らない」
「なら、町のみんなで! みんな、絶対に力になってくれます! みんなの力を合わせればまだ分からないです!」
「勝つかわからない戦いに巻き込むわけにはいかないだろう?」
分かってる分かってる分かってる分かってる!
私が間違ってるのは分かってるんだよ!でも、死ぬのはダメなの……。
理性が焼き切れてしまった私は、決してやってはいけない手段をとろうとしてしまった。
「あなたが死ぬならば……」
頭の中から、「言ってはダメ。ダメ」と聞こえた。それでも、私は止まらない。
止まらず言葉を紡ぐ。
「……私も死にます」
私は自分を人質にして、彼の選択を強引に捻じ曲げた。
二人で町のみんなと相談し、頼み、厄災に立ち向かうことを選んだ。
最後の最後まで、戦う練習や、防壁の準備など、2日の間頑張った。
ただ、彼の選択を私が捻じ曲げた時から、彼は1度も笑顔を見せることは無かった。
町は徐々に灰に変わっていく。
戦いに加わらない人たちは避難したとはいえ、それは無残な光景だった。
厄災からの攻撃は、1つ1つが、必殺、必滅の威力だった。
しかし、こちらからも着実にダメージを与えている。
厄災との消耗戦になった。
ちょうど町の半分が、灰に変わった頃。
いきなり厄災の勢いが落ちた。
終わりの見えなかった戦いに、終わりが近づく合図が鳴ったように思えた。
そのタイミングで私は、大勝負に出た。
勝てると思った……いや、違う。灰となって滅んでいく町を見て、そして、死んでいく町の人々を見て焦ったのだ。
戦いに焦りは禁物、彼が私にくれた最初のアドバイスだったはずなのに。
私は厄災の前に立ちふさがり、ずっと練習してきた、魔法の準備を始める。
それはずっと練習してきた一撃であり、私の残りの魔力をすべて使い切るもの。
正確に素早く、魔法を紡いで……放つ!
その一撃は私の思った通りに綺麗に厄災の核と思われるところに飛んでいき、命中する。
そして厄災は大きくよろめいた。
「勝った?!勝ちまし――」
必滅の一撃が飛んできた。魔力を使い切り、機動力を失った私の元に。
どういう原理かとか、よろめいたはずなのになぜ攻撃を繰り出せるのかとか、頭に入ってこなかった。
当たったら生きてはいられない一撃が私に向かってくる。そして私は動けない。
理解できたのはそれだけ。
スローモーションに感じる時の中で、私は自分の死を確信した。そして、意識が落ちる。
私の意識が戻った時には、私は町の高台にいた。
私に大した傷はなく、代わりに……
眼下に、厄災が光となって消えていく光景と、たくさんの町の人たちの死体と思われるもの。
隣には左腕が無くなって、息をしていない彼。
私は理性だけではなく、思考まで焼き切れてなくなってしまったのだろうか?
ああ、みんな、私の我儘のせいで死んだんだ。
ああ、結局何も得られなかったんだ。
「ああ、なんで私は生きているのでしょうか」
私は彼の亡骸を一瞥したあと、高台の柵から身を乗り出した。
如何だったでしょうか?
描写不足等々で短編小説というよりも、私の妄想日記の域ですね。
世の中、ヒーローみたいな主人公達のように、守りたいものを守れる人もいれば、この小説の主人公のように、守れない人もいる。
大切な人を何が何でも守るという選択肢は、果たして正しいのか?
誤字や改善点があれば、お手数ですが、コメント頂きたいです。
最後までお読みいただきありがとうございます。