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   作者:星桜なつき。
出逢い
 佐山がいなくなって、4年が過ぎた。

 俺には空虚な月日だった。
 佐山を探して。でも痕跡すら見つからなくて。学校のみんなも、次第に佐山のことを忘れていって。 
 でも、俺は。ずっと佐山のことを想っていた。
 いつか佐山に出逢えることを信じて、佐山に、俺がいかにすごいいい男だと思われるように勉強に明け暮れ、いろんなことに努力した。高校でも、お前より成績をよくして。有名な大学にも出て。
 佐山。お前が今の俺を見たらどう思うだろうな。すごいと思うのだろうか。今のお前は、何をしているんだ。
 俺は、ここにいるぞ。ずっと待ってる。探している。
 他に好きな男とか出来ていてもいい。元気でいてくれさえすれば。笑顔を見せていてくれれば。 
 だけど、俺は色々変わってしまったが、心は、気持ちは、あのときのままだからな。
 俺はこれからも、お前にすごい男だと思わせるために、がんばっていくからな。
 そして。
 今日から社会に出て働くようになる。
 なんとかという日本を代表するような大会社。 
 今日は、その入社式。
 体育館くらい大きな部屋に10数人くらいの俺と同じ新入社員が、真新しいスーツ姿で並んで座っていた。
 俺もその中の一人になっていた。
 これから式が始まる。
 ふと、隣に座っている人を見た。 
 そこには、思いがけない人が、いた。
 数年経っても、忘れることが無い女の子。
 どんなときも忘れたことがない。探し続けた女の子が、そこにいた。
 髪が少し伸び、肩までの黒い髪。紺のスーツを着て。
 俺の隣に。

 佐山沙希という女の子が。

「佐山……?」
「えっ?」
 佐山の名を呼ぶ俺に視線を移す。
 見知った瞳。髪は伸びてはいるが、顔立ち、輪郭……。
 俺の記憶の佐山のままだった。
「佐山! さやまっ!」
「えっ……」
 急に立ち上がった俺を見て驚いた表情をしていた。
「お前……。こんなところにいるなんて……。佐山……。よかった……」
 嬉しくて、ほっとして。まぶたに熱いものを感じてくる。
 どんなに、この女の子のことを探していたか、待っていたか……。
 今まで色々言いたいこと、伝えたいこと、たくさんあったのに、みんな忘れてしまった。
 でも、佐山がいてくれて。
 あの日突然いなくなってしまった不安が、今になって、ようやく溶かされた気持ちになって。
 俺は、俺は……。
「ち、ちょっと、待ってください。すみませんが、どなたかと勘違いされていませんか」
「えっ……?」
「私の名前は、『高嶺沙耶たかねさや』といいます。さや……とか言われていたようですけど、私はあなたのことは知りません。初めてお会いします」
 落ち着いた口調で、表情もそのままで。俺をなだめるようにそう言った。
「たかね、さん……? でも。佐山なんだろ? 冗談は」
「すみませんけど、本当にあなたのことは知りません。どうか、落ち着いてください」
 佐山……じゃない?
 落ち着いた物腰。穏やかな口調。確かに、俺の知っている佐山は、こんな性格じゃない。
 でも、でも。
「佐山じゃ……ないのか? 俺だよ、鏡だよ」
「はい。すみません。私、あなたのこと、本当に知りません。何処かでお会いしていましたか?」
 俺を見て慌てる様子もなく、困ったような表情を見せている。
 この女の子をどう見ても佐山としか見えない。
 でも、違う人だと言う。俺を知らないと言う。
 4年という間に俺のことを忘れてしまったのか? それとも、本当に別の女の子なのか?
 頭が混乱する。
 佐山だけど、佐山じゃないなんて。
 俺はどうしたらいいんだ!
 俺は、頭を抱えた……。
「大丈夫、ですか?」
 佐山じゃないのなら、俺はほんとにただ取り乱したおかしい男としか見えないだろう。
 こんなところで、取り乱したりしても、何にもならないが……。
「あ、ああ……。知り合いに似ていたもので……。取り乱したりしてすまない」
 混乱と驚きで、鼓動が早くなるのを懸命に抑えて、俺は椅子に座った。
 今は、そうするしかないだろう。
「そうなんですか。そんなに似ている人なんですか」
「そうなんだ……。すまない。ああ、俺の名前は『秋月鏡』」
「あきつき、きょう……。ずいぶん詩的な名前なんですね」
「あ、ありがとう……」
 笑みを俺に見せた。その笑顔も、俺の知ってる女の子のようで……。
 納得できなくて。
 佐山に間違いなくて。
 でも、違う人だと言って。
 いいさ。
 この会社で一緒になったってことだから、これから色々と聞くことが出来る。
 佐山の笑顔を、違う人と言ったが……、見ることが出来て、俺は少しだけ、安心していた。 


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