間奏曲 参曲目[君の名を呼べば]
なあカノン。
お前はいま、幸せか?
カノン。
お前を拾ったのが九年前だから、今年でお前は十六歳か。
俺がお前の傍から居なくなってもう二年も経つんだな。
おれはあの時からずっとそのままだから、まだ二十代なんだぜ。羨ましいだろ? 永遠の二十代だなんて、夢のようじゃないか。
そういえば、もう夜中に泣きながら墓地に来ることも無くなったな。
お前はちゃんと成長してるんだな。良かった。
この前は、花を有り難う。
マーガレット、コスモス、アネモネ。
彩りなんかよりも優先して、俺の好きな花を詰め込んだお前らしい花束で安心したよ。
髪の毛も伸びてたし、女らしくなったじゃん。言葉遣いももう少し女らしければ良いんだけど。
だけど、これからは傘を忘れるなよ。風邪引くから。傘を持たないところは、昔っから変わらないな。
そういえばユリウスのこと、まだ忘れてなかったんだな。
もうとっくに忘れたものだと思ってたよ。
時々で良いから、また昔話でも聞かせてくれよ。ずーっと暇だからさ。
便利屋はどうだ? 儲かってるか?
お前の噂はどこに行っても流れてるから、元気でやってるっていうのは分かる。
友達も多いしな。師匠として誇りに思うよ。
でもお前はとんでもない無茶をしでかすから心配だよ。
頼むから、俺の名前を使っての悪事はやめてくれよ。本気で。
そうだ。お前に家族が出来たんだってな。
貧民街から拾ってきたらしいけど、今度俺の所にも見せに来てくれよ。
小さい弟らしいじゃん?
お前、昔っから弟欲しいって言ってたもんな。
名前はやっぱり『シオン』か?
『カノン』と呼び方が似てて、俺は良いと思うよ。
カノン。
俺の姿はもうお前には見えないかも知れないけど、
俺は未練ばっかりでこの世界をウロウロしているよ。
だからお前が墓地に来てくれているのも知っているし、ユーリに怒られたのも知ってるし、お前が立派に便利屋を継いでるのも知ってる。
なんでまだこの世界にまだ居るのか分からないけど、しばらくはこのままこの世界に留まっておきたいんだ。
お前がもう少し大人になるまでは。
お前がもう少し幸せになるまでは。
もう少し見守らせてもらってもいいかな。たぶんこれは、傲慢な幽霊の戯言。
届くはずが無いと分かっているのに、こうしてお前に話しかけてしまうよ。
この手はものを掴めず空を切り、この身体は誰の目にも映らないけど、お前ならもしかするとって思ってる。俺は馬鹿だから。
この声が届くはず無いけれど、もし届いているのなら、答えて欲しいよ。
なあカノン。
お前はいま、幸せか?
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