148.Violetina![三月の第三日曜日のこと]
街から遠く離れた田園地帯。ぽつぽつと建った家は隣の家との距離が極端に離れていて、訪れた人に寂しげな印象を与える。
あまり人の出歩かないひっそりとした閑静なその場所は、時間までもがゆっくりと流れているように感じられた。
ただ一つの家の周りを除いては。
「……留守か?」
その家の前では、一人の人間が非常識なほどの数の呼び鈴が鳴らしていた。
歳は十代後半頃。長いプラチナブロンドの髪が陽光にあたりきらきらと輝いて見える。
しばらくは無表情に呼び鈴を鳴らし続けていたようだが、通算三十二回目の呼び鈴が鳴ったところでその指はぴたりと止まった。
「騒音公害、仕事の邪魔。一回鳴らせば分かるよ、記録番」
この家の住人が、うんざりと言い放ちながらその扉を開けたからだった。
どんな顔をされようと、扉を開けてもらうことという目的を達成したことに変わりはない。いままで呼び鈴を鳴らす為だけにあったその右手をひらひらと振り、記録番と呼ばれたその人間は何事も無かったかのように挨拶をした。
「やあ、全体観測。元気にしていたかい? カラスと書物ばかりで荒んだ生活をしているんじゃないか? 今なら癒しのわんこ提供中だ。コーヒー一杯で貸してやらんこともない」
「悪いけど、キミの相手をしてやるような暇はない」
白い子犬と記録番を交互に見比べてフィンは無愛想に言った。
生憎、ドアを開けると同時にいきなり押し入ってくるような人間にかける愛想など彼は持ち合わせていない。そもそも人並みな愛想とやらをどこかに忘れてきたような人間だったので、到底無理な話だった。
今日も今日とて黒いコートに黒い服、黒一色で統一されたフィンの姿は、もうすぐ春だというのに少し暑苦しく感じられる。フードを被っていないだけまだましだと思うべきなのだろうか。
「いつ見ても黒いな、君は」
「ボクが全身真っ白で統一していたら気味が悪いと思ったんでね。周りの精神衛生を考慮してのことだよ。ところで何の用?」
「なに、少し顔でも見ておこうかと思っただけだ。心配しなくとも長居はしないよ、全体観測」
紫色の瞳を細めて、記録番が宥めるようにして答える。
足元では赤い首輪を付けた白い犬が何か面白いものは無いかときょろきょろ首を動かしている。
その視線の先に丁度良い遊び相手が見付かるのは、そう遠くないことだろう。
「はあ……全くキミも相変わらずだね。コーヒー一杯飲んだら本当に帰ってよ」
その強引さに負けて、結局部屋へと通すことにしたフィンだったが、コーヒーに制限を付けて早めに帰ってもらうことを条件にした。
よく見れば、右手には何かの情報と思われるファイルを持っている。仕事があるというのは追い出す口実などではなく本当のようだった。
「で? いつこっちにやって来てたの?」
「三月の初め頃だったかな……そろそろ国の変わり目かと思ってな。そうそう、この間噴水広場で噂の闇鬼を間近で見たよ。伝言屋と何か話をしていたかな」
「彼は今回大活躍だったからね。ワルツハイネ将軍には会えたの?」
「死ぬ数日前にな。私に謝ってきたよ」
記録番の綺麗な紫の瞳が寂しそうに閉じられる。死に際の彼との最後の会話を思い出しているようだった。
適当な椅子を二人分用意しながら、フィンは何の感慨も無く答える。
「戦争が終わってから彼、随分と丸くなったみたいだからね。後悔してたんじゃないの」
「そうかもしれない。死が近付いてくると、いろいろと思い出すからな」
憂いのある表情で記録番が同意する。自分もまた、何かを思い出しているようだった。
回想の邪魔をしてはいけないと思ったフィンはサイドテーブルにコーヒーカップを置き、自分の分は手に持ったまま丁度良い温度になるのを待って湯気がふわふわと天井に吸い込まれていくのをじっと見ていた。
廊下ではサスケの叫び声が聞こえる。大方、あの白い犬に追いかけ回されているのだろう。助けに行くのも面倒に思われたので、食べられないように健闘を祈ることにする。
「……今回はいつまでこっちに居るの?」
その声に、ぱちりと目を開け現実に戻ってきた記録番が答える。
「新しい総司令官が決まればすぐにでも村に帰るよ。大方ヴィステル将軍で決定だろうが、一応最後まで見届けないと何があるか分からないし」
「また殺されるかもしれないしね」
「まあ、そうなったらそうなった時だ。私のするべきことは記録をすることだけだし、求められる以上のことをしようとは思わない」
「懸命な判断だね。どこぞの馬鹿な都合屋に聞かせてあげたいよ」
「私の場合、これが生活を支える仕事という訳でもないからな。余計なことをする必要も無い」
「それもそうだ」
会話に区切りが付いたのを見計らって、記録番は近くに置かれたコーヒーへと手を伸ばして息を吹きかける。指先にはじんわりと温もりが広がっていく。向かいではやっと飲める温度になったコーヒーに口を付けているフィンが居た。
「そういえば、今日はなんだか街が騒がしかったな。大通りには屋台が出ているし、人はたくさん居るし、歩きづらいことこの上なかった」
「そりゃあ、今日からヴィオレティナのお祭りだからね」
「ヴィオレティナ……ああ、そういえばもうそんな時期か。すっかり忘れていたよ」
「ボクもキミの話を聞いて思い出したんだけどね」
「全体観測。君にはレヴィンのスミレを贈る相手は居ないのかい?」
「いいや。なんならキミに渡してやろうか? 贈ってくれる人も居なさそうだしね」
「遠慮しておくよ、後が怖いからな……。さて、美味しいコーヒーをありがとう。君の元気な様子も見れたし、私はもう帰るとするよ」
コーヒー一杯、と自分から言って来た癖に、半分も飲まないまま記録番は立ち上がる。本当にフィンの顔を見に来ただけだったらしい。
未だにコーヒーを飲み続けるフィンと、その向こう側にある窓を見て意味ありげに微笑み、記録番はこつこつと靴音を響かせて出ていく。
プラチナブロンドの髪をなびかせて颯爽と歩いていく後ろ姿は、ある意味清々しくもあった。他人の都合などまるきり無視である。
「……本当、相変わらずな人だ」
振り返ることもなく去っていった嵐に向かって、フィンはそっと溜息を吐きながらカップを置いた。皮肉を込めた呟きは、先程よりも薄くなった湯気と一緒に消えていく。
『フィンー! 記録番が来たときは、子犬を外に出してくださいとあれほど言ったじゃないですか!』
やっと訪れた静寂の時も、束の間に終わった。
子犬から解放されたサスケが、盛大に文句を言いながら部屋に入ってきたからだ。
「運動不足の解消になっただろ。あんまり丸々と太ると、非常事態になる前に食べてしまいそうになるじゃないか。折角の非常食なのに」
『ふ、太ってませんよ! それに運動不足でもありません!』
「主人の厚意を無駄呼ばわりするか。駄目なカラスだ」
いつもと変わらないやりとりの中、記録番が最後に目を向けていた後ろの窓から久しく聞いていなかった声が聞こえる。
混じってきた違う声に驚いてフィンとサスケが振り返れば、開け放たれていた窓の外からひょっこりと顔を覗かせるメイが見えた。
「ニーハオ、情報屋」
「……今日は千客万来だな……何か用かい、ショウ。今日は定期調達日じゃ無かっただろう?」
「たまたま仕事で近くを通りかかったから寄ってみただけヨ。用が無かったら来ちゃ駄目カ? ワオ、冷たい! 情報屋が冷たいヨー。異国の地でこんな仕打ちを受けるなんて! えーんえーん、ワタシ祖国に帰りたくなったヨー」
「嘘吐け。キミは根無し草だろ」
「あらら、ノリの悪い奴ネ。それより誰カ? さっきの綺麗な人」
さっきの、ということは記録番が来たときからそこに居たのだろう。窓の外からずっと話しかけるタイミングを見計らっていたのかもしれない。
記録番の意味深な笑みを思い出して、フィンはあくまで無表情のまま納得した。
『あの人は記録番ですよ』
「キロクバン?」
聞き慣れない言葉に首を傾げたメイに、分かりやすくフィンが説明する。
「むかしむかし、この国がまだ軍事国家では無く王国制だったころ、ソナチネ地方にあるレソタニア古城にはたくさんの人達が住んでいたそうな」
「ということは、あの人はレスティナの王族カ?」
「いまは王国制じゃないから、そんな階級は存在しないけどね。簡単に言えば、それの子孫みたいなものだよ。赤い十二月と呼ばれた革命では、王族は問答無用で処刑されていった。そんな中、命からがら逃げ出した残りの人達はこの国の行く末を見守るのが自分達の使命だと考え、王国制が崩れてから今に至るまで、ずっとこの国を傍観し、歴史を綴り続けることにしましたとさ」
めでたしめでたし、と付け加えてフィンは空になった自分のカップと記録番の飲み残していったカップを持って部屋から出ていった。
そんな彼の後ろ姿に向かって、窓の外に居る所為で彼を追いかけることも出来なかったメイが頬を膨らませる。
「難しい話は嫌いヨー」
『要約すると、王族の末裔がこの国のことを記録し続けていて、彼らのことをまとめて記録番と呼ぶということです』
ばさばさと羽音を立てて、サスケがメイのいる窓へと降り立つ。
そんなサスケの頭を撫でながら、窓枠に顎を乗せてつまらなさそうに答えた。
「ふーん。ワタシ、レスティナではよく仕事をする方だけど、そんな職業初めて聞いたヨ」
『処刑されたはずの人達ですからね。その存在を知っている者はほとんど居ないのです。フィン達は情報屋ですので、仕事柄いろいろと交流があるんですよ。とは言っても、いつもは辺鄙なところでひっそりと生活していらっしゃるので、滅多なことが無い限り会うこともありませんが』
「アー……最近のレスティナにはその『滅多なこと』があったからカ?」
「へえ。キミ、ずっとレスティナにいたんだ」
ようやく戻ってきたフィンが、意外そうな声を出して問いかけてきた。その両腕にはコーヒーに飽きたらしく、温かそうなカフェオレが入っている。
「そんな訳無いデショ。ワタシ、お前と違ってお外を飛び回るのが仕事。風の噂で聞いたってだけネ」
ぽんぽん、と自分の足元においてあった大きな包みを叩く。そういえば仕事のついでに立ち寄ったと言っていた。となると、この荷物が今回の調達物なのだろう。
果たしてこんなところで油を売っていてもいいのか、と他人の仕事の心配をしつつ、フィンは窓枠に腰掛けた。
「噂なんて不確かなもの、よく信じたね。はい、どうぞ」
「どうもネ」
両手を合わせて頭を下げカップを受け取ったメイを見ながら、自分もカップに口を付ける。今回は丁度良い温度に仕上がったらしい。
「噂も意外と当てになるものヨ。レスティナには昨日お仕事で来たばかりなんだけど、街で配っていた新聞に色々と載っていたからネ。そうそう、街といえば今日はいつもより人が多かったヨ。また何か事件でもあったカ?」
「あり? キミ、知らなかったっけ」
「何をネ?」
そうか知らなかったのか、と勝手に納得するフィンの隣でサスケが羽を広げて楽しそうに話す。
『今日からヴィオレティナのお祭りが始まるんですよ』
「ヴィオレティナのお祭り?」
*****
「ヴァイオレンスのお祭り?」
「なんだその物騒な祭りは! ヴィオレティナだよ、ヴィオレティナ。レスティナの古語でスミレの花のことな」
ソナチネ地方城下町と首都メトロポリスの丁度間にある花の街。一番大きな駅の前、その街のシンボルでもある花時計の前では二人の人間が立っていた。
一人は、この花時計が十二時を指す少し前から誰かを待っていたレオラリアナ。
もう一人は、それから十分後にたまたま近くの美術館から出てきたクウヤ。
ちなみに彼がレオラの待ち人という訳ではなく、本当に偶然そこに居合わせただけの組み合わせだった。
「お祭りね……だからこんなに人が多いわけだ」
「わざわざ花の街に来るくらいだから、祭り目当てに来たのかと思ったんだけどな。そういえば何しに来たのお前。仕事?」
「今日はお休み。昨日お隣さんに美術展のチケットをもらったから、ちょっと芸術鑑賞にね」
優雅でしょ、とパンフレットを見せてくるクウヤにハイハイ、とおざなりに返事をすれば、足蹴にされた。
無論いつものことなので特にやり返したりもしない。その対応を大人だと言う師範代もいれば、へタレと一喝する親友もいるが、反論したところで自分が負けることは分かっているので、やっぱり何も言わずに痛む足を押さえた。
「ついでにお花見の下見に来たっていうのもあるんだけど……。ところで、これは一体何をするお祭りなの?」
足蹴にした張本人は、特に悪びれもせずに周りの人混みに興味津々のようだった。
確かに花屋の多さくらいでしか特筆するところの無いこの街で、こんな光景は珍しい。駅から出た大通りには人と屋台で溢れ、楽しそうな声と美味しそうな匂いが漂っていた。
「ヴィオレティナっていう名前通り、大切な人にスミレの花を贈るんだよ。贈り物のスミレのことを、祭りの間はレヴィンのスミレって言ったりもするな。三月の第三日曜日から次の日曜日までがお祭りで、その間の花屋は店先にスミレばっかりが並ぶんだぜ」
一応国中で行われているお祭りだが、こと花の街に関しては気合いのいれかたが断然違う。何せ花屋が多いことで有名な『花の街』なのだ。ここぞとばかりにスミレの花を店頭に並べる花屋達の目は、いつもよりも生き生きとした輝きを放っている。
「ははあ。要するにバレンタインデーみたいなものだね」
「バレンティーナはお世話になった人に本を贈る日だろ?」
「レスティナではね。和国では好きな人にチョコレートを贈る日なんだよ。そのチョコレートが花になっただけだろ?」
「へー、チョコレートをね。オレも花なんかより食える物の方が良いな」
「あははは、レオラってばもらえることを前提に話してる?」
「もらえないことを前提に笑うな! 馬鹿にするなよ? 村ではぜひ孫にしたいと年上の異性から大評判なんだ」
「歳の差が非常に気になるところだね。ところで、なんでスミレの花なの?」
クウヤの唐突な質問に、レオラは言葉に詰まる。手を口に当てたり、米神を叩いてみたりするが、求められているような答えは全く出てこなかった。
「……なんでだっけ?」
「おい」
「いや、昔からある伝統的な祭りだっていうのは知ってるんだけどな」
なんとか祭りの由来を思い出そうとしてみるが、そもそも自分が由来を知っているのかどうかさえ怪しくなってきた。これだけ頭を捻っても出てこないのだから、きっとそうなのだろう。
頼りにならないレオラを遠目に見ながらクウヤは自分がまだ昼食を摂っていなかった事を思い出して、すぐ傍の屋台へ声を掛けた。
「すみませーん。生ハムとモッツァレラチーズのパニーニひとつー。この人の奢りで」
「なんでだよ! おばちゃん、俺はトマトとバジルのパニーニね。こいつの奢りで」
「……ヴィオレティナの由来も分からなかった癖に」
「さよなら、オレの今月の娯楽費!」
痛いところを突かれて、泣く泣く使い古された財布から千ミーリアを取り出す。
先程の会話を聞いていたのか、店員がお釣りの三百ミーリアをレオラに返しながら、人懐こそうに尋ねてきた。
「お客さん、もしかしてヴィオレティナは初めてかい」
「そんなんですよー。どうしてスミレの花を贈るか知ってます?」
店員はパンに具材を挟みながら、にこにこと笑って話し始める。
客相手によくこの手の話をしているのだろう。まるで物語でも語るかのように慣れた様子だった。
「その昔、レソタニア王家にはお転婆な王女様がいらっしゃったんだ。
その王女様がお忍びで花の街に来ていたとき、小くて可愛らしい花を見かけた。王女様の元に贈られる花は、どれも豪華なものばかりだったからね。とても珍しかったんだよ。
店先であまりにも熱心にその花を見ているものだから、花屋がその花の種を王女様にプレゼントした。まさか相手が王族だとは思わずにね。
そんなプレゼントをもらったのは初めてだったから、王女様はこの花屋のことが気になって仕方がなかった。そしてお忍びで何度もその花屋に通った。だけど声を掛けることは出来なかった。いつもはお転婆な王女様も、好きな人の前ではうまく話せなかったんだろうね。
それから時が過ぎて、王女様は見事にその花を咲かせた。花が開いた日、王女様はその鉢植えを持って花屋の元を訪れた。
そしてこう言ったのさ。『あなたが咲かせる花を、一番近くで見ていても良いですか』とね。
花屋もずっと通ってきていた王女様のことが気になっていたから、すぐに返事をした。
こうして二人は結ばれ、仲睦まじく暮らしましたとさ」
話している内にパニーニにはこんがりと焼き目が付いていた。それを包装紙でくるんでいく様子を見ながら、クウヤはすっきりとした表情で話す。
「なるほどー。王女様が気に入ったその小さな花が『スミレの花』で、その種を渡した花屋さんが『レヴィン』さんだったというわけですね?」
「そういうことだね。はい、生ハムのパニーニとバジルのパニーニ!」
「美味しそー。ありがとうございます」
出来たてのそれらを手にして、クウヤとレオラはまた花時計の真ん前にまで戻った。
パニーニにかぶりつきながらきょろきょろと周りを見回してみるが、すぐにレオラは駅の方へと向き直る。彼の待ち人はまだ来ていないようだった。花時計はいつの間にか十二時と半分を指している。
「わー、チーズが伸びるー。いっぱい伸びるとなんか嬉しいよね」
「零すなよ」
「流石にそれは無いでしょと言いたいところだけど、きみのトマト落ちそうだよ」
「うおっ! やべやべやべ……あっつ!」
落ちかけたトマトを慌てて口にして火傷をしているレオラを横目に、ぱくぱくとすごいスピードで平らげたクウヤはさっきから頭にあった疑問を口にした。
「さっきからずっとここに居るみたいだけど、この花時計に何かあるの?」
「いや、単なる待ち合わせ。一緒にスミレを買いに行く約束してんだよ。十二時の列車に乗ってくるはずだったんだけどな……」
「へー。君にもちゃんとそういう相手が居たんだ」
感心したような、驚いたような声を上げてクウヤが包装紙をまるめる。そしてそれをごみ箱に向けて投げ入れた。綺麗な放物線を描いて、それは見事ごみ箱に収まる。
それと同時に、レオラが声をあげた。
「あ、来た来た!」
どうやら、今し方到着した列車に目当ての人物は乗っていたようだ。
駅から出てきたその子に向かって、レオラは自分の位置を教えるように手を振る。それを見付けて、すぐに駆け寄ってきた。
「ごめんねレオラ! 切符買うのに手間取っちゃって、遅くなっちゃった」
走った所為で、少し息が荒い。
レオラとその子を見比べて、クウヤは大袈裟に嘆いた。
「レオラ、いくらなんでもこれは駄目だよ。人様の弟に手を出すなんて……!」
「……お前はオレを一体どこへ向かわせたいんだ?」
「そりゃあもちろん、いけるところまで」
完全に遊ばれて脱力するレオラの向かい側で、シオンが不思議そうに首を傾げていた。
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