ブックリスト登録機能を使うには ログインユーザー登録が必要です。
   作者:星桜なつき。
詮索

 チャンスだった。

 俺の配属されたのは営業部で、佐山……、じゃない、高嶺さんと言ったか、と一緒の部署につくことが出来た。

 この部署で新入社員であったのは俺と高嶺さんだけだったし、これから色々と話せることが出来る。

「高嶺さんといったかな。さっきはすまなかった。偶然か、同じ部署みたいだからいろいろとよろしく頼む」

 今日の仕事の説明とか研修とかも終わって、帰り支度をし始めていたとき、俺は高嶺さんに話しかけてみた。

「いいえ。私こそよろしくお願いします。秋月さん仕事できそうですから、足を引っ張るかもしれませんけれど、どうぞよろしくお願いします」

 他人行儀で俺を知っている様子を微塵も感じさせない口調。
 本当に、佐山とは違う女の子なのだろうか。
 それにしても、本当によく似ている。
 背の高さも佐山と同じで。
 声も、佐山で。
 本当に別人だとしたのなら、まるで佐山を鏡に映したようだ。

「……高嶺さん、姉妹とかいるのか?」

「えっ? 私は姉妹はいません。歳の離れた弟がいるだけです。でも、突然そんなこと訊いてどうしたのですか?」

 怪訝な目で俺を見る。そうだな、突然家族の事を訊いたりして、失礼だったな。

「いや、すまない。変なことを訊いた。ただ、見れば見るほどそっくりでさ、姉妹でもいたのかなと」

 佐山には兄弟姉妹はいなかったのに。何を訊いているんだ、俺は。

「そんなに似ているのですか。さっき言っていた人と私」

「ああ。本当にそっくりだ」

「秋月さんの恋人さんとかなのですか?」

「えっ」

「なんだか大事な人って感じで……。さっき必死だったから」

 佐山の顔でそんなことを言われるなんて。心に刺さる言葉とは、こういうことをいうのだろうか。
 
「そんな、良いものじゃない」

「あ、ごめんなさい……」

 俺の表情を読み取ったのか、高嶺さんは申し訳なさそうに言う。

「ああ、いや、そういうわけじゃないんだ。すまなかった。気にしないでくれ」

「でも、そんなに似ているのなら、逢ってみたいですね」

「あ、ああ……。そうだな。逢わせてみたい」

 佐山がとぼけていたり、俺に冗談を言っている様子ではなかった。
 本当に、俺と初対面で何も知らない感じだ。

 それとも、佐山がなんらかの事故とかにあって、記憶を失ってしまったとか……。
 いや、そんなこと、現実で早々あるはずがない。
 やはり、別人と思う方が良いかもしれない。
 佐山だと思って高嶺さんに接してしまうと、彼女に失礼になるだろう。
 それにもう、余計な詮索はしないほうがよさそうだ。

 俺に、出来るだろうか。

 あの日から、佐山を探して、待っていて。まだこれからもその気持ちのままで。
 その佐山とそっくりな女の子が近くにいるなんて。

 佐山。本当にどこへ行ってしまったんだよ。お前がいないから、俺はこんな気持ちになるんじゃないか。


+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。