エピローグ
「そっか……。そんなことがあったんだね。でも、私のことまでそんな細かく言わなくても良いじゃない。恥ずかしいな」
「あー、ゴメン。俺も恥ずかしかった」
「あはは」
「でも。今にして思う。佐山は、君と……沙耶と出逢えるようにしてくれていたんじゃないかって。佐山は全てを知っていて、そうしてくれたんだって」
「そうね……。そうだ。私もね、昔話をするね」
「昔話?」
「……昔、男の子と女の子がいました。その二人は互いに想いあっているんだけど、二人、この関係を壊したくなくて言い出せないでいる。憧れかもしれないし、本当に好きなのかも、まだ良くわからない。ただ、こうして二人でいることが楽しくて嬉しくて仕方がなかった」
「ああ」
「そんな、物語を読んだの。『鏡』という小説」
「その小説。俺も読んだことがある」
「私は、佐山さんに、逢ったことがあるわ」
「えっ?」
「そして、そのとき、この『鏡』という本を私にくれた。全てが嫌になったときに、未来を、あなたを与えてくれたの。そうして……。私も鏡と佐山さんのようになりたいって、いつも願ってた」
「佐山が……」
「この本を読んだ人をここに映し出すのが、この鏡という本だったんだよ。だから、私はあなたの世界の佐山さんになれた。この本を読んでから、鏡の中のような世界に入って……かわったの。私の幸せな未来に」
「そうか、それで佐山は」
「佐山さんは、今どうしていると思う?」
「知って、いるのか?」
「もちろん、知っているわ。彼女は、今きっと幸せだよ」
「それが、わかるのか?」
「わかるわ。だって、今の私も、本当に幸せだもの。こんなに、あなたに愛されて、大切にされて……。でも、まだ、もし、幸せでないのなら。いつかきっと、あなたと出会えるから」
「俺も、いるのか? 佐山のそばに」
「もちろん、いるわ。ほら、あなたも、佐山さんも、この本を読んでくれている」
「そうか。そうなんだ。やっとわかった。この、ここには居ないって感覚も、どうして感じていたのか」
「うん」
「そっちの世界にいる俺。もし、まだ、佐山に逢っていないのなら、探してくれ。逢っていたら、幸せにしてやってくれ。いや……。この本を読んでくれているのなら、わかるはずだな。そして、俺達は」
「うん」
「もっともっと幸せにならないと、いけないな」
「うんっ」
『鏡』 fin.
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