14.浜田さんを応援に行きました
浜田さんは順調に勝ち進んでいました。勝っては、僕の方に向かって笑顔を返してきます。
約束分かってるでしょうね、と語りかけているようです。
僕は浜田さんが出場しているレスリングの大学選手権大会の応援に来ています。
浜田さんは危なげなく、全てフォール勝ちでした。
健太の時は、女装するのが嫌だから、相手を応援する方に回っていましたが、今回は浜田さんを応援しています。
女装してでも、浜田さんとディズニーランドに行きたかったからです。
僕は、浜田さんが優勝できるか心配で、一緒に応援に来ている隣の健太に聞いてみました。
「浜田さんの対抗馬って誰なんだ」
「そんなのおらん。浜田先輩なら寝てても勝てるわ」
「寝てて勝てる訳がないじゃないか。もっとまじめに答えろよ」
「お前はアホかいな。それぐらい実力差があるってことや」
確かに、試合を見てれば、実力差は歴然としています。
決勝でも、浜田さんは逃げる相手を一方的に攻めまくり、30秒ほどでフォール勝ちしてしまいました。
本当に浜田さんの試合している姿は、健太のようにドタバタしているのではなく、華麗で美しかったです。
僕と健太は、浜田さんの元へ優勝のお祝いを言いにいきました。
「浜田さん、優勝おめでとうございます」
浜田さんは汗をタオルで拭きながら、
「ありがとう。約束通り優勝したわよ。あなたも約束は守ってね」
「はい、分かってます」
「いつがいいかな。私今度の土曜がいいんだけど、丁度練習がないから」
「今度の土曜日ですか、大丈夫だと思います」
と言ったものの、良姉の都合を聞かないと駄目なのです。
良姉にやってもらわないと、女にはなれないのです。今日でも、姉さんに頼んでみようと思いました。
「それじゃ、土曜日に7時半に浦安で待ち合わせで構わないかな」
「えー、7時半ですか、早くないですか」
「早い方がいいのよ。面白い乗り物乗る為には、開門と同時に入らないと」
僕は、心配になってきた。女になるのに最低1時間は掛る。6時くらいから用意しないと間に合わない。
(良姉、6時に起きてやってくれるかな)と心配になってきました。
「お前、さっき浜田先輩と話してた約束って何なんや」
「別に大したことないよ」
「教えてくれたってええやないか。俺とお前の仲やないか」
あまりにしつこく聞くので、浜田さんとデートの約束をした事を話しました。
しかし、女装してデートすることは言いませんでした。言えば、話が長くなり健太が変に誤解しそうで。
「お前、もうそこまでいってたんか。お前、おとなしそうな顔してやるやないか」
恋人が出来た余裕か、健太も浜田さんとの進展を素直に喜んでくれました。
「へー、純があの有名なレスリングの浜田選手と付き合ってるの」
とビックリして、良姉は驚きの声をあげました。姉でさえ、浜田さんを知っていたのです。
僕は、姉に化粧をしてもらう必要があり、また、服も貸してもらう必要があります。
仕方なく姉に今までの経緯や、僕の浜田さんへの思いを語ったのでした。
「へー、純があの浜田さんを好きだなんて。でも、浜田さんの方が純よりずっと大きいのに」
「別に大きくたっていいじゃないか。恋は身長でするもんじゃないよ」
「そうだけど、浜田さんが純のことをどうおもってるのかなあ、って思っただけよ」
それを言われると、純もつらいです。浜田さんはレスリングが恋人なわけで、
今のところ、純を恋の対象とは思っていないのは明白だったからです。
自然と僕は沈んだ顔になってしまいました。姉は僕の片思いの状況を察して、
「暗くなるな純、女の気持ちなんてどう転ぶかわからないわよ。私は純を応援してあげるからね。
今度の土曜日は任せておいて、朝6時に起きてあなたの女装手伝ってあげるから。
とびっきりの美人にしてあげる。男なら誰でもが振るいつきたくなるような美人にね」
「相手は女性なんだけど」
「何を言ってんのよ。男も女も一緒よ。それに、浜田さんってあなたの女装姿を見たがってんでしょ。
それなら、浜田さんに純の美しさを見せましょうよ。そうすりゃ、絶対にあなたに興味を持つわ。
よし、私頑張るわ。その代わり、私の言うこと聞くのよ。上から下まで完璧にしてあげるから。
朝6時じゃ遅いわね。5時半から始めるからね」
僕のことを思ってくれる姉に感謝をしました。でも、少し張り切りすぎている姉が不安でもありました。
「今日から金曜まで、私が肌の手入れの仕方教えるから、寝る前に必ずやるのよ。わかった」
「そこまでしなくても」
姉は、僕にお肌のお手入れを強要するのです。確かに姉は寝る前に時間を掛けてクレンジングをしています。
「駄目よ。あんた浜田さんに気に入られたいでしょ」
何か勘違いしています。でも姉には逆らえません。ここで怒らせば、土曜日手伝ってもらえなくなるから。
姉は化粧品を並べ、説明し始めました。洗顔、パックの仕方、寝る前のナイト美容を教えてもらったのです。
僕は、毎日これをやることになりました。
朝4時半から起きて弁当を作っています。朝の弱い僕にとって辛いことです。
昨日は4時間くらいしか眠っていません。しかし、浜田さんの美味しそうに食べる姿を想像すると、苦になりません。
むしろもっといろいろな物を作っておけば良かったと思うくらいです。
僕の倍は食べる大食の浜田さんの為に、前日から仕込んで、数多くのおかずを作りました。
そして、大きいおにぎりと、小さなおにぎりと、2種類のおにぎりを作っておきました。
もちろん、大きい方は浜田さん、小さい方を食べるのが僕です。
5時半になって、姉が起きてきました。
「へー、沢山作ったわね。これ美味しそう」
と言って、姉が僕の作った料理をつまもうとしたので、
「駄目だよ。食べちゃ」
「こんなにあるじゃないの。少しくらい、いいじゃないの」
「浜田さんの為に作ったんだから、今日は駄目。良姉には、今度作ってあげるから」
「純って、ほんと良い奥さんになるわ。浜田さんにもその思いが届くといいわね」
僕は、姉に化粧をしてもらっています。
今までは、こんなことするの嫌で堪らなかったのですが、今日は出来る限りきれいにして欲しかったのです。
やはり、きれいな姿を浜田さんに見てもらいたかったのです。そして、気持ち悪がられないようにしたかったのです。
姉は、先日約束した通り、気合を入れて化粧してくれました。
「純の肌ってきれいだわ。それに色が白いし。やはり、毎日寝る前にやった肌のお手入れが良かったのね」
と感心しながら、僕に化粧をしてくれています。
「夜用の化粧と昼用の化粧は違うのよ。夜だと簡単で厚化粧でも蛍光灯の下ではきれいに見えるのよ。
でも、昼では厚化粧だと下品に見えるから、ナチュラルにしないと駄目なの。
化粧をしていないように見せて、ちゃんと化粧して綺麗に見せるのがテクニックなのよ。
私ぐらいの技さえあればそれも可能なの。今日はその技を存分に見せてあげるから」
講釈を入れながら、せっせと僕に化粧を施していきます。
「さあ、出来たわ。どう純、見てごらん。これが、自然の日光に照らされたら、もっと映えるんだから」
確かに、それ程化粧していないように見えながら、顔は僕とは思えないくらい女性的な顔に変わっています。
しかも、美しいのでした。今日のこの顔が僕は一番気に入りました。
姉の化粧した顔は、前に詐欺だと言ったことがありました。このことを謝らねばなりません。
これほど変われば詐欺に近いかも知れませんが、これはすばらしい姉の技術です。その技術で人を美しく変身させる。
僕は、生まれて初めて姉を尊敬しました。
姉は、今日は徹底的にこだわりました。僕をより魅力的に見せるために、時間を掛けて女にしていったのです。
まず最初にこだわったのは下着でした。姉はパンティーから女物を主張して譲らなかったのです。
「あなたね、そんな綺麗な顔して、色気のない男物のパンツ履いてたら、浜田さんも興冷めよ」
「そんな言ったって、パンツなんか絶対に見せること、ないじゃないか」
「これから、私が選ぶ服を見てないから、そんな事言えるのよ。
階段の上りや屈んだだけで見えるくらいのミニなのよ、その服を今日は着てもらうの。
だから、可愛いパンティーにしてもらう」
「・・・」
「この服、僕に合ってないよ。だって、ずり落ちて来るんだけど」
「馬鹿ね、これはこういう服なのよ」
「だって、片一方が中途半端にずり落ちるし、そちらを上げれば別の方ずり落ちて、片方の肩だけ丸見えになるんだけど、
ブラジャーの線まるみえじゃないか」
「それがいいんじゃないの。乱れたように見せるのがこの服の特徴なの。男はその乱れに弱いのよ」
「・・・」
(浜田さんって男じゃないんだけど)
「髪型もちゃんとセットしたから、今日一日崩れないから安心して、スリルのある乗り物乗っても、
髪がこの髪型を記憶しているから、ブラッシングすれば元の髪型に戻るから、大丈夫だからね。
もし、崩れたらこのようにブラッシングするのよ」
昨日の夜から、カーラーでセットしておいたのが、カーラーをとってもきれいなウエーブを残していた。
完全な女の髪型になっていて、頭を振って髪を乱してもすぐ元に戻って、フェミニンな髪型になる。
「化粧も今日一日は充分持つと思うけど、ファンデーションと口紅くらいは塗り直すのよ。
男の前で化粧直しちゃ駄目よ。ちゃんと断って女子トイレで直すのよ」
「・・・」
(男の前って、浜田さんは女なんだけど)
僕は、男であった面影はどこにもなくなってしまいました。姉は、綺麗だと誉めてくれました。
上から下まで、下着まで、イアリングまで、身体以外は全て姉からの借り物です。
お弁当を入れるバッグまで、姉に借りました。
どこから見ても男とは見えない姿を鏡は映しています。
この格好で、浜田さんとディズニーランドでデートするんだ。
この格好、浜田さんはどう思うかな?
+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。