詮索
チャンスだった。
俺の配属されたのは営業部で、佐山……、じゃない、高嶺さんと言ったか、と一緒の部署につくことが出来た。
この部署で新入社員であったのは俺と高嶺さんだけだったし、これから色々と話せることが出来る。
「高嶺さんといったかな。さっきはすまなかった。偶然か、同じ部署みたいだからいろいろとよろしく頼む」
今日の仕事の説明とか研修とかも終わって、帰り支度をし始めていたとき、俺は高嶺さんに話しかけてみた。
「いいえ。私こそよろしくお願いします。秋月さん仕事できそうですから、足を引っ張るかもしれませんけれど、どうぞよろしくお願いします」
他人行儀で俺を知っている様子を微塵も感じさせない口調。
本当に、佐山とは違う女の子なのだろうか。
それにしても、本当によく似ている。
背の高さも佐山と同じで。
声も、佐山で。
本当に別人だとしたのなら、まるで佐山を鏡に映したようだ。
「……高嶺さん、姉妹とかいるのか?」
「えっ? 私は姉妹はいません。歳の離れた弟がいるだけです。でも、突然そんなこと訊いてどうしたのですか?」
怪訝な目で俺を見る。そうだな、突然家族の事を訊いたりして、失礼だったな。
「いや、すまない。変なことを訊いた。ただ、見れば見るほどそっくりでさ、姉妹でもいたのかなと」
佐山には兄弟姉妹はいなかったのに。何を訊いているんだ、俺は。
「そんなに似ているのですか。さっき言っていた人と私」
「ああ。本当にそっくりだ」
「秋月さんの恋人さんとかなのですか?」
「えっ」
「なんだか大事な人って感じで……。さっき必死だったから」
佐山の顔でそんなことを言われるなんて。心に刺さる言葉とは、こういうことをいうのだろうか。
「そんな、良いものじゃない」
「あ、ごめんなさい……」
俺の表情を読み取ったのか、高嶺さんは申し訳なさそうに言う。
「ああ、いや、そういうわけじゃないんだ。すまなかった。気にしないでくれ」
「でも、そんなに似ているのなら、逢ってみたいですね」
「あ、ああ……。そうだな。逢わせてみたい」
佐山がとぼけていたり、俺に冗談を言っている様子ではなかった。
本当に、俺と初対面で何も知らない感じだ。
それとも、佐山がなんらかの事故とかにあって、記憶を失ってしまったとか……。
いや、そんなこと、現実で早々あるはずがない。
やはり、別人と思う方が良いかもしれない。
佐山だと思って高嶺さんに接してしまうと、彼女に失礼になるだろう。
それにもう、余計な詮索はしないほうがよさそうだ。
俺に、出来るだろうか。
あの日から、佐山を探して、待っていて。まだこれからもその気持ちのままで。
その佐山とそっくりな女の子が近くにいるなんて。
佐山。本当にどこへ行ってしまったんだよ。お前がいないから、俺はこんな気持ちになるんじゃないか。
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