想い
家に戻ってきても、振り向いた佐山の笑顔が頭から離れなかった。
花畑で流れる風のような、甘い香り。繋いだ手のぬくもり。俺の心に沁みていて。今でも佐山がそばにいてくれているように感じていた。
そして。
暖かくて、柔らかい感触。
自分の唇をなでてみる。
俺、佐山と……。
いつしか俺のそばにいた女の子。いつも振り回されていて、いろんなバカ言って。
怒ってふくれたり、困ったり。笑ったり、喜んだり。
そんな、佐山が可笑しくて。
楽しかった。
本当は、いつも佐山を探していた。いつも声をかけてくれていたことに、安心していた。
俺を、笑顔で見てくれることが、嬉しかった。
佐山沙希っていう女の子が、いてくれることが。
これが、幸せって、ことなんだろうか。
これが……。
佐山の笑顔がちらつく。
心が穏やかになって、優しい気持ちに包まれてくる。
また、明日から、佐山はいつもの佐山でいてくれるのだろうか。俺も、いつもの俺でいてもいいのだろうか。
自信がない。
でも、いつもより、あの女の子が笑顔になってくれるように、いろんなことをしてあげられたら。いつもより、きっと楽しい毎日が、待っていると、思う。
また、明日。か。
佐山、また、明日、な……。
――――
――この本を読んで、私もこんな二人になりたいって思った。
いつも仲が良くて。
楽しくて。
本当は、女の子が、男の子のことを好きで。気がついてない振りしてる男の子にやきもきして。
男の子は女の子のことが好きなんだけど、自分の気持ちに素直ではなくて。
そして、お互い言い出せなくて。恥ずかしいから、冗談のように受け返してしまう。
ただ好きな人と一緒にいられる幸せを壊したくなくて。ずっとこんな毎日が続いていけばいいってだけ、思ってる。
そんな。
恋なのか、憧れなのか、曖昧な甘い二人に、なってみたかった。
ドキドキするような、甘い、恋。
私も、こんな風に、恋してもいいかな。勇気、出せるかな。
私も、ここに出てくる女の子のように、明るくなれれば、きっと……。
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