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Don’t trust over 30
作:志内 炎



7 おばちゃんに関するとある考察


 私はもう中学生くらいになら『おばちゃん』と呼ばれてもなんとも思わないのだが、年齢よりは若く見られるし、娘の同級生いわく『ちゃらい』ので、『○○ちゃんのママ』と呼ばれる。別にいいんだけどなぁとも思うが、私と娘の年齢差は、同級生たちのそれよりも少ないことが多いので、彼らも気を遣ってくれているのだろう。
 いつから『おばちゃん』といわれて腹が立たなくなったのか。一番初めにおばちゃん呼ばわりされたのは、確か十七くらいのとき。公園の横を通っていたら、小学生らしき子供がキャッチボールしていたボールが足元に転がってきた。
「おばちゃーん、とって」
にこやかにこちらに手をふる小学生。私もにこやかにそのボールを拾い上げ、思いっきり反対側に投げてやった。ふん、くそがき。
 後は二十歳のとき。十六歳年下のいとこがうちに遊びに来た。彼女と会うのは彼女が生まれたてのとき以来だった。うちで飼っていた猫を撫でながら
「この猫なんて名前なの? おばちゃん」
と言った。ふかくにも心の中で
「おば、おば、おば……」
と、動揺した。あんたの母より二十歳近く年下なんですけど。しかもいとこだし。中学生になった彼女に会ったとき、
「あたしのことおばちゃんっていったの、覚えてるぅ?」
と仕返ししておいた。
 私の同級生たちはというと、男子のほうが進行がはやいように思う。にやにやとだらしなく笑い、
「ねえちゃん、ええけつしとるやないの」
セクハラよろしく、恥ずかしげもなくいえるようになるのはいつからなんだろう。それも女子を連れている前で他のおねえちゃんにいってしまうのだ。はぁ……と思う。昔はもうちょっとダンディだったのに。
 進行は『オヤジ化』のほうが早いが、完成形は『オバちゃん化』のほうがひどい、というのがうちの母の意見だ。『オヤジ化』はたいして他人に迷惑をかけないが、『オバちゃん化』は時に多数に迷惑をかけるというのだ。
 オヤジギャクなんかはさらーっと流されたり、セクハラ発言なんかは反撃を食らったりして本人も気がつくが、オバちゃんの席とりやらかしましさなんていうのは周りがうんざりした顔をしているのに、本人たちは一向に気づいていない。または気づいていても気になっていない。
 たしかに。母は帰宅するととりあえず、三十分は息継ぎをせずにまくし立て、ニュースを見ているとたったいまキャスターが伝えたことを聞き返し、一緒に見始めた映画なのに
「この人は、さっきの人とどういう関係なの?」
と聞く。注意するとそのときは直るけれど、三十分後には同じコトを繰り返す。すべての方がそうではないだろうけれど、うちの母限定でもないだろう。
 私はまだ『オバちゃん化』までは熟し切れてないなぁというと母に
「あんたはまだ『オヤジ化』してるところよ」
といわれた。みんな『オヤジ化』してから最終的に『オバちゃん化』するというのだ。
「一人でやきとり屋で酒飲めて、土曜のパドックに行けるところですでにオヤジ」
らしい。じゃあ二十五くらいから『オヤジ化』は始まるのだな、と理解した。ちなみに『一人回転寿司』も『一人ラーメン』もできる。いまやってみたいのは『一人焼肉』。
 そうは見られないけれど、結構人見知りでコミュニケーションをとるのが苦手な私は、ちょっとオバちゃん化していくことに期待している。できれば適度なところで長く停滞できればいいな。
 それよりも最近、さほど年齢のかわらない輩に『おかあさん』と呼ばれるほうが、なんだか気になる。ううん……
 かっこいいオバちゃんになって、可愛いおばあちゃんになりたい。いつか可愛い孫に『ばーば』って呼ばれるのもちょっと楽しみ。『ばばぁ』って呼ばれたらひっぱたいちゃいそうだけど。……ああ、はやくも毒を吐いてしまった。
 とりあえず、みなさまには全女性を『おねえさん』と呼ぶことをおすすめしておく。












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