嗚呼、日の光って眩しいッスね。
そうして知人というよりは知人じゃない気のするちょっとした知人との雑談を終え、俺は余計自分の生まれを恨むこととなった。
世界にはいろんな人間が転がってるんだ。ゴージャスだったりゴージャスだったりゴージャスだったり。萌え分を仮想現実で取ったことなんてないですよ〜という羨ましすぎる状況下の者だっているはずだ。ああもうゴージャスだなぁもうっ。羨ましすぎてクネクネしちゃぅ。
いや、現実的萌え分に不足しているわけではないんだ。
俺には妹がいる。可愛らしい妹様がいる。そいつは世話焼きで何かあると俺を頼ってきてくれて――しかし実の妹――お兄ちゃん分が足りないよぉ〜とかいっていちゃいちゃしてきてくれたりツンデレしてくれたりと願ったり叶ったりな妹がいる――しかし実の妹ぉぉ――んだ。
だが、だが、それで満足していていいのだろうか。確かに切羽詰ってしまえば実の妹ともギシギシアンアンできてしまうだろう。しかしギシギシアンアンの相手がたったひとりでしかも親族というのは、はたしてどうなのだろう。男を有意義に過ごしているといえるのだろうか。否。あえていおう。世の中にはいろいろな萌えがあると。妹属性だけで満足していてはいけないのだ。そう、今こそ姉萌えへと旅たつのだぁぁぁぁ!
「しかし、実際問題どう動けばいい?」
辺りを見渡した。商店街の一角らしくオバサンやオバサンやオバサンやカップルやカップルやカップルどもが忙しく歩き去っていく。オバサンの行く先には【"肉"大安売り】の看板が。カップル共がどこに行くかは知らん。若気の至りの超完全体みたいなもんだから予想もできるはずないだろーが。くそぅ、体験したーい。
こんな平々凡々な街で、はたして萌え要素を見つけられるのだろうか。
冬葉原に移り住むべきなのだ。そう。俺はあの地に呼ばれている。いうならば勇者と魔王がいつかは引き合わされるという風に、なにか運命的なものがあるのだ。俺はあの場所に行かなくてはならない。この直感に理屈があるはずがない。しかし、運命ということならば頷ける。おお、そうだったのか。ならば余計がんばらなくてはならないな!
「待て。シチュエーションに凝ってみるというのも手ではないか」
いうならフラグ建設。王道ともいうべき恋愛ストーリーには、必ず美少女が付き従ってくる。あえて自分からその道に狙いをつけてみるというのはどうだろうか。
しかし、この手も考えなくてはならない。はたして、学校今まさに遅刻しそう中での出会いが掴む女に美少女の比率が何パーセントくらいあるのか。いや、そんなものとうに答えはわかっている。俺はすでに今の高校の新一年生すらも全て把握している。若くてピチピチな女学校長に尋ねたから間違いはな――
そうか。フラグ建設の王道が学校以下略だけとは限らない。
前にあの女学校長略して女長に聞かされたことがある。恋愛の王道はマグロ咥えた女の子とぶつかることだけどあれは選択肢次第でマグロルートにいっちゃうから現実的だよね無視したら刺されるとかここ最近の若い学生のキレやすさを物語ってるよねやっぱりフラグで楽そうなのはヤクザのボスの箱入り娘と親しくなるってやつだろうねちょっぴりダークなのが刺激的で萌えだよ萌えうぅん萌えるもう一杯お〜い萌えぴぴるぴるぴるぴぴるぴ今こそ萌え萌えヒートを見せるときですもう帰っていいですか声だけの出演とかメチャ気に入らないんだけどあまだ録音続いてるのやめてこの部分切って編集してお願い何でも言うこと聞くから成績全教科最高にしてあげるから頼むから拝むから以下略
「ってことで、玉の輿を狙うのがセオリーだと思うんだ!」
叫ぶ。気合を入れる。喝を入れる。
善は急げ、俺は走り出した――
途端、裏路地の方でなにやら声が聞こえた。
何事かと、のそのそ覗き込む。
「や……やめてくださぃ」
「いいジャンいいジャン。そそる顔してくれちゃってるジャン」
「俺たちは悪い大人じゃないんだよぉハァハァ。君といっしょに遊びたいってだけの子供みたいな大人なんだよハァハァ」
変人が二匹いた。女の子が一人いた。
暗がりだから顔までは見えない。ロングヘアーがふわふわしていて印象に残りそうだ。声も鈴が鳴るようなソプラノで、どこか心地良い。
しかし、いけ好かない。
女子様は神様だ。神様に怯えた声を発させるのは愚か者だ。何というご無礼なっと血相を変えて乗り込んでもいいくらい僕は女子神様の崇拝者だ。
だが、残念にも今私の身は任務を受けている。大きな改革に小さな犠牲は致し方ない。ここは目を瞑って……
「ちょっと、通りすがりなそこの君!」
人がごった煮なほうへと首を回して、適当そうな人に声をかけた。
戸惑いがちに辺りを見回し、俺? と言う風に自分を指差すそいつにコクコクと頷く。そして、駆け寄った。
若い子だ。中学生くらいだろうか、学生服のボタンは全開だが姿勢はきちんとしている。短く切り揃えられた髪が男らしい。今時はやってるロン毛というのがどうも気に入らない性質なのはどうでもいい。
「悲しくも俺は大事な大事なミッションの遂行中なのだ。故、君に任せたいと思う! あの路地裏に行ってみたまえさあいますぐさあはやくさあそれじゃ! 俺の名前は聞かんでくれよ! ワッハッハッハ!」
言いたいことだけを言い、猪突猛進で去る。
ちょっとだけ気になったので振り返ってみれば、あの学生があの少女のいる現場へ動こうとしているではないか。
グッジョブだ。心の中だけで親指をあげる。
あちらはもう心配ないだろう。
そうと決まれば善は急げ、俺は走り出した。
○ ○ ○
今時のヤクザというのは会員証が必要なのか。
≪ヤクザのしおり〜これであなたも悪の端くれ!〜≫の冊子をペラペラ捲る。三十分で読破してしまったわりには、内容が素晴らしかった。死にそうな犬を一思いに拳銃でぶち抜いた片目の黒服男の話に感動したっ。真っ青な地階を歌いながら発砲だなんて凄いよなぁ。
まあともかく、門前払いをくらってしまったわけだ。
困った。どうしよう。これではフラグを建てられない。
「あ。あなたはあのときの」
途方に暮れる最中、嬉々とした声に話しかけられる。
誰だと訝しげに思いながら振り返ってみると、見知らぬ男女の一組が。
……いや、どこかで見たことのあるような、ううむ、誰だっけ。
「智樹くんのお知り合い?」
ソプラノの声。ふわふわとしているロングヘアを揺らし、小首を傾げる女の方。
とりあえず、そういうことなのだろう。俺は首を縦に振った。
その後はあっという間に空間を隔絶され、男女はクスクスと微笑み合いながら俺の存在など忘れ去っている。
なんちゃらは盲目というやつだろうか。特定の人物しか目に入らぬという、なんと罪深い状態か。忘却される者のことも考えてもらいたい。
しかし、そんな不快感はすぐにどうでもよくなった。
親が子を見つめるように、その若い一組を暖かい目で眺める。
嗚呼、日の光って眩しいッスね。
そうして知人というよりは知人じゃない気のするちょっとした知人との雑談を終え、俺は余計自分の生まれを恨むこととなった。
世界にはいろんな人間が転がってるんだ。ゴージャスだったりゴージャスだったりゴージャスだったり。萌え分を仮想現実で取ったことなんてないですよ〜という羨ましすぎる状況下の者だっているはずだ。ああもうゴージャスだなぁもうっ。羨ましすぎてクネクネしちゃぅ。
いや、現実的萌え分に不足しているわけではないんだ。
俺には妹がいる。可愛らしい妹様がいる。そいつは世話焼きで何かあると俺を頼ってきてくれて――しかし実の妹――お兄ちゃん分が足りないよぉ〜とかいっていちゃいちゃしてきてくれたりツンデレしてくれたりと願ったり叶ったりな妹がいる――しかし実の妹ぉぉ――んだ。
だが、だが、それで満足していていいのだろうか。確かに切羽詰ってしまえば実の妹ともギシギシアンアンできてしまうだろう。しかしギシギシアンアンの相手がたったひとりでしかも親族というのは、はたしてどうなのだろう。男を有意義に過ごしているといえるのだろうか。否。あえていおう。世の中にはいろいろな萌えがあると。妹属性だけで満足していてはいけないのだ。そう、今こそ姉萌えへと旅たつのだぁぁぁぁ!
「しかし、実際問題どう動けばいい?」
辺りを見渡した。商店街の一角らしくオバサンやオバサンやオバサンやカップルやカップルやカップルどもが忙しく歩き去っていく。オバサンの行く先には【"魚"大安売り】の看板が。カップル共がどこに行くかは知らん。若気の至りの超完全体みたいなもんだから予想もできるはずないだろーが。くそぅ、体験したーい。
こんな平々凡々な街で、はたして萌え要素を見つけられるのだろうか。
夏葉原に移り住むべきなのだ。そう。俺はあの地に呼ばれている。いうならば勇者と魔王がいつかは引き合わされるという風に、なにか運命的なものがあるのだ。俺はあの場所に行かなくてはならない。この直感に理屈があるはずがない。しかし、運命ということならば頷ける。おお、そうだったのか。ならば余計がんばらなくてはならないな!
「待て。シュチエーションに凝ってみるというのも手ではないか」
いうならフラグ建設。王道ともいうべき恋愛ストーリーには、必ず美少女が付き従ってくる。あえて自分からその道に狙いをつけてみるというのはどうだろうか。
しかし、この手も考えなくてはならない。はたして、学校今まさに遅刻しそう中での出会いが掴む女に美少女の比率が何パーセントくらいあるのか。いや、そんなものとうに答えはわかっている。俺はすでに今の高校の新一年生すらも全て把握している。若くてピチピチな女学校長に尋ねたから間違いはな――
そうか。フラグ建設の王道が学校以下略だけとは限らない。
前にあの女学校長略して女長に聞かされたことがある。恋愛の王道はマグロ咥えた女の子とぶつかることだけどあれは選択肢次第でお母さんルートにいっちゃうから昼ドラ的だよねここ最近ののいろいろを物語ってるよねやっぱりフラグで楽そうなのはヤクザのボスの箱入り娘と親しくなるってやつだろうねちょっぴりダークなのが刺激的で萌えだよ萌えうぅん萌えるもう一杯お〜い萌えぴぴるぴるぴるぴぴるぴ今こそ萌え萌えヒートを見せるときですもう帰っていいですか声だけの出演とかメチャ気に入らないんだけどあまだ録音続いてるのやめてこの部分切って編集してお願い何でも言うこと聞くから成績全教科最高にしてあげるから頼むから拝むから以下略
「ってことで、玉の輿を狙うのがセオリーだと思うんだ!」
叫ぶ。気合を入れる。喝を入れる。
善は急げ、俺は走り出した――
途端、裏路地の方でなにやら声が聞こえた。
何事かと、のそのそ覗き込む。
「ちょっと、近づかないでよ!!」
「いいジャンいいジャン。そそる顔してくれちゃってるジャン」
「俺たちは悪い大人じゃないんだよぉハァハァ。君といっしょに遊びたいってだけの子供みたいな大人なんだよハァハァ」
変人が二匹いた。女の子が一人いた。
暗がりだから顔までは見えない。ポニーテールに吊り目。強気な様を思わせるが、怯えた風に声を震わせていては空元気なのが見え透いている。
しかし、いけ好かない。
女子様は神様だ。神様に怯えた声を発させるのは愚か者だ。何というご無礼なっと血相を変えて乗り込んでもいいくらい僕は女子神様の崇拝者だ。
だが、残念にも今私の身は任務を受けている。大きな改革に小さな犠牲は致し方ない。ここは目を瞑って……
「ちょっと、通りすがりなそこの君!」
人がごった煮なほうへと首を回して、適当そうな人に声をかけた。
戸惑いがちに辺りを見回し、俺? と言う風に自分を指差すそいつにコクコクと頷く。そして、駆け寄った。
若い子だ。中学生くらいだろうか、学生服のボタンは全開だが姿勢はきちんとしている。白髪に赤シャツ。赤シャツの方にはドクロがイラストされていて、一瞬話しかける相手を間違えたかと悔む。今時はやってるロン毛というのがどうも気に入らない性質なのはどうでもいい。
「悲しくも俺は大事な大事なミッションの遂行中なのだ。故、君に任せたいと思う! あの路地裏に行ってみたまえさあいますぐさあはやくさあそれじゃ! 俺の名前は聞かんでくれよ! ワッハッハッハ!」
言いたいことだけを言い、猪突猛進で去る。
ちょっとだけ気になったので振り返ってみれば、あの学生があの少女のいる現場へ動こうとしているではないか。
グッジョブだ。心の中だけで親指をあげる。
あちらはもう心配ないだろう。
そうと決まれば善は急げ、俺は走り出した。
○ ○ ○
今時のヤクザというのは会員証が必要なのか。
≪ヤクザの初期知識〜これであなたも今日から悪役!〜≫の冊子をペラペラ捲る。三十分で読破してしまったわりには、内容が素晴らしかった。死にそうな猫を一思いにグレネードランチャーでぶち抜いた両目の白服男の話に感動したっ。真っ黄色な血界を歌いながら発砲だなんて凄いよなぁ。
まあともかく、門前払いをくらってしまったわけだ。
困った。どうしよう。これではフラグを建てられない。
「あ。あんたはあのときの」
途方に暮れる最中、あっとした声に話しかけられる。
誰だと訝しげに思いながら振り返ってみると、見知らぬ男女の一組が。
……いや、どこかで見たことのあるような、ううむ、誰だっけ。
「誰このおっさん、アンタの知り合いなの?」
ソプラノの声。キッツイ性格をした高飛車そうなポニーテール少女が、まるで生ゴミを見るような目を俺に向ける。
とりあえず、そういうことなのだろう。俺は漢の方に首を縦に振った。
その後はあっという間に空間を隔絶され、男女はクスクスと微笑み合いながら俺の存在など忘れ去っている。
なんちゃらは盲目というやつだろうか。特定の人物しか目に入らぬという、なんと罪深い状態か。忘却される者のことも考えてもらいたい。
しかし、そんな不快感はすぐにどうでもよくなった。
親が子を見つめるように、その若い一組を暖かい目で眺める。
嗚呼、日の光って眩しいッスね。
そうして知人というよりは知人じゃない気のするちょっとした知人との雑談を終え、俺は余計自分の生まれを恨むこととなった。
世界にはいろんな人間が転がってるんだ。ゴージャスだったりゴージャスだったりゴージャスだったり。萌え分を仮想現実で取ったことなんてないですよ〜という羨ましすぎる状況下の者だっているはずだ。ああもうゴージャスだなぁもうっ。羨ましすぎてクネクネしちゃぅ。
いや、現実的萌え分に不足しているわけではないんだ。
俺には妹がいる。可愛らしい妹様がいる。そいつは世話焼きで何かあると俺を頼ってきてくれて――しかし実の妹――お兄ちゃん分が足りないよぉ〜とかいっていちゃいちゃしてきてくれたりツンデレしてくれたりと願ったり叶ったりな妹がいる――しかし実の妹ぉぉ――んだ。
だが、だが、それで満足していていいのだろうか。確かに切羽詰ってしまえば実の妹ともギシギシアンアンできてしまうだろう。しかしギシギシアンアンの相手がたったひとりでしかも親族というのは、はたしてどうなのだろう。男を有意義に過ごしているといえるのだろうか。否。あえていおう。世の中にはいろいろな萌えがあると。妹属性だけで満足していてはいけないのだ。そう、今こそ姉萌えへと旅たつのだぁぁぁぁ!
「しかし、実際問題どう動けばいい?」
辺りを見渡した。商店街の一角らしくオバサンやオバサンやオバサンやカップルやカップルやカップルどもが忙しく歩き去っていく。オバサンの行く先には【"店"大安売り】の看板が。カップル共がどこに行くかは知らん。若気の至りの超完全体みたいなもんだから予想もできるはずないだろーが。くそぅ、体験したーい。
こんな平々凡々な街で、はたして萌え要素を見つけられるのだろうか。
春原葉に移り住むべきなのだ。そう。俺はあの地に呼ばれている。いうならば勇者と魔王がいつかは引き合わされるという風に、なにか運命的なものがあるのだ。俺はあの場所に行かなくてはならない。この直感に理屈があるはずがない。しかし、運命ということならば頷ける。おお、そうだったのか。ならば余計がんばらなくてはならないな!
「待て。ショチエーシュンに凝ってみるというのも手ではないか」
いうならフラグ建設。王道ともいうべき恋愛ストーリーには、必ず美少女が付き従ってくる。あえて自分からその道に狙いをつけてみるというのはどうだろうか。
しかし、この手も考えなくてはならない。はたして、学校今まさに遅刻しそう中での出会いが掴む女に美少女の比率が何パーセントくらいあるのか。いや、そんなものとうに答えはわかっている。俺はすでに今の高校の新一年生すらも全て把握している。若くてピチピチな女学校長に尋ねたから間違いはな――
そうか。フラグ建設の王道が学校以下略だけとは限らない。
前にあの女学校長略して女長に聞かされたことがある。恋愛の王道は人咥えた女の子とぶつかることだけどあれは選択肢次第で壷ルートにいっちゃうからリアル的だよねここ最近のご時世を物語ってるよねやっぱりフラグで楽そうなのはヤクザのボスの箱入り娘と親しくなるってやつだろうねちょっぴりダークなのが刺激的で萌えだよ萌えうぅん萌えるもう一杯お〜い萌えぴぴるぴるぴるぴぴるぴ今こそ萌え萌えヒートを見せるときですもう帰っていいですか声だけの出演とかメチャ気に入らないんだけどあまだ録音続いてるのやめてこの部分切って編集してお願い何でも言うこと聞くから成績全教科最高にしてあげるから頼むから拝むから以下略
「ってことで、玉の輿を狙うのがセオリーだと思うんだ!」
叫ぶ。気合を入れる。喝を入れる。
善は急げ、俺は走り出した――
途端、裏路地の方でなにやら声が聞こえた。
何事かと、のそのそ覗き込む。
「……」
「おうおう。お人形さんみたいに澄ました顔してくれちゃって、可愛いねぇハァハァ」
「俺たちは悪い大人じゃないんだよぉハァハァ。君といっしょに遊びたいってだけの子供みたいな大人なんだよハァハァ」
変人が二匹いた。女の子が一人いた。
暗がりだから顔までは見えない。ロングヘアーを全て下ろしたその少女はぼさっと突っ立っているだけにも見える。ほんと、あの変人が言うようによくできたお人形に見える。
絡まれているのだろうか。しかし、それにしては女の子の方がおびえていないようにみえる。もしかしたら知り合いなのかも――いいや、それはないだろう。相手側のほうはどうみてもあの子を襲おうとしている。ならなぜあの子は逃げない? 所詮俺は野次馬側の人間で、あの子の事情など知る由もないってことか。
しかし、いけ好かない。
女子様は神様だ。神様に怯えた声を発させるのは愚か者だ。何というご無礼なっと血相を変えて乗り込んでもいいくらい僕は女子神様の崇拝者だ。
だが、残念にも今私の身は任務を受けている。大きな改革に小さな犠牲は致し方ない。ここは目を瞑って……
「ちょっと、通りすがりなそこの君!」
人がごった煮なほうへと首を回して、適当そうな人に声をかけた。
戸惑いがちに辺りを見回し、俺? と言う風に自分を指差すそいつにコクコクと頷く。そして、駆け寄った。
若い子だ。中学生くらいだろうか、学生服のボタンがキチンと締められていて姿勢もきちんとしている。長く伸ばされた黒髪に思わず顔を顰めそうになった。今時はやってるロン毛というのがどうも気に入らない性質なのはどうでもいい。
「悲しくも俺は大事な大事なミッションの遂行中なのだ。故、君に任せたいと思う! あの路地裏に行ってみたまえさあいますぐさあはやくさあそれじゃ! 俺の名前は聞かんでくれよ! ワッハッハッハ!」
言いたいことだけを言い、猪突猛進で去る。
ちょっとだけ気になったので振り返ってみれば、あの学生があの少女のいる現場へ動こうとしているではないか。
グッジョブだ。心の中だけで親指をあげる。
あちらはもう心配ないだろう。
そうと決まれば善は急げ、俺は走り出した。
○ ○ ○
今時のヤクザというのは会員証が必要なのか。
≪ヤクザノート〜書いた相手を射殺する方法〜≫の冊子をペラペラ捲る。三十分で読破してしまったわりには、内容が素晴らしかった。死にそうな犬を一思いに拳銃でぶち抜こうとした片目の黒服男だが犬だと思っていたものは実は着ぐるみでそれを撃って狂喜する様はどうみても変態ですほんとにありがとうございましたっ。真っ赤な手による痴漢を歌いながら発砲だなんて凄いよなぁ。悪い意味で。
まあともかく、門前払いをくらってしまったわけだ。
困った。どうしよう。これではフラグを建てられない。
「あ。あなたはあのときの……用事はお済みになられたのですか?」
途方に暮れる最中、嬉々とした声に話しかけられる。
誰だと訝しげに思いながら振り返ってみると、見知らぬ男女の一組が。
……いや、どこかで見たことのあるような、ううむ、誰だっけ。
「……」
光を照り返さない真っ黒の瞳で、俺をじっと見つめる女の方。なんだなんだ。あまりにも無表情すぎて批評的な視線以上に痛いぞこりゃ。
はにかむ頬がピクピク引きつるのを感じながら、俺は片手を上げる。
その後はあっという間に空間を隔絶され、男女はクスクスと微笑み合いながら――悲しくも、笑っているのは男の方だけ。一人漫才をしているかのようだ――俺の存在など忘れ去っている。
なんちゃらは盲目というやつだろうか。特定の人物しか目に入らぬという、なんと罪深い状態か。忘却される者のことも考えてもらいたい。
しかし、そんな不快感はすぐにどうでもよくなった。
親が子を見つめるように、その若い一組を暖かい目で眺める。
嗚呼、日の光って眩しいッスね。
そうして知人というよりは知人じゃない気のするちょっとした知人との雑談を終え、俺は余計自分の生まれを恨むこととなった。
世界にはいろんな人間が転がってるんだ。ゴージャスだったりゴージャスだったりゴージャスだったり。萌え分を仮想現実で取ったことなんてないですよ〜という羨ましすぎる状況下の者だっているはずだ。ああもうゴージャスだなぁもうっ。羨ましすぎてクネクネしちゃぅ。
いや、現実的萌え分に不足しているわけではないんだ。
俺には妹がいる。可愛らしい妹様がいる。そいつは世話焼きで何かあると俺を頼ってきてくれて――しかし実の妹――お兄ちゃん分が足りないよぉ〜とかいっていちゃいちゃしてきてくれたりツンデレしてくれたりと願ったり叶ったりな妹がいる――しかし実の妹ぉぉ――んだ。
だが、だが、それで満足していていいのだろうか。確かに切羽詰ってしまえば実の妹ともギシギシアンアンできてしまうだろう。しかしギシギシアンアンの相手がたったひとりでしかも親族というのは、はたしてどうなのだろう。男を有意義に過ごしているといえるのだろうか。否。あえていおう。世の中にはいろいろな萌えがあると。妹属性だけで満足していてはいけないのだ。そう、今こそ姉萌えへと旅た
「やっと見つけたで。あんたやな、≪噂≫の正義のヒーロー気取りなやつってのは」
誰だ。アンタは。
商店街の真っ只中、俺は黒い服を着た奴ら数人に囲まれていた。おいおいどういうことだよ。俺が何かしたか?
「とぼけるんやないでぇ。ネタはあがっとんのや。
よくもワイの下僕どもを蹴散らしてくれよったなぁ」
何言ってんだ。俺は何もしていない。今日したことといえば、裏路地の出来事を周りの人にチクったり裏路地の出来事を周りの人にチクったり裏路地の出来事を周りの人にチクったりくらいだ。濡れ衣だぞ。
「やっちまぇや」
「圧凄!」
ヘラヘラ笑いを浮かべる、血相が異様なくらいに白いへにょへにょ人。同じくヘラヘラ笑っている、身体がゴツい野郎人。
その二人が、関西弁野郎に指示されて俺に一歩また一歩と近寄ってくる。
……オイオイ。人生ここでゲームオーバーかよ。そりゃないだろ。
こんなことになるなら妹との恋愛に妥協すればよかった。嗚呼、あの夜に拒まなければ俺は幸せになれていたのだろう。回想開始――
「てりゃぁ!!」
「ぐはぁ!?」
「ぐフゥ!?」
回想を断念せざるを得なくなる、大きな声がした。
何事かと考え事をやめれば、なぜか俺の前には少女が立っている。
後ろ姿だけだから判断がつきにくいが、服はどこかの学校の制服みたいだ。帰宅中といった風で、右肩にカバンをかけている。髪のいくらかを両側に束ね他を下ろすという髪型だからか、オレンジ色をした細めのリボンがぴょんぴょんしている。
……誰だ、こいつ。
見知ったやつではないと断言できた。知り合いの女性ならば、脳内に保存している詳細付きリストと即座に照らし合わせた時点で誰かわかっている。第一、
大のおとな二人を蹴り飛ばすような女性と、知り合いになるはずがない。
「正宮高校二年四組の私を前に、街中で喧嘩をやろうとは良い度胸じゃない!」
嬉々とした声でその少女が言った。
それに応えるように、尻餅をついている二人と関西弁の奴がビクッと震え後ずさる。
「ボスの娘だ……」
「たしか黒帯だよな……」
「何告げ口されるかわかんねぇぞ……た、退散でぇ!!」
いや、訂正。後ずさった挙句にトンズラしやがった。
関西弁の人が口調を瓦解しちまうほど、この女は怖いやつなのだろうか。ともかく、俺は彼女にお礼を言うことにして口を開いた。
「あのさ、助けてありがとよ」
「おう、気にすんな♪」
その子が明るい口調でそう言い、振り返ってくる。
俺はハッと息を呑まされた。
制服をはちきらんほどに張っている胸。予想していたキツイ印象を与えるものとは違う目つき。唇がしっとりと濡れるように紅い。
「アンタね、≪噂≫の人は。私、アンタのこと気に入ってんのよ。これから仲良くしてね」
また≪噂≫か。しかし、あんな三人組に絡まれたときとは違って、今回は少し気分が良いな。
悪い女じゃないようだし、仲良くしてもいいかもしれない。
「ああ……よ、よろしく」
俺はうんと頷き、彼女が差し出す手を掴んだ。
その後も少しくっちゃべったが、いやはや、ぎこちなさがバレなくてよかったね。
それにしても、と俺は談笑してる間に思ったよ。
嗚呼、日の光って眩しいッスね。
そうして知人というよりは知人じゃない気のするちょっとした知人との雑談を終え、俺は余計自分の生まれを恨むこととなった。
世界にはいろんな人間が転がってるんだ。ゴージャスだったりゴージャスだったりゴージャスだったり。萌え分を仮想現実で取ったことなんてないですよ〜という羨ましすぎる状況下の者だっているはずだ。ああもうゴージャスだなぁもうっ。羨ましすぎてクネクネしちゃぅ。
いや、現実的萌え分に不足しているわけではないんだ。
俺には妹がいる。可愛らしい妹様がいる。
end |