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FBIから来た女:5〜逆鱗・黄の章
作:ユーリ



ファイル520:大波乱のロンドン旅行『3』


ヒナギク
「大変よ!!」

彼女は血相を変えて、コナン達のいる部屋に飛び込んだ。

コナン
「どうしたんですか、ヒナギクさん?」

ヒナギク
「こ、これが鷺之宮さん達のいた部屋に・・・」

彼女は1枚の紙切れをハヤテに手渡した。

それを全員が横から見る。

その内容とは・・・

┌───────────────────────┐
│この部屋にいた5人は我々がいただいた。□□□□│
│無事に返して欲しければ無謀な行動はとらぬ事だ。│
│次の指示を待ちたまえ。□□□□□□□□□□□□│
│モロアッチ教授とその一味□□□□□□□□□□□│
└───────────────────────┘

そう、脅迫状だった。

「モロアッチ教授!?」

それまでやっていたトランプを放り投げ、その場にいた全員が驚きの声を上げた。

コナン
「確か、自称泥棒界のナポレオンを名乗り、最近ロンドンで暴れ回っている男だよ。けど、大層な物を狙っている割には成功した例はないらしい。」

コナンが言う。


「フ〜ン、まるで名探偵ホームズのモリアーティ教授みたいね。でも何でその人が伊澄ちゃん達を誘拐したのよ?」

哀がワケがわからないという表情をする。

コナン
「さあ?」

さすがにコナンもわからないと言った表情をする。

ハヤテ
「もしかして・・・生活費用に困った身代金目的の誘拐とか?」

ハヤテがかなり正解に近い事を言ったが、それに対して全員は冷ややかな視線を送った。

内心では、そんなアホなと思ったのだ。

咲夜
「んなアホな事あるかい!!」

一応咲夜が突っ込みを入れる。

ヒナギク
「まぁ、理由はともかくとして。問題はこれから私達がどうするかよ。」

ヒナギクが話を変えた。

コナン
「それもそうですね。とりあえず観光はお預けですね。けどできる事は限られていますよ。相手の要求もわからないし、無闇に警察に届けたりするのも危険ですから。」

ヒナギク
「じゃあ、コナン君はどうするべきだと思うの?」

コナン
「相手が連絡してくるのを待つしかありません。」

結局、彼らはモロアッチ教授の出方を見るしかなかった。

もっとも、ただその間待ちぼうけを食っているワケにはいかなかった。

やるべき事はやらなければいけない。

まず日本のそれぞれの親に連絡して現状を報告。

さらに、ユリと刃の無線機や全員の携帯にもかけてみたが、これは空振りに終わった。

そして、全員持って来た装備をつける。

今回ロンドンに旅行で来ているにも関わらず、もしもの不測の事態に備えてそれぞれの秘密兵器を持ち込んでいた。

コナンと哀は麻酔銃や無線機、ヒナギクは木刀・正宗。

そして咲夜はハリセンを準備する。

ただし、素手のハヤテは何も持っていない。

そしてよく理由がわからないのが、ここまであまり出番のなかった千桜である。

ずっといつもの学園スタイル(メガネに制服という地味な格好)だったのに、何故かメイド服に着替えていた。

何でそんな事するのかコナンや哀には良くわからなかったが、咲夜を始めとするハヤテキャラは良くわかっていた。

スイッチを切り換えるためである。

一方で、マリアは熱が一向に下がらないため、ナギと2人で療養に専念する事にした。

そして誘拐発生から1時間半後、コナン達がいる部屋の電話が鳴った。

電話を取ったのはコナンであった。

その周りに、他のメンバーも集まる。

コナンは受話器を上げた。

コナン
「もしもし?」

モロアッチ
「もしもし。私はモロアッチ教授だ。」

待ちかねていた接触である。

コナン
「接触して来たか・・・伊澄ちゃん達を誘拐したのはあなたですね?要求は?」

モロアッチ
「ホゥ、物分りがいいな。君の名は?」

コナン
「江戸川コナン・・・探偵だ。」

モロアッチ
「フム。ではコナン君。要求を言おう。明日、正午ちょうどにテムズ川上に保存されている巡洋艦ベルファスト号の艦尾に、5000万ポンドを持って来て欲しい。現金でなくてもかまわん。それに値する貴金属等でも良い。それと、金属製のアタッシュケースに入れる事だ。」

コナンはそれを側にいる哀に、メモしてもらう。

コナン
「他には?」

モロアッチ
「警察には連絡して欲しくない。万が一連絡すれば、彼女らに危険が及ぶとだけ言っておこう。」

コナン
「彼女らは無事ですか?」

それが今一番気になる事である。

モロアッチ
「もちろんだとも。今は薬で眠ってもらっているがな。君達が要求した物さえ持って来れば、彼女らは無事解放される。しかし、万が一下手な事をすれば・・・言う必要もなかろう。では期待しているよ探偵君。」

ブチッという音と共に電話は切れた。

コナンは受話器を置いた。

コナン
「身代金目的の誘拐か・・・それにしても5000万ポンドとは・・・」

これにはコナンと哀、ワタル、そしてヒナギクと千桜が驚いた顔をした。

一方、お金持ちの咲夜は妥当と思ったようで、表情を歪ませるような事をしなかった。

ワタル
「けど5000万ポンドなんてどうやって用意するんだよ?」

ワタルがもっともな質問をした。

生憎とそんな大金を持ち合わせている人間など通常はいない。

ちなみに、5000万ポンドが日本円でいくらか知りたい人は、調べてみよう。

そして、自然と全員の視線は咲夜に注がれた。

咲夜
「って・・・結局ウチが出す事になるんかい・・・」

他に大金をすぐに引き出せる人間はいない(ナギはこの部屋にいません)。

咲夜
「わかった。ウチが出せばええんやろ。」

こうして、身代金は咲夜が出す事となった。

千桜
「で、おとなしくそのまま渡すんですか?」

そう言うのは千桜である。

コナン
「まさか。もちろん捕まえますよ。」

コナンはそう言って、ニヤリと笑った。



一方、電話をしたモロアッチ教授のアジトでは。

ドット
「教授。勝手に身代金なんか要求しちゃっていいんですか?依頼人からは伊澄って言う少女を引き渡せって言われてるんでしょ?」

ドットが疑問を口にした。

しかし、教授は平然と言った。

モロアッチ
「なぁに。少女を引き渡すのは明日の夕方だ。身代金の引渡しは昼だ。金を頂いてすぐにこのアジトに戻れば充分間に合うさ。」

スマイリー
「じゃあ、あの娘達は解放しないんですか?」

今度はスマイリーが聞いてきた。

モロアッチ
「解放はするさ。伊澄という少女以外はな。さ、とっとと仕事の準備だ!!」

ドット・スマイリー
「へい!!」



そして翌日、テムズ河上の巡洋艦ベルファスト。

この船は第2次大戦時の巡洋艦で、多くの僚艦(りょうかん)が沈む中で生き残ってきた船である。

1971年に永久博物館となり今の場所に飾られた(ちなみにイギリスの巡洋艦にはペネロープとかハーマイオニ−という名の船もあった)。

その全長186メートルの艦体の最後尾に、コナンは5000万ポンドの紙幣が入ったバッグを持って立っていた。

ポールにはユニオンジャックが(ひるがえ)り、川から吹いてくる風になびいている。

人影は少なく、時折通っていく人はただジッと立っているコナンを(いぶか)しげに見るが、それだけであった。

何度も腕時計で時間を確認する。

後10分ほどで約束の時間だ。

しかし、辺りをうかがっても特に怪しい人間の姿はない。

一方、河岸の道路ではサイドカーの側車(サイドカーの横についている人が乗る方)から、咲夜が双眼鏡で船上のコナンを見ていた。

咲夜
「なぁ、ハヤテ。犯人は一体どうやって現れるんやろな?ウチがが思うに、普通の方法では現れるワケがないと思うねん。」

咲夜はバイクに(またが)っているハヤテに声をかけた。

ハヤテはナギの好意で先日バイクの免許を取っていた(実際は原付免許でサイドカーは乗れません)。

ハヤテ
「さぁ?船上で直接会うとすぐに捕まるかもしれませんし。後は船で側に寄ってきて、コナン君にバッグを投げさせるか。けど船にしても目立ちますからね。バイクで追いかければすぐに追いつけますよ。」

あれこれと2人は推理してみる。

ところで、この2人とコナン以外のメンバーはというと、他のメンバーはそれぞれにビルの角等に身を隠して待機していた。

生憎と車やバイクを運転できる人間はいないから、彼らは地下鉄・バス・タクシーでの移動だ。

時間は刻一刻と進んでいく。

全員の緊張が高まる。

そして、時計の針は2本とも12を指した。

だが、犯人らしき人間は現れない。

ハヤテ
「誰も来ませんね。」

咲夜
「どういう事やねん?」

ハヤテと咲夜の頭の上には?マークが浮かぶ。

一方、船上のコナンはというと。

コナン
「おかしいな?もう約束の時間は過ぎたぞ。」

と、そこでコナンは気づいた。

コナン
「何だ?」

突然河の表面が泡立ちだしたのである。

ハヤテと咲夜も気づいた。

ハヤテ
「何だ!?」

咲夜
「一体何が起きてるんや!?」

そして・・・

ザバーン!!

そこに現れたのは・・・

河の中から現れたのは何と、潜水艇だった。

ハヤテ
「そんな!!」

咲夜
「水中からやと!?」

思わぬ奇襲に唖然とするハヤテと咲夜。

同様にコナンも呆然としていた。

そうこうしている内に潜水艇のハッチが開いて1人の男が拳銃を構えて出て来た。

「ボウズ!金を渡すんだ!!」

ノッポの男の言葉に、コナンはハッと我に帰ると、全身全霊を込めて持って来たバッグを投げた。

男はそれをキャッチするやいなやすぐに潜水艇のハッチを閉めた。

そしてそのまま潜水艇は潜ってしまった。

その様子を見ていたハヤテと咲夜がまず動いた。

咲夜
「ハヤテ!急いで追うんや!!」

ハヤテ
「わかってます。」

ハヤテはすぐにサイドカーのエンジンをかけると追跡を開始した。

凄まじいエンジン音を響かせてサイドカーはロンドンの街中を走り出した。

ちなみに、追跡する方法はというと。

咲夜
「よっしゃ、発信機はちゃんと動いとるで。ハヤテ、下流に向かうんや!!」

ハヤテ
「了解です!!」

実は、あらかじめバッグの中に発信機を仕込んでいたのだった。

そこからの電波を、受信機を持った咲夜が見てハヤテに方向を指示するというワケだった。

続いて、ヒナギク・ワタル・千桜のグループが動き始めた。

こちらも咲夜から受信機を貸してもらいそれを頼りに追う。

ただし、自前の移動手段がないのでこちらは地下鉄を使う。

ワタル
「おい!何で初乗りが3ポンドもするんだ!!」

ワタルが駅の料金表を見るなり叫んだ。

ちなみに営団こと東京メトロの初乗りは140円。

千桜
「ロンドンの地下鉄はクレジットカードでの利用を促進するために現金乗車は高くなっているんです。」

千桜が意外な豆知識を披露した。

ヒナギク
「2人共そんな事言ってないで早く行くわよ!!」

ワタル・千桜
「はい!!」

ヒナギクに発破をかけられる2人。

しかし、彼女達の前途は多難であった。

なぜならロンドンの地下鉄は東京と同じく半端なく路線が多いからだ。

そして最後にベルファストから降りたコナンと彼に合流した哀はというと・・・

コナン
「よっしゃ、行くぞ哀!!」

お決まりのスケボーでの移動である。


「あの、コナン君。それいつの間にイギリスに持ち込んだの?」

哀が一応聞いてみる。

それに対してコナンは、

コナン
「それは突っ込んじゃいけない問題だよ!」

と一言言っただけだった。

結局哀はそれ以上突っ込まない事にした。

コナン
「さ、行くぞ。しっかりつかまっていろよ!!」


「ええ。」

コナンはスタートスイッチを押した。

途端にスケボーは急発進した。

コナンはそれを巧みに操り、哀は振り落とされないようにしっかりコナンにしがみつく。

人の間を掻き分けてコナン達は走って行った。

「Wow!!」

「What!?」

突然現れた凄まじいスピードで走るスケボーに、ロンドン市民らは奇異の目で見つめるのであった。



一足先にバイクで先行したハヤテと咲夜の2人であったが、ロンドンも日本の東京やアメリカのニューヨークにたがわず車が多い。

そのため、あまりスピードを出す事はできなかった。

しかし、咲夜の受信機の画面に映る光点が移動するスピードも大して速くはなかった。

咲夜
「何やアイツらも移動するスピードが遅いな。」

咲夜がぼやくと、ハヤテが言った。

ハヤテ
「潜水艦は水中では出せれてもいい所20キロぐらいが限度です。それに海とちがってテムズ川はそんなに深くはないでしょうから、座礁にも気をつけなくてはいけませんし。スピードを出す事は難しいでしょう。」

咲夜
「そうかいな。」

と、ここで咲夜は気づいた。

光点が1ヶ所で止まったのである。

咲夜
「ハヤテ、向こうは止まったみたいやで。」

ハヤテ
「わかりました。相手が発信機に気づいて逃げてしまうかもしれません。急ぎましょう。」

ハヤテはバイクのエンジンを全開にした。

一方、ハヤテ達の後を追うコナン達にもそれがわかった。

コナン
「連中止まったみたいだな。」


「だったら急ぎましょう。もしそこで中身を別の入れ物に移し替えられたら、もう追えなくなっちゃう。」

コナン
「わかってるぜ哀。スピードを上げるぞ、しっかり掴まれよ!!」


「ええ!!」

コナンはスケボーのスピードをマックスに上げ、通りの車や人の間を掻い潜って進んで行った。

こうしてコナンやハヤテが順調に追跡しているのに比べ、ヒナギク達御一行様はというと・・・

ヒナギク
「ああもう!こんなに複雑じゃどうやって乗り換えるかわかんないわよ!!」

ヒナギクがブチギレていた。

ワタル
「生徒会長、ちょっと落ち着いて。」

千桜
「会長、落ち着いてください。」

ヒナギクを必死になだめるワタルと千桜。

何でヒナギクがキレているかというと、実はロンドンの地下鉄は世界最古の地下鉄である分、様々な路線を有している。

そのため、東京の地下鉄並に複雑である。

さすがに、800メートル離れていても同じ駅にするという事はないが、それでも色々入り組んでいて初心者である彼らには使いにくい事この上ない。

オマケに3人共日本で習う英語はできるが、現地で使える英語ができるかというと心許ない人達ばかりであった。

そして、彼らはえらく目立っていた。

まあ東洋人と思われるピンク色の少女が木刀を持って日本語で怒鳴り散らし、メイド服を来た少女と1回りは若そうな少年との間で一悶着起こせば目立たないハズがない。

そんな彼らに近づく人影があった。

「あのさ君達、ちょっといいかな?(もちろん英語です)」

ヒナギク・千桜・ワタル
「へ!?」

彼らに声をかけたのは、1人の警官だった。

「それ刀だよね?詳しい話を聞かせてもらえないかな?(くどいようですが英語です)」

どうやら木刀正宗が凶器と思われたらしい。

ちなみに、ロンドンの地下鉄は過去に爆弾テロが起きているので、こういう事には警察も敏感である。

ヒナギク・千桜・ワタル
「ええ!!」

こうして彼らは思いもよらぬ足止めを喰らってしまった。

結局その後ヒナギクは片言の英語で実に30分も事情を説明するはめになった。

そんな中で、ワタルは1人コッソリ離脱していた。












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