二銭銅貨 桜影
二銭銅貨
庭の苔むした倉庫に眠っている古い段ボール箱を開けた
中から歴史が埃を巻き上げながら表れた
僕は丁寧に堆積物を払い そのものを直に見ようと思う
数十年前の雑誌やモノクロトーンのアルバムなどに混じって
古い貨幣や紙幣の入っている箱を紐解いた
光の差し込まぬ倉庫を出でて醒めた水色を誇示する空の下の庭へ還る
百円札や一円札や数枚の硬貨が久々の娑婆に驚いている
その中に二銭銅貨も存在した
茶褐色にくすんだその古銭を手にとって見た
懐かしく または 輝かしい 躍動を 感じる
目を閉じると遥けく昔日のこの国の姿が見えてくるようだ
人々が 国の勃興をかけ 押並べて汗を流し生き抜いていた日々が
この銅貨に触れた人々はどれくらいいたのだろう
この銅貨で一体どんな物が買われ或いは売られたのだろう
この銅貨一枚ですら重厚な歴史を保持していると言う事実に軽い感動を覚える
僕は ぐっと二銭銅貨を握り締め 膝に力を入れて立ち上がった
桜影
歩く 桜の咲き誇る道を 勢いを増して
進む 桜の振り散る道を 後ろも見ずに
行く 桜の散り去った道を 胸を押さえながら
走る 桜の消え去った道を 脇目も振らずに
過ぎる 桜の木の生える道を 目的の場所を目指し
避ける 桜の木だけ居る道を 戸惑い疲れながら
突っ切る 桜の木のみの寂しい道を 原点を見据えながら
倒れ去る 桜の木だけが嘆ける道で 全てを喪失して
桜影の下 新たなる力を獲得して また歩き出す
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