告白
佐山にも言えなかった言葉。
ずっと俺の心の中で想いくすぶっていた言葉。
言葉にしてしまうと怖くて。心から出てしまうと意味が違って聞こえてしまうことが怖くて。
自分のことをうまく表現できなくて。相手のことを思ってしまって。
でも、伝えたくなって。
「ゴメン。俺……。君の言うように、俺、いつも君に、君に似ている女の子のことを見てしまっていた」
一歩、沙耶に近づく。
「その女の子は、昔、突然いなくなってしまった。何も言わず、突然……。そのことを、俺、ずっと引きずってて。君が……。沙耶が、居なくなってしまった、佐山沙希という女の子だったらって願ってしまっていた」
沙耶は俯いたままで。俺の話を聞いてくれている。
「バカだろ、俺。こうなってしまって。君に、色々嫌な思いをさせてしまって。でもやっと気がついたんだ」
そっと……。沙耶の左手を取った。
「沙耶。俺は君のことが好きだ」
「えっ……?」
泣いていた瞳そのままで、俺に向かう。俺の手は沙耶の手を包み込んで握って。
「俺、君の事を、好きになってしまったから。昔、好きだった女の子と重ね合わせてしまって。君があの子だったらって、願ってしまった。そうすることで……。臆病だろ。男らしくないだろ。でも……。やっと気がついた」
握った沙耶の手を俺の胸に抱き寄せるように引き寄せた。
「俺、君のことが……沙耶のことが好きだと。沙耶は俺の大切にしたいと思う、女の子なんだって」
誰かのことを、好きだと伝える意味。
それが、ここにいる女の子へ。
「だから、ほんと、ゴメン……。こんなこと言えた義理じゃないが……。俺の恋人になってくれ」
「鏡……」
「初めて、名前で呼んでくれたな」
目の前に、沙耶の瞳がある。ずっと真摯に俺を見つめてくれている。
「わたし……」
でも、沙耶の体がこわばって、震えていた。握った手からも、それが良くわかる。
「どうしたんだ?」
「ご、ごめんなさい……」
沙耶は蒼白になって。歯が音を立てているくらいに、震えていた。
「私、私……」
「だめ、か……?」
拒否、されたのか……?
刹那、沙耶の長い黒髪が左右に流れた。
「違うの! 違うの……。私、わたし」
そのまま、俺の胸に顔をうずめるようにして、俺の背中を両手で抱えた。
「ごめんなさい……。わたしの、悪い気持ちが」
「悪い、気持ち?」
「わたし、男の人が怖いの……」
そのまま、沙耶の肩を抱き寄せる。震えている。
「私ね、男の人が怖いのは……。昔、襲われたことがあったからなの」
「えっ?」
「昔……。高校生の頃。だから、私。こんなに暗いと、思い出してしまって」
襲われて、いた……?
まさか、あの時見た夢って……。
そうか。そうだったんだ。
「私、そんな女の子だけど、いいの……?」
「大丈夫だ。好きな女の子に、俺、そんなことするつもりなんかないんだぞ。本気で、大切にしたいとさえ……。思ってる。君の昔に何があっても、俺は君が好きなのだから」
「鏡……。ありがとう」
俺の背中に手を回して、ぎゅっとしがみつくように抱き返してくる。
震えていた沙耶の身体が、だんだん落ち着いていくのがわかる。
「暖かい……」
「好きだぞ。沙耶」
「うん。鏡……。わたしも、あなたのことが。好き」
顔を上げた沙耶の瞳が閉じていく。
あの時とは違う、愛しいと思う女の子との口付け。
長く、長く。
互いの気持ちが、一緒だよって伝え合うように。
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