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ハッピーエンドじゃ終われない。  作者: くりゅー
第序章 はじまり
3/8

第三話 神の愛娘

空倉からくら……、空倉からくらくう

家は金持ちで、家内は平和そのもの。絶世の美女とも謳われた母の血を確かに継いでいる。

そんな空倉空は学園のアイドル……なんて、表立って存在はしないが、間違いなく空倉がこの学園のB学舎1番の美少女であることは間違いない。

胸も大きく、愛らしくはっきりした顔立ち、甘い声色。

先天的に持てるだけの美貌を全て兼ね備えた美少女である。

そしてさらに、運動神経も一度教われば完璧に再現する程。

芸術にも長けており、何度も素晴らしい作品を生み出した。

学業面もまさに天才的。A学舎へ編入できるほどの学力だというのに、何故かこのクラスにいる。 そういう生徒は僅かにだが、B学舎にもC学舎にも存在するらしいが、それぞれの学舎に思い入れがあるとか、各々の理由があるから留まっているらしいが、ただ空倉には留まる理由が見当たらない。


纏めていうとあらゆる面で完璧な女子だ。

そして極めつけは、ここまでの彼女の生い立ちや才能を語る上で少し感じて貰えただろうか?

この女子は究極的に運が良い。運の良さについてはこれまた色々な話があるのだが、

例えば宝くじを当てただとか……、知りもしない100桁のパスワードを適当な数字を入れただけで解除したりとか……その他の小さな幸運にも恵まれている。


唯一の欠点と言えば、こんなに幸せだろうに一つも笑わないことくらいか。




何故そんな風に空倉のエピソードを知っているかというと、それは単に空倉空が有名だからである。


単に有名だからというだけだ。他意はない。……本当に他意はない。









「……まさか……空倉さんが……??」


神の愛娘と呼ばれるあの子が、関わらないほうがよい・・・・・・・・・・奴らに気に入られてしまうなんて、神の愛娘らしくない。



「何が……“まさか”なんだよ? 別に誰が気に入られてようと不思議じゃないだろ?」

桟原が俺の驚き様に、逆に驚いていた。


まあ、そう言われればそうだが。


「……空ちゃん可愛いからなあ〜、逆神先輩もそりゃ気に入るわ〜」


と口々に納得する女子勢。

俺も彼女に関しては可愛いと思う。思うが、どうしてか気に食わなかった……。

いや理由はわかっている。


あんなに幸せな家庭に生まれて来て、幸せな毎日を送っているはずの空倉が、にこりとも笑わない。

俺はそれが気に食わなかった。


……まあ、彼女自身俺なんかにどう思われてようと知ったことで無いのだろうけれど。


「……私の噂をしていたの?」


不意に後ろから、透き通った綺麗な声が聞こえた。


「あ、空倉さん」

女子勢からも受けは良い空倉は、女子達からそう呼ばれて軽くお辞儀をする。


「……どんな話、してたの?」

「え? あいや、別に変なことじゃないよ。 ただほら空倉さん、逆神さんと面識があるって聞いて……」

いやあ桟原はちゃらいなあ。中学までは女の子と話すことなんて考えられなかったはずなのに、今や学園トップクラスの美少女に対して何も臆すことなく会話できている。

俺は少し……緊張してしまう。

気に食わないからじゃない。少し眩し過ぎるだけ。


「……そうなの」


そう一言言って、席に空倉は着く。

大人しい感じで可愛いらしいんだが、大人し過ぎるのも大変だな。……かといって……コイツほど乱暴でも大変だしな、

俺は気づかれないようにルカの横顔を見る。


「あのさ! 空倉さんは逆神さんと面識あるんだよね?」

「どんな人だった?」

「性格とか」

目には目を、女子には女子をという感じで女子勢が会話を切り開く。


「……うん……優しい人だったよ」


「やっぱり性格もイケメンなんだぁ~」

「いいなあ、私もお近づきになりたいなぁ」

と女子勢はうっとり遠目で、口々に理想を吐く。


いや、そんな“優しい”って感じの人じゃないぞって、忠告してやりたい。



それにしても、無表情だ。けして冷たい訳じゃない。頭がボーッとしてるみたいな……天然だと言われたら仕方ない。 まあそんな“ぽわぽわ”しているが故に彼女の人気は女子の中でも高い。


「……でも、どうしてそんな話を?」

「実はさ、あそこにいる時崎も逆神さんに会って、気に入られたんだよ。 そういう繋がりで……」

「……ふぅん……。」

少し驚いたような顔をして、空倉は綺麗な銀髪を風に靡かせる。


ちなみに俺は根っからの黒髪。桟原は金髪に染めてて、生まれ付きクリーム色のルカと、持っている色素がそうなのか薄いのか、銀髪の空倉。

そんな人々と並ぶと逆に黒髪の方が可笑しく見えてしまうが、基本的に日本人なら黒髪だろう。 学園のほとんどが黒髪だが、ちらほら有色髪を見かけるのは、髪を染めても文句を言われない学園だからなのと、外国人やハーフを積極的に学園が迎え入れているのが大きい。

というのもこの辺りは日本在住の外国人の人口が異様に高い。

歴史的背景がそこにはあるのだ。


「……時崎……君?」

首を傾げてこちらに何かを尋ねているらしいのだが……。

なんだろう直視出来ない。恥ずかしくて直視出来ない。


「……な、なに?」

ちょっとぶっきらぼうになってしまった自分を殺してやりたい。

そんな態度取ってたら、意識してるのバレバレじゃないか!!


「……気をつけて……ね?」

「え……っと…、逆神さんのこと?」

「……ううん。 最近通り魔が出るって……言うから」


そりゃ、今朝も誰かさん達に言われたなあ。


「……あ、ありがと……。」

ってか、何で俺に?? 空倉は知らないだろう、俺のアパートが火事で今公園暮らししてるのを。

なのに、俺だけに忠告するんだ??

俺の運悪さが知られていたのか……?



「どうして空倉さんが廻のことを心配するのよ!?」

本当に空倉と対象的なルカの語勢は本当に強い。


「……だめ?」

「だめじゃ……ないけど……」

やはりあのテンションの空倉は低反発枕みたいな奴で、攻撃的なルカの勢いをみるみる吸収していった。


「……ところでさあ……」

桟原が上手い具合に話を制して、話題を変えてくれるらしい。

「……時崎は、今日個人試験じゃなかった?? 勉強しなくていいの??」



「あっ……。」


完全に忘れてた。

学校に着いたら勉強しようと思って、それで遅刻して、授業にも殆ど参加出来ずに説教&パシられ……今に至るわけだが……。

昼休みも残り5分。放課後すぐに受けるのだから、もう勉強するのは昼休みしかない。


「……あああああああっ……してない。……やばい……」


何故、個人試験ゴリラのいやがせなんかに頭を悩ませなきゃならんのか!

俺は問いたい。


「……まあ、なるようになれよ。」桟原は完全他人事で肩を叩く。

俺の運の悪さでなるようになったら、どんな風になるのか。


「古典だけだし私がノート貸したげるよぉ」

「……まじか!?」

こういう時に中のよい女子がいると助かる。

桟原も馬鹿だし、男友達は馬鹿ばっか。

一応B学舎次席の明石あかしがいるが、奴は真面目すぎてノートなんか貸してくれない。


「次英語だけど、それで勉強してなって」

「恩に着るよ!ありがと!!」










個人試験……いや、個人(的に学年主任が課した)試験だが、流石に国、数、英、理、社の王道5教科はない。

今回の個人試験は学年主任の担当である古典一沢だ。

といっても古典には古文・漢文という二種あるわけで……古典と一くくりにしているんだから、共通点もあるのだろうが……、知識の無い俺には解らない。

知識の無い俺には古典というだけで2教科分の重みがあるといっていい。


古文に関して言えば……この助動詞の文法的意味は?とか……何活用か?とか……色々聞かれる訳で……。

正直さっぱりだ。

漢文に関して言えば……白文を現代語訳せよ、とか……再読文字だとか……こちらも色々と聞かれる。

同じくさっぱりだ。

まあさっぱり具合から見て、漢文の方がまだ救いがあると思い、今は漢文を必死に勉強している。



古文はまだ、漢文に比べればまだ現代語に近い。

単語の意味くらい推測できるだろうからスルー。

とはいえ、ヤマを張って一応は単語は覚えてた。


必死に古文の単語を脳に染み込ませようと、脳内で反復するのだが……


英語のCDがうるさくてしかたない。


それも仕方ない。

だって今英語の授業だし。



中学受験までは中間期末でもこんなに必死に勉強した覚えはない。

5教科総合500点満点の県内統一テストを受ければアベレージ470~480は取れた。


それで言之原の一般試験も受けたのだが……受験会場へ行く途中でタクシーが事故。俺も鞭打ちで病院に運ばれてしまったのだ。

それで滑り止めとして受けていた言之原の推薦試験でB学舎へと入学したわけだ。


が、しかし言之原の推薦試験ははっきり言って簡単。


ある程度馬鹿でも余裕で入れるため、学力の優秀な奴とそうでない奴とが混じり合う。

結果、生温い空気によって優秀であった奴もサボりがちになるという傾向がある。

ソースは俺。


高校に入って気が抜けた。高校受験の反動らしい。


実際、高校に入学して7ヶ月は経つが一度として勉強らしい勉強はしていないのだ。


だから、数学と英語だけはまだ良いが……センタープレテストなんかやろうものなら……



数学1A:86/100

英語:166/200

化学:12/100

物理:48/100

地理:30/100

歴史:56/100

国語:89/200


こんな感じだ。

国語の内訳は現代文100点、古文50点、漢文50点だ。

俺の現代文の得点率は89%なので、古文漢文合わせて0点という訳だ。


究極に苦手な古文漢文の暗記だ。英語のCDが妨害しなくても、俺の身体の免疫力が妨害しそうだ。




そして結局、ほとんど頭に単語が入らないままに5、6時間が終わった。



今日の授業が全て終わりを迎えたので、とりあえずHRまでのインターバルでノートを貸してくれた女の子、三枝さいぐさに返す。

俺を弄りにくる女子勢の中では1番知的なわけで、ノートも貸してくれたし名前くらい紹介してやる。



「覚えられたぁ?」

「まあ……そこそこかな。」

うっそぴょーん☆

何も頭に入ってこなかったぜ。

ノートを貸してくれた女友達のまとめ方は素晴らしいかったんだ。俺の頭が素晴らしくなかっただけ。

わざわざ貸してもらったわけだし、丁寧にノートを返した。


「ど?何とかなりそう?」

「ヤマが当たれば……余裕かな……?」「そっか~。でもあの学年主任ゴリラのテストだし、嫌らしい問題が出るかもよ~?」

「うっ……」

そうなったらヤマなんて張っても無意味だ。

そうならないことを願うしかない。


まあ、俺何かがヤマを張った時点でヤマなんか当たらないも同然だし。



陸上部の三枝は、放課後は部活だ。返すタイミングを失わないよう、HR前に返したのだが……


やばい。

HRが終わるまでの数分で、記憶が……単語が零れてゆくのが解る。


明日まで借りとくべきだったと今更後悔。


三枝の他にも俺をマスコットか何かと勘違いして寄ってくる女子は多くいて、その4割は帰宅、もしくは文化部の奴だ。場合によってはその娘達に借りようと考えながら……


もう既に、沢山暗記した単語はほとんど残っていなかった。



とりあえず、軽音楽同好会で、今日の昼休みに三枝と一緒に俺達と話をしていた女の子……一瀬いちのせ二宮にのみやにノート、プリント類を貸して貰い、個人試験の始まるまでの僅かな時間で勉強させて貰った。










試験会場はA学舎、B学舎、C学舎へとそれぞれに陸橋で繋がっている教員棟。

ABCと生徒が別れていても教員は変わらない。

A学舎のクラスを教える先生が、B学舎のクラスを教えたりもするわけだ。その為の教員は1時間毎に大移動を強いられてしまうのだが、それを少しでも減らそうと教員棟はそれぞれの学舎を繋ぐハブのような位置にある。


その教員棟4階。

特別指導室にて個人試験が行われる。



「それじゃあ、試験開始ッ」

「………。」


試験は50分。忌ま忌ましい学年主任の合図と共に試験は始まるが……


制限時間の3割もかけずに、俺のペンは止まる。

……止まるしかなかった。だって、俺の持てる知識で解ける問題は費えたのだから。


フリーズした姿を嬉しそうに学年主任ゴリラはなめるように眺める。

解答用紙をおもむろに覗き込み、満足そうに腕組みをする。


いったりきたり、いったりきたりとぶらぶら落ち着きのない学年主任は、もう本当…………檻の中を徘徊するゴリラだ。



「時間だ。……解答をやめなさい」



やけに上機嫌なこの学年主任ゴリラに解答用紙を渡して指導室からさっさと立ち退いてやった。


解答用紙の端に『ゴリラ死ね』と小さく書いて。



ゴリラと書いて、それが自分だとは学年主任も気付くまい。生徒の間での悪口なのだから。

自覚していたなら、その時はその時だ。



試験も終わったことだし、とりあえずは校舎に差し込む夕日でも浴びて慰めにしようかと、ふざけたことを考えながら夕日を目一杯に浴びながら廊下を歩く。


これからどうするか。……風呂はまた斑鳩家に借りに行くというのは忍びない。

とはいえ、近くに銭湯など無いし……


体育館にシャワーがあるのを使おうか。


「あ……。」


鞄を教室に置いたままだ。

個人試験後にすぐに帰るつもりもなかったし、教室に置きっぱなしだった。


パソコンやテレビといった暇つぶしの道具は、今は入れない家の中。

ケイタイやiPodは充電切れ。

ちょっとした若者なら発狂するレベルだ。


つまりはやることがない俺は、暇つぶし感覚で鞄を取りに行くことにした。








学園は広くて、体育の次の美術とか、音楽の後の体育なんかの時はほとんど間に合わない。

教員棟からB学舎の自分のクラスに戻るだけで5~7分かかった。

まあ急げば時間を短縮できるだろうが。


デカすぎるというのも考えものだ。



夕日で朱色に染まった廊下や教室は、いつものそれとは大分雰囲気が変わって見える。


少し高揚感。


慣れた自分のクラスでさえ、夕日のせいで別世界に見えた。


この時間まで学校に残ることなど、俺は帰宅部だしほとんどない。


「人がいないと、寒いなぁ……思ってたより」


外は更に寒いし、ついでに寒さを凌ごうと、自分の席に着く。


授業以外で座るこの席から見る景色は綺麗というより孤独だった。

世界で一人だけになったような気分だ。


なんだか訳もなくメランコリックになってしまう。



窓際から2番目の列故に、夕日が差し込み幾分か暖かい。



そういわれて見れば朝から居眠りをしていなかったことを思い出したら、なんだか眠く…………。





ガラガラッ


教室後方の引き戸が引かれて、誰かが一人ぼっちのセカイに入ってきた。



「あ…………!」



侵入者は、夕日に照らされ、金に輝く銀の髪を携えた……学園トップクラスの美少女……空倉空だった。



一人ぼっちのセカイが二人だけのセカイに変わると、そこには奇妙な空気が流れる。


無口無表情な彼女とは当然ながら、普段から全然しゃべらない。

小、中、高校からの同級生で何度も同じクラスメートとして同窓で学んだ友のはずだが。


そんな俺の思考など知らない顔で俺に近寄る……ッてか彼女の席が俺の斜め後方だからというだけで、別に俺に近づいているわけじゃないんだが。



余り後ろを意識しないように、机で寝ているフリをする。

彼女が彼女の席辺りまで歩いて来たことまでは足音で理解できたが、そこで音が止まる。


……なにやってんだ? 座ったのか?

色々と思考する。

結果、もういっそ後ろを見た方が良いという結論に至り、ちらりと後ろを見ると……


ジーーーーッと何もせず、座りながら俺を見ている。



こわいこわいこわいこわい!!

不思議ちゃんだとは認識していたが……何考えてるのかさっぱり解らない。


俺を見てるなんていうのが、自意識過剰?……なんて思いもするが……


一度意識の端に登ってしまい、もう気になってしょうがないこの空気。


何か話さないとまずい。目が合ったのに何も話さないのは失礼だ。……と俺の脳は精神的に童貞を追い詰め……声が出てしまう。



「わ……」



漂う嫌な空気を打開しようと、何かを喋ろうとして、口が開くも……ぎこちない。


「……忘れもの?」


とりあえず当たり障りないことを尋ねておく。


「……違うよ。」

違うんだぁ……じゃあ何しに来たんだよ?

彼女は緊張とかしないんだろうか。

いつもと変わらない綺麗な声で返してくる。


「……じゃ、じゃあ……何しに来たの??」

「…………。……いちゃ……だめ?」

「いやいや!全然!」


ただ彼女といると、俺の中の童貞が心臓発作でも起きたかのように暴れ回る。



「い、いつもこの時間、教室にいるの?」

「ううん……」


なんだよさっきから!その小動物みたいな返事!

なんか呼吸が辛くなる!


「……時崎くんは、どうしたの?」



……!?

彼女から話しかけられるなんて始めてだったし、想定していなかったから驚いた。


「あ、ああ。俺は今晩帰る家がなくてさ……。ここで寒さを凌いでるんだよ」


情けないが事実だし、ありのままに答えた。


「……かわいそう。……どうして家がないの?」


あんたから言われると、本当に心にしみる。


「ほら、俺運悪いからさ。……アパートのお隣りさんが火事起こしちゃって、今色々大変なんだ……って……えぇ!?」


空倉は俺が話しをしている間に席を立ち、俺の下まできて頭を撫でる。


「な……なにをっ?」

「……かわいそうだから……、……撫でちゃだめ?」

「だ……だめじゃない……です」


ホントに可愛いって正義だと思う。

この際言ってしまうが、俺も男だ。可愛い子には逐一心がときめいてしまう。

「……ずっと、やってみたかったの」


マジか!?とか思いながら、白い柔らかい手が髪越しに頭を撫でるのを感じる。


結構上手いから困る。


「……お、俺はそういうわけでここに居るんだけど……、空倉さんはなんか用事?」


ここまでのやり取りの中、せいぜい目の感じが変わるくらいで、表情がほとんど変化しなかった彼女の表情が変化が現れた。

少し目を見開き、驚いているようだったが、俺がそれに気付くとすぐに悲しそうに眉が垂れる。



「……なにも。…………時崎くんが、いたから」

「え?……な……俺!??」

なんだなんだ?これなんてギャルゲ!?


ただ悲しいかな、この時点で俺の童貞はもう限界を迎えてしまう。


「あ……、う……運動部の奴らが使いはじめる前に、シャワー浴びに行こうかな……っと」


少し悲しそうな顔をした気がした。

まあ、そんなに表情の変わる子じゃないし、気のせいだろうが。



「お、俺もう行くね……!……空倉さんも、早めに帰りなよ?……さ、最近は物騒らしいし……」


俺は席を立って、逃げるように教室を出た。


考えてみたら、こんなに空倉と話したのは初めてだった。


俺は少しああいう女の子と話すのが苦手だった。

だから空倉とは余り話さなかった。


苦手とは建前だけで、本音は嫉妬していたのかもしれない。

神の愛娘に。



そんなことを思いながらも、もっと話しがしたかったなあ……なんて考えている俺は男の子である。

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