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ディスレクシア(失読症、難読症)の君へ

作者:青い鴉
 突然ですが質問です。あなたは本が読めますか?(YES/NO)

 もし本が読めるのならば、あなたの生活はきっと希望に満ち溢れていることでしょう。あらゆる情報が視覚野から入ってきて、漢字が独立したイメージを持ち、自動的に情報が分類され、ニューロンの発火は言語野に到達し、豊かな表現として理解される。繰り返される記号着地の連続に心は踊り、流入する言葉はあなたの精神を揺り動かすことでしょう――もし、あなたが本を読めるとすれば。

 私は本が読めません。

 子供の頃は速読が出来て、単行本一冊を三十分で読めました。実際、毎日、たくさんの本を乱読しました。趣味が読書であるという事に誇らしさを感じていました。しかし齢三十を前にして精神を病み、私の理解力は失われ、速読はできなくなりました。

 いえ、もっと正確に言いましょう。私は一切の本を読めなくなりました。そして愚かな私は、そのことをなかなか認めることができませんでした。昔、飽きるほど読んだ小説をパラパラとめくり、内容をうっすらと思い出しては、自分にはまだ読書ができるのだと錯覚していました。

 けれども本当は理解していました。ある日突然、全ての本が面白くなくなった、などということはありえないのだと。それは「自分が本の内容を理解できなくなった」だけなのだということを。

 私はそのことを認めたくないあまり、むしろ文章を積極的に書くようになりました。自称小説家の私は、たくさんの文章を生産しました。「自分で書いた文章」だけは読めたのです。皮肉にも、私が文章を書く理由は、私自身の認識を誤魔化すためでした。己自身のための創作。そう言えばカッコイイかも知れませんが、実態は悲惨なものでした。自分の出した糞を食う生物がそこにはいました。

 SofTalk(ソフトーク *1)というソフトの存在を知ったのは、ニコニコ動画で、ゆっくり実況プレイを見ていたときのことでした。かつてフリーソフトマニアだった私は、「無料ならばインストールしてみよう」と食指を動かし、ソフトークをダウンロードしました。

 奇跡が起きたのはその時です。ゆっくりボイスで読み上げられる文章は、灰色だった私の世界に突然の彩りを与えました。それは唐突すぎて、自分でもよく分からない体験でした。本を読む楽しさが復活しました。私は貪るように、ソフトークに文章を読み上げさせました。読み間違いが多いのはさておき、そこには、かつてあった感動が、まさに「感情の動き」が再現されていました。

 次に、私はソフトークを賢くするための辞書(*2)を作りました。元プログラマとしての私の経験が、「それを作るべきだ」と囁いていました。そして、それをいざ紹介する段になって、始めて私は自分がディスレクシア(失読症、難読症)という状態にあるのだということを、はっきりと認識せざるを得ませんでした。

 私はいうなれば視覚障害者の方と同じところにカテゴライズされていました。失礼を承知で言わせてもらえば、そのことに大きなショックを受けました。私の、前述の創作活動が全否定されたのを感じました。

 それからしばらくして、段階的にですが、私はついに悟りました。自分は紙の本を読めないのだと。自分はソフトークという松葉杖無しには満足に歩けない身体なのだと。そうして私は、この文章をタイプしました。本が読めない人のために。そう、もしかしたら、あなたや、あなたの良き隣人のために。

 ディスレクシア(失読症、難読症)を認めることは、自分に障害があると認識することは、とても困難で、辛いことです。けれども、この世界にはSofTalk(ソフトーク)という救いの手が伸びていて、あなたは望むのならそれを使うことができます。

 再び質問です。あなたは本が読めますか? その質問にNOと答える前に、何かを永久に諦めてしまう前に、どうかこの記事があなたの目に留まりますように。

*1 http://www35.atwiki.jp/softalk/ (こちらは私のサイトではありません)
*2 http://bluecrow.hatenablog.com/entry/20121229/1356735825 (こちらは私のブログです)

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