FBIから来た女:5〜逆鱗・黄の章(84/111)縦書き表示RDF


オリジナルキャラクター・ファイル58

熊谷正直(くまがえ まさなお)
白野美保の同級生の1人で、銀一と仲良しのグループの1人。
眉毛が太く見た目は厳つい顔だが、根は優しくクラスのムードメーカーのような少年である。
正直達男性陣は深雪達女性陣と毎度毎度ケンカしているが、別にお互い嫌っているワケではなく、むしろ仲が良い方である。
美保にはよく剣道の勝負を挑んでいるが、1度も勝てた事がないため、彼女に自分の事について凝った説明をされている。
美保に1度でも勝てばその紹介の仕方をされずに済むのだが、美保があまりに強すぎるため正直が彼女に勝つ事は当分の間不可能である。
他のメンバーと共に『美保を誘惑する』と銀一に言った事から考えて、彼女に少なからず好意は持っているものと思われる。
名前のモデルは、一之谷の合戦で平敦盛を討った後出家した『熊谷次郎直実』。
FBIから来た女:5〜逆鱗・黄の章
作:ユーリ



ファイル528:ゲレンデの推理対決・リアンVS美保『5』


震蔵
「いい加減にしてくれないか!?台矢君は1人でリフトに乗って、降りる時には拳銃で頭を撃ち抜いて死んでいたんだよ?」

雷美
「しかもその右手には拳銃を握っていたんですよね?」

霧美
「まぁ、ヤツの傍らに置いてあった雪の詰まったバッグが少々気にはなるけど・・・」

炎人
「これはどう考えても自殺としか思えないよ・・・」

震蔵
「なのにどうして我々がこんなに長時間事情聴取で拘束されなきゃならんのだね!?」

波海
「引っ掛かるんですよ・・・台矢さんの前のリフトに乗っていた映画監督の地山さんにも、後ろのリフトに乗っていた探偵の濃崎さんにも、降りそびれて下りのリフトでスレちがった特殊メイクの火立さんにも、ゲレンデにいた女流スタントマンの落俣さんにも射殺できたってところが。そして『台矢さんがリフトに乗せてたストックの輪が両方逆さだった』『そのリフトの向かって右端の座面についた妙な傷跡』『雪の詰まったバッグがなぜか凍っていた』、この3点がどうにも気になってねぇ・・・」

霧美
「ああ、そんな事をあの中学の嬢ちゃんが言ってたわね・・・」

炎人
「でもあれは・・・」

コンコン!

波海
「ん?」

ピリリ・・・

波海
「悪いけど、アタシのコートに入った電話に出て!」

「あ、はい・・・」

波海
「ちょっと誰?この部屋は関係者以外立ち入り禁止なの・・・」

ガチャ!

「あ、もしもし?すみませんが、今取り込んでいて・・・」

美保
「何もかもわかったわよ!台矢さんを自殺に見せかけて殺したのが、誰かって事も・・・」

リアン
「その殺人を可能にしたトリックも、全てね!!」

波海
「ハァ?嬢ちゃん、どうしてこのロッジに?あの遺体の写真見せたら血相変えて下に降りたわよね?」

美保
「特別にリフトに乗せてもらって上がって来たのよ、事件に関わる大事な物見つけたと言ってね!」

波海
「大事な物?」

「き、君はもしかして遺体を最初に発見した・・・」

リアン
「ええ・・・山形県警に電話して刑事さんの携帯の番号を聞いたんです、この機を逃すと4年前の事件同様真実が吹雪にかき消されてまうって言ってね!」

雷美
「・・・ったく、またこの嬢ちゃんなの?」

炎人
「どうせ君が言いたいのはさっきも刑事さんが言ってた、オレ達4人なら台矢君を射殺できたっていうアレだろ?」

震蔵
「前にも言ったが、我々にはムリだ!!1人でリフトに乗っていた彼女に拳銃を握らせる事はできないよ!」

雷美
「それに元刑事のこの探偵さんならともかく、あの吹雪の中で誰かの頭を狙い撃つ事なんてできないわよ!」

霧美
「ちょっと、元刑事にもムリよ?何しろ前のリフトが見えなくなるぐらい吹雪いてたんだからね!」

美保
「確かにそうだわ・・・」

リアン
「あの状況やと殺人は不可能です・・・」

美保
「本当に台矢さんがリフトに、」

リアン
「1人で乗っとったとしたらね!」

波海
「な、」

「何だって!?」

波海
「ちょっと、まさかリフトに乗ってたバッグに誰かが入ってたっていうんじゃ・・・」

「でもあのバッグの中には雪が詰まってたし、とても大人が入れる大きさじゃあ・・・」

美保
「ちがうちがう、入ってたのはこのバッグの大きさよ!」

リアン
「ホテルの売店に売ってますよ、雪の詰まっていたバッグと同じデザインの1サイズ上の物がね!」

「ハァ?」

波海
「バ、バカな、台矢さんがわざわざ犯人を入れたバッグを担いでリフトに乗ったって言うの!?」

美保
「イヤ、バッグに入ってたのは犯人じゃなくて、台矢さん本人だったのよ!!」

炎人
「ええっ!?」

波海
「そ、そんなまさか・・・」

「じゃ、じゃあバッグを担いでいたのは・・・」

リアン
「あれが犯人です!台矢さんの顔は髪で大部分が隠れてますし、あの時はサングラスをかけていた。カツラをつけて同じニット帽とサングラスとウエアを着れば、彼女やと錯覚させる事はできますよ!」

震蔵
「し、しかし彼女は私やファン達と会話をしているんだよ?あれは確かに台矢君の声だったと・・・」

美保
「当たり前よ!バッグの中で台矢さんが聞き耳立てて受け答えしてたんだからねぇ!!だからあの変装した犯人を余計に台矢さんだと思ったんじゃない?」

霧美
「なるほど、だからあの時ヤツはバッグを担ぐまで無口だったのね・・・」

炎人
「アハハ、冗談だろ?人一倍プライドが高い彼女が・・・」

「何でバッグの中なんかに・・・」

リアン
「プライドが高いから入ったんです!恐らく彼女のスキーの腕がプロ級やというんは、上辺だけを飾った偽りの姿、ウソやったんでしょうから・・・」

炎人
「ウ、ウソって・・・」

美保
「ええ、ちょっとは滑れたでしょうけど、プロ級じゃないと思うわよ?さっきホテルで台矢さんが前に出た『雪男の恋』と『雪男の怪』っていう映画をスキーのシーンだけチラッと観たけど、俳優にスキーで駆け寄るシーンでわざわざフレームアウトしてからアップで入って来た。しかも、滑ってる時は帽子止めが付いてるのにアップの時はそれがない。これは、滑るのは別人にやらせてたって事よ!そうでしょ、監督さん?」

震蔵
「ああ、彼女は滑れないワケじゃなかったが、最初の映画で足を痛めてしまってね。それでも自分で滑ると言い張る彼女を説得するために、コッソリ代役を立てる事にしたんだよ。そうしたらそのスキーシーンが評判になってしまってね、2作目もスタッフに気づかれないように代役を・・・」

炎人
「そ、そうだったの?」

美保
「だからファンにせがまれた時も代役に滑るの任せて自分はバッグの中に入って下で待って、代役が滑り降りて来てバッグを担いだ時にファンと会話する事でその見栄を張り通してたってワケよ!」

炎人
「で、でも、待ってる時にそのバッグの中を誰かに見られたら・・・」

美保
「そのバッグをファンの前に置いて、『大事な物が入ってるから見てて』って言ったら、誰も触らないわよ!」

波海
「ちょっと、その代役ってまさか・・・」

美保
「ええ、その役を任されて台矢さんが入ったバッグ担いでリフトに乗ってまんまと殺したのは、台矢さんのリフトの前にも後ろにも下りのリフトにも乗ってなかった女流スタントマンの落俣雷美さん、あなたしかいないわよね?」

雷美
「・・・」

炎人
「ら、落俣君が!?」

「ほ、本当かいそれは!?」

リアン
「ええ、犯人は落俣雷美さんです!でも映画で代役をやったのは、4年前に亡くなった同じ女流スタントマンの吹代さんだと思います。映画の滑りと今日の滑りはどちらもプロ級でしたけど、微妙にちごうてましたから。恐らくその代役を吹代さんが死ぬ前に落俣さんが密かに引き継いで、それを今回のリフト上の犯行にうまく利用したんでしょう。そう、リフトの上でバッグに入った台矢さんの頭だけを出して押さえつけこめかみに弾丸を撃ち込み、彼女の死体をバッグから出し拳銃を握らせて、自分は空のバッグを持って飛び降りたというワケですよ!このリフトは地面と3メートルぐらいしか離れていない場所が2ヶ所ありますしね・・・」

美保
「その撃った時についたのが、リフトの座面の向かって右端に残ってたキズよ。台矢さんがリフトに乗る時は向かって左に乗ってたのに、遺体で見つかった時は右に座ってたのがその証拠よ!リフトの上で死んだ人間の座る位置変えるのは難しいしねぇ・・・」

炎人
「でも銃声が鳴った時、落俣君はオレと話を・・・」

美保
「あれは多分ロケット花火の音よ!リフトから飛び降りて、そこに用意しておいた自分のスキーやウエアを身につけた後でその花火の導火線に火のついた煙草をくっつけ、時間差を作ってペットボトルから打ち上げたのよ!滑って下に降りて誰かと話してる時に音が鳴れば、自分のアリバイの証人ができるしね!」

霧美
「つまり今回の証人は下りのリフトの火立さんだったけど、台矢さんのファンの誰かに『彼女はどこ?』と聞いてる時に鳴っても成立するという事ね・・・」

波海
「じゃあ、殺した時にはサイレンサーを・・・」

美保
「ええ・・・そのサイレンサーはまだ見つけてないけど、例のペットボトルなら見つけたわよ!!」

波海
「でも、あの雪の詰まったバッグはどこで?」

美保
「言ったでしょ?あのリフトは3メートルしか離れてない所が2つあるって。そこにバッグ置いて、輪を逆さにつけたストックで引っかけてリフトに引き上げたのよ!」

霧美
「なるほど3メートルか。ストックは約1メートル20センチ、片方のヒモにもう1本を引っかけつなげ腕を伸ばせば届きそうだけど、あの吹雪にあおられてうまく拾えるかしら?」

美保
「ちがうちがう!使ったストックは1本で、残りの1メートルは・・・」

リアン
「あの布製のバッグのヒモを長く伸ばして水で濡らし、凍らせて垂直に立たせ残りの1メートルを稼いだんですよ!ストックの輪が2本共逆さだったのは、片方だけやと目立ってしまうから!雪の中に隠していたそのバッグを置いたのは、犯行直前に滑った時!場所は最初に地面と近うなる所。そしてリフトに乗りそれを引き上げ、次の近うなる場所で飛び降りたんでしょう・・・」

「でも、リフトの上からそのバッグが見えるのか?前のリフトが見えなくなるくらい吹雪いていたんだろ?」

リアン
「知ってます?リフトの間隔は6秒以上空けないといけないって事を。リフトのスピードは大体秒速1・5メートルから2メートルやから、リフトの間隔は10メートルぐらい離れている事になる!10メートル先の物が見えなくても、3メートル下のバッグは見えますよ。そこにバッグがあるとわかっていればなおさらね!」

「でも証拠は・・・」

リアン
「ああ、多分それなら・・・」

美保
「ちゃんとあるわよ、証拠も!落俣さんが火立さんに会って、そのまま彼とリフトに乗ってこのロッジで事情聴取受けてるのなら、そのウエアの下にまだ着てるハズよ!台矢さんと同じウエアを!ひょっとすると、台矢さん入れてたバッグも忍ばせてるんじゃない?イチイチ脱いで着替えて隠してるヒマなんてなかっただろうし、まだこのゲレンデのどこからも見つかってないしねぇ・・・」

雷美
「フッ、それは助かるわ。実は、ずっとガマンしてたのよ・・・暑くてね・・・」

ジーッ・・・

炎人
「ら、落俣君・・・」

震蔵
「やっぱり君が・・・」

雷美
「やっぱりって事は、監督も気づいてたんですね。アタシが殺ったって事・・・」

震蔵
「ああ、最初は単に彼女のスキーが上達しただけだと思ったが、彼女の遺体を見た時に気づいたんだ、ファンにせがまれて滑っていたのは君だったんじゃないかとね・・・」

雷美
「ええ、4回も滑って待っていたんですよ、リフトに乗った時丁度吹雪になるあの時を。でなきゃ、リフトから飛び降りる所が丸見えになっちゃうからね・・・」

炎人
「で、でも何で?」

雷美
「あなたの女房になるハズだった、吹代先輩の仇討ちですよ。4年前、先輩をこれと同じトリックで殺した台矢を殺ってやったのよ・・・まぁ4年前はバッグに入っていたヤツの方が引き金を引いたんだけどね・・・」

炎人
「ど、どういう事?」

雷美
「ホラ、4年前のあの日、台矢が囲まれて困ってた時先輩が言ってたでしょ?『何とかなる』って。あれは先輩が台矢をバッグに入れてリフトでコッソリ運ぶって事だったのよ。その好意を利用して台矢は殺したのよ、スタントを辞めて女優になろうとしていた先輩を。リフトの上でヤツに銃口を突きつけた時に喚いてたわね、『あ、吹代(あのコ)が女優でやっていけるワケがない!食べていけなくなったら暴露本を出すに決まってる!!怖かった!バレるのが怖かったのよ!!』ってね・・・」

波海
「でも、その復讐におあつらえ向きのこんな映画が撮られるとはね・・・」

震蔵
「実は私も4年前の事件の犯人は台矢君じゃないかと思っていて、だからこの映画を撮ろうと。まだ誰にも秘密だったが、この映画の真犯人は探偵役の台矢君で、トリックも落俣君が言った4年前のそれと同じ。謎解きのシーンでその脚本を見せたら彼女も観念して自首してくれるんじゃないかと踏んでいたんだが、まさかこんな事になろうとは・・・」

霧美
「フン!刑事を辞めたアタシが言うのも何だけど、そこまでわかっていたのなら警察に話してこのバカげた殺人を止めて欲しかったわ。復讐は復讐を呼ぶだけで、達成感なんて直に消えちゃう。手の平に降る雪のようにね・・・」

波海
「まぁ話は署の方で。あ、あなたも一緒に来てくれるわよね?」

「警部!電話の中学生はどうします?その少女と全く同じ推理を、全く同じタイミングで話していたんですけど・・・」

美保・リアン
「(え?)」

「例のペットボトルを今ここに持って来ると言ってますが・・・」

波海
「じゃあその子も署に・・・」

美保
「だったら後にその子に任せるわ!」

銀一
「え?何でなの?一緒に行ったらいいじゃない!」

美保
「アホ!私は母さんにヒントもらってバッグのベルト凍らせた事がやっと解けたのよ。1人で解いたその中学生に恥ずかしくて会えるか!それに、あなたを下のホテルまで背負って降りなきゃいけないしね!」

銀一
「え?」



平次
「ええ〜っ?このペットボトル持ってってくれ?」

リアン
「ええ、その中学生に会いたないんや。アタシはユーリ兄の、足を挫いたフリして籠に入っとったっていう雪男の話を聞いてやっと解けたんや、スキーが上手なフリして台矢さんがバッグに自ら入ったって。それを聞くまでは、4年前の事件と同じでバッグに犯人が入ってたと思い込んどったからな・・・」

平次
「そやけど推理合うてたんやろ?自分も事件解きましたって顔で警察の人に会うて来ればええやない!」

リアン
「イヤ、これは1人で解いたその中学生の事件、アタシのとちゃうよ・・・」



銀一
「ちょっと美保、降ろしてぇよ!恥ずかしいよぉ!!」

美保
「ジッとしてなさいアホ!捻挫してるのにこんな腫れるまでチョロチョロついて来て!どうせスキー上級者なのよとか見栄張って、練習しすぎて挫いたんでしょうけど?まぁその見栄のお陰で台矢さんがバッグに入ったワケがすぐにわかったし、色々手伝ってくれたから勘弁したげるわ・・・」

銀一
「(バカ・・・オレが練習しすぎたのは、見栄張ったワケじゃないんだよ・・・)」



平次
「そやけど、何で雪男の話が2つもあるんやろうね?」

リアン
「その語り手が父親で、聞き手が女の子やったからやろうな。」

平次
「え?」

リアン
「雪男の民話は吹雪の日に外に出るなって戒めのために作られて、それを父親が娘に語っていく内に同じ男である雪男に感情移入して徐々に話が変えられたって言われてるんや!つまり元は銀の衣と引き替えに殺してしまう話やったのが、魂を取らずに雪になってまう話に変化したっちゅうワケ!そやから雪男の話は、哀しくてありそうな話が多いん・・・」

ザッ!

リアン・平次
「?」

美保・銀一
「?」

美保
「(雪でよく見えなかったけど、あの子ね?例の中学生は。まぁ今会わなくても、探偵やってれば・・・)」

リアン
「(またいつか、謎めいた舞台の上で・・・)」



美保
「ってなワケで、そのスゴく賢い探偵は警察に名前も教えずに去っちゃったのよ!どう?小さくなる前のどこぞのFBIとちがって、奥ゆかしくてエラいヤツでしょ〜!!」


「(そやからそれ、アタシやっちゅうねん・・・)」

美保とリアンは、中学生の頃に出会っていたんだね!

次回は、ついに金美と銀一の妹弟が登場!!












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