吸い込まれるような青空に目をやると、自然とあいつの顔が浮かんでくる。
もしも、今小さくなっていなかったら…
高校でそれなりに勉強して、くだらねー話を仲間とだべって…、あいつの隣で…
今考えるとこんな奇妙な体験しているのって、俺と灰原くらいなもんか…
一旦思考を巡らすと、今更小学校一年生の授業を受けている生ぬるい頭脳が、目を覚ましてくる。
そりゃあそうだよな。ついこの間までは
「日本の救世主」とまで言われてたんだから───
コン
ん?と隣を振り返ると、灰原が呆れ顔をしている。気付くとクラスの奴らがみんな、俺の方をみている。
げ。
「江戸川くんーこの五番の問題分かるかな?空に犬でも飛んでいたの?」
どっと笑いが起こる。どうやら小林先生の犬の話題で盛り上がっていたようだった。
ため息をつきながら即興の答えを口にする。
****
「授業中、貴方また考え事していたわね。まぁ、たいがい彼女のことかしら?ホームズさん?」
下校中の道のりで、歩きながら灰原が口を開く。
否定もできずに俺は
「…ったく、悪かったな…」
と灰原にじと目で返す。
「…それにしても、久々に貴方やらかしていたわね。みんな驚いていたわよ?すぐさま答えをだして。あれ、応用問題だったらしいし。」
「マジかよ?」道理で、小林先生があの後変な顔していた。
「しっかりやってよ?貴方がこの生活に、どっぷりとはまっていたら困るのよ?」
へいへい… と返事をしようとしたら、急に上から声が降ってきた。
「なーににはまったら困るんだ?うな重にか?」
いつのまにか前を歩いていた三人が、怒ったように振り返っている。
「違いますよ元太くん。なんでいつもうな重に繋げようとするんですか?」
「もー、元太くんったら。…あーっわかった!!また二人でないしょの話をしてるんでしょ?」
「ぬけがけは許さねーぞ!?なに話してたんだ!?」
だんだんと話がまずい方向にいっている。
「ちっ、ちがうちがう。ゲームの話してたんだよ。どっぷりはまって大変で…」
「そっ、そうよ。今日みんなで博士の作った新しいゲームをしようか、って言っていたところだったのよ。」
灰原も俺にあわせて話を取り繕う。
「おー!それ本当か!?」
「やったー!最近博士の家行ってなかったよねー」
「今度はどんなゲームでしょうか!?」
三人はそれぞれの反応をし、早くいこうと駆けだしている。
「…ふう。」
「…ほんと子供って無邪気で良いわよね。」
そう言いながらも灰原の顔には、笑みが浮かんでいた。
この後、博士のうちでは二人で弁解しながらも、五人を受け入れてくれた。そうしてその日の午後は過ぎていった。
***
博士の家をでてから探偵事務所まで一人で帰る途中、ふと授業中の考え事を思い出した。
「もしも今小さくなっていなかったら。」
小さく口に出してみると、急にとても馬鹿らしい問いに聞こえた。
もしも?もしもなんて未来にはないんだ。
今、ここで小さくなったことでとても些細だけれど、貴重な体験が出来ているんだ。
それに蘭の事も…
丁度そこまで考えたとき、事務所の扉の前までたどり着いた。
俺は元気な、しかし偽りの声を張り上げながら、愛しい幼なじみの元へいくために、事務所の中へと飛び込んだ。 |