ファイル518:大波乱のロンドン旅行『1』
あの地獄のマラソンから1ヵ月後、成田空港から飛び立ったロンドン行きの飛行機の中に彼らはいた。
コナン
「ついに憧れのロンドンだぜ!!」
出発してからずっと興奮しているのは、誰であろうコナンである。
一方、そんな彼を冷ややかに見ているのは哀であった。
哀
「コナン君、もうちょっと落ち着きなさいよ。他の人に迷惑でしょ。」
コナン
「あ、ゴメンゴメン。けどさ、オレ、ロンドンへ行くの初めてなんだ。」
哀
「まあコンピューターの中では行ったけどね。」
コナン
「そういえばそうだったな・・・あの時は哀に助けられたっけ。」
コナンが話しているのは、映画ベイカー街の亡霊の話である。
ちなみに知らない人はビデオ店でビデオかDVDを借りるか買って観ると良いでしょう。
哀
「そうね。今も頼りにしてるからね・・・私のホームズさん。」
その言葉に、コナンは少し顔を赤らめる。
コナン
「ああ・・・」
すると。
ユリ
「2人とも本当に熱いわね。」
刃
「羨ましいな。」
そう不機嫌に言うのは、ユリと刃だ。
目の前でイチャイチャされて苛立っているのだ。
しかし、それくらいで暴れるほど2人は子供ではない。
ただ、コナンも哀も2人の殺気を気にしてか、そこから先はおとなしくなった。
一方、同じ飛行機のファーストクラスには。
咲夜
「ハヤテとの旅行は始めてやな。」
ハヤテ
「そうですね、咲夜さん。」
こちらにも、イチャイチャするカップルがいた。
綾崎ハヤテと愛沢咲夜だ。
ちなみに、こちらは他のメンバーが出発早々眠ったため、コナン達のように冷たい視線は浴びてない・・・
ワケではなかった。
「おいオマエら!少しは度をわきまえろよ!!」
そう怒鳴るのは、今回特別に招待されたワタルだ。
咲夜
「ええやん別にこれくらい。アンタはウチが誘ったゲストなんやから黙っとき!!」
ワタル
「うぅ・・・」
こう言われては頭が上がらない。
元より頭が上がらないのだが。
ワタルは引き下がるしかなく、こう呟いた。
ワタル
「せめて伊澄と一緒が良かった。」
彼女も今回ナギと咲夜から誘いを受けたのだが、案の定迷子となり出発に間に合わなかった。
ワタル
「ああ、憂鬱。」
同時刻−ロンドン−キングスクロス駅9番線ホーム
なぜか伊澄はここにいたりする。
そして、今まさにカートに梟の入った籠を乗せ、柱に向かおうとしていた眼鏡の少年に尋ねていた。
伊澄
「あの、ここは成田空港でしょうか?」
こうして、この物語は始まった。
コナン達御一行様は、何事もなくロンドンに到着した。
空港からバスを使って市街地へと出る。
コナン
「おお!あれはバッキンガム宮殿!!それにビッグベンも本物だ。スゴいスゴい!!」
まるで子供のようにはしゃぐコナン。
まあ今は完全に外見が子供であるが。
そんな彼を、今回は哀も大目に見ていた。
そしてバスは終点に着いた。
4人はここで降りる。
刃
「さてと、それじゃあアタシとユリはこれで。」
突然刃が言った言葉に、哀とコナンは驚いた。
哀
「え!?あなた達一緒に来ないの?」
刃
「ええ。お2人の仲を邪魔しちゃ悪いやろ。」
ユリ
「私達は適当に見て回っているから、2人でロンドンを楽しんでらっしゃいよ。」
これは2人なりの気配りであった。
コナン
「それじゃあお言葉に甘えさせてもらおうか。行こうぜ哀。」
哀
「ええ。」
ユリ
「2人とも気をつけてね。」
刃
「今は子供の体なんだからムリしちゃダメよ。」
刃が笑いながら言った。
いつもいつも事件に遭遇するコナンと哀への皮肉であった。
それに対して、コナンは苦笑いしつつ言い返した。
コナン
「そっちこそ、いつ敵が現れるかわからないから気をつけて。」
刃
「御忠告おおきに。けどここまで来て戦うなんて冗談やあらへんわ・・・まあお互い気をつけてな。」
哀
「ええ。夕方ホテルで合流しましょ。」
こうして4人は2手に分かれた。
コナンと哀は2人並んで歩き始めた。
しかし、ここでコナンがある事に気づいた。
コナン
「そういえば七槻さんと潤治さんはどうしたんだっけ?空港から姿が見えないけど。」
その答えを哀が言う。
哀
「2人は郊外を見て回るって。私達と一緒だと絶対にゆっくりできないからって言ってたわ。」
またとんでもない言われようである。
コナン
「ハハハ・・・」
この日2回目の苦笑いをするコナン。
小さくなった2人の名探偵の未来はどっちだ!?
一方、もう1つのカップル、ハヤテと咲夜はと言うと、こちらも他のメンバーからの気遣いで2人だけで行動する事になった。
しかし、こちらはそうすんなりと通らなかった。
きっかけは、空港の警官がワタルに声を掛けて来た事に始まる。
「Sorry, I want to ask you・・・」
ワタル
「え!!」
これには困った。
生憎ワタルはナギや伊澄のように英語はできない。
学校の授業レベルが精一杯である。
とてもじゃないが会話は無理だ。
この時幸運だったのは、まだそばにハヤテと咲夜が居てくれた事だ。
ワタル
「おい咲夜!!」
咲夜
「何や!?」
ワタル
「ちょっと通訳してくれ!!」
咲夜
「何やオマエ英語もしゃべれんのか?」
明らかにバカにしている。
ワタル
「うるせえ!!」
だが実際金持ちグループの中で満足にしゃべれないのは彼だけであった。
ハヤテ
「まあ咲夜さん。ボクだって話せませんし。」
ハヤテがここで助け舟を出した。
咲夜
「なんや、ハヤテも英語しゃべれへんのか?」
一番庶民的な考えが出来る彼女も、やっぱりお嬢様だ。
それなりに常識が世間とズレている。
ハヤテ
「ええ。ハングルにタガログ語、フィンランド語にルーマニア語、それにモンゴル語なら話せますけど。」
ハヤテはさらっと言ったが、2人はこう思った。
咲夜・ワタル
「(そっちの方がスゴいよ!!)」
ちなみにハングルは朝鮮語、タガログ語とはフィリピンの言語の事である。
一方、こんなやりとりをされて困るのは待たされている警官である。
「あの、良いかな?(英語です)」
そう言われて、咲夜が急いで話し始めた。
咲夜
「あ、すいません。何でしょう?(英語)」
「実は日本人の少女を保護したんだけど、支離滅裂な事を話してて・・・すまないけどちょっと協力してくれないかね?(英語)」
咲夜
「わかりました。(英語)」
咲夜は会話の内容を訳して2人に伝えると、警官について歩き始めた。
3人ともちょっとした人助けのつもりで歩いていったが、その少女が待つ部屋に案内され、3人とも叫んでしまった。
ハヤテ・咲夜・ワタル
「ああ!!」
何故なら、目の前に道に迷ったハズの和服の少女・伊澄がいたからだ。
ハヤテ達が見たのは、成田空港へ向かう途中迷子になったハズの伊澄であった。
ハヤテ
「い、伊澄さん!?」
ワタル
「な!!」
咲夜
「何でアンタがここにおんねん!?」
何故伊澄がここにいるのか、3人にはさっぱりワケがわからない。
伊澄
「あらハヤテ様に咲夜。それにワタル君。」
いつもどおりのおっとりした口調で言う伊澄。
ハヤテ
「伊澄さん。何故ロンドンにいるんですか!?」
ハヤテが質問する。
3人にとって一番気になる事だ。
すると、伊澄は表情1つ変えずに言った。
伊澄
「それが、成田空港に行く途中で車が故障してしまって。車から降りて外を歩いている内に、気付いたらここに着いていました。」
その言葉に、3人とも開いた口が塞がらない。
咲夜
「アンタはどこでもドアでも持ってるんかい!!それとも時空を越える通路でも開けれるんかい!!」
ハリセンを持っていればそのまま叩きかねない勢いで咲夜が突っ込む。
ハヤテ
「迷子のレベルもここまで来るとスゴいですね。」
ハヤテが言うが、スゴいのレベルを越えている。
ワタル
「伊澄何ともないのか?」
一応ワタルが聞いてみる。
しかし、伊澄はシレッとこう言った。
伊澄
「ええ。私は至って元気です。あ!それよりも。」
ハヤテ・咲夜・ワタル
「(まだ何かあるのか!?)」
3人は次に伊澄が何を言うのか身構えた。
伊澄
「早く成田空港に行かないと。」
ズデッ!!
3人とも身構えたが、盛大にズッコケた。
そして、伊澄は3人を首をかしげ、見ていた。
その様子を見ていた警官はこう思った。
「(これが日本の伝統芸能の漫才という奴か?)」
さて、ロンドンに着くなり波乱の事態に陥ったハヤテ達に対して、コナン達の方は順風満帆、事件に関わる事も、遭遇する事もなく観光を楽しんでいた。
そして夕方、コ哀は楽しそうにホテルへ向かっていた。
コナン
「イヤァ、今日は充実した1日だったぜ。」
哀
「けど本当にあなた真性のホームズオタクね。事務所に行った時なんかスゴくはしゃいでたし。」
普段は中々お目にかかれない、名探偵の一面である。
コナン
「いいじゃんか今日ぐらい。」
哀
「全く。(まあそういうコナン君もカワイイけどね。)」
心の中でソッと呟く哀。
コナン
「けど、今日は本当に良かったぜ。いつもいつも、旅行とかへ行っても事件に遭うからな。」
哀
「確かに、逆にないとそれはそれで物足りないわね。」
と、そこで哀は気づいた。
哀
「(って、それじゃあ私まるで犯罪が起きるの待ってるみたいじゃない!!)」
恐ろしい自分の心の一面に、しばし自分自身恐怖する哀。
コナン
「おい、どうしたんだ?」
急に表情を変えた哀を心配するコナン。
哀
「え!?あ、ごめんなさい。何でもないわ。」
コナン
「本当に?」
哀
「ええ。さ、早くホテルへ行きましょう。」
コナン
「ああ。そうだな。」
コナンが微笑む。
やっぱり平和が一番だと考え直す哀であった。
さて、今回コナン達が事件に見舞われていない理由があった。
それは・・・
同時刻日本 朝風家
理沙
「おじいちゃん。いつまでお払いを続ければ良いの?」
巫女装束を着込んだ理沙が愚痴る。
「もう少しがんばってくれ。」
祖父から返ってきたのは素っ気ない返事だった。
理沙
「トホホ・・・私こういうの苦手なのに。」
そうは言うが、理沙ができる家の手伝いといったらこれくらいだ。
文句を言ってはいけない。
今回行っているのは、魔除けのお払いである。
依頼主は、浅井成美であった。
彼女は、今回ぐらいはコナン達が事件に祟られないようにと、朝風家にお払いを依頼したのだ。
しかし、急な依頼となったため、それをできる人物は朝風家にいなかった。
かといって、せっかくの仕事を断るのも気が引ける。
そこで白羽の矢が立ったのが理沙であった。
というワケで、かれこれ1時間、彼女はお払いの儀式を行っていた。
理沙
「全く、コナン君達一体どんな事件難を身につけているんだ・・・」
調べてみると、コナンに憑いている事件に祟られる気は深く、強力だった。
根絶するには最低2時間お払いを続ける必要があった。
理沙
「後1時間か・・・って!!ああ!!!」
ここで理沙は思い出した。
今日はメイドのバイトの日であった。
理沙
「しまった!!」
すぐに行かなくてはクビにされる。
しかし、手を離していいものか。
理沙
「う〜ん・・・どうしよう・・・」
迷ったが、結局メイドのバイトへ行く事にした。
これくらいお払いを続ければさすがに充分だろうと思ったからだ。
しかし、実際充分ではなかった。
これが後に取り返しのつかない事となる。
しかも、理沙にはバチが当たる事態となった。
この後鷺ノ宮家に行った彼女は、今日はメイドのバイトが臨時休みである事を知らされた。
伊澄が伝える事を忘れていたのだ。
理沙
「何ですと!!」
そして急いで取って返して戻ったワケだが、その時には既に手遅れであった。
コナンの事件難は逆に大きくなっていた。
どうやら中途半端なお払いが逆効果となってしまったようだ。
しかもオマケときて怒り心頭の祖父に見つかるという2重の災難が彼女を待ち受けていた。
「理沙!!オマエ何をやっとったんじゃあ!!!」
理沙
「うわぁぁん!!ゴメン!!!」
朝風家に絶叫が響き渡った。
この後彼女は罰として地下牢で3時間の反省となった。
そしてコナン達は案の定事件に遭遇する事となる。
理沙
「うぅぅ・・・どうして私がこんな目に・・・」
シクシクと涙を流しながら、1人地下牢の中で泣く理沙。
この時彼女はちょっぴり、かつて自分のせいでここに入ったハヤテの気持ちを理解したのであった。
入れられて3時間が経った時、ようやく祖父がカギを持ってやって来た。
「理沙よ、反省したか?」
理沙
「うん!充分反省したからここから出してよ!!」
釈放を懇願する理沙。
「良かろう。出してやろう。しかし交換条件がある。」
理沙
「え!!何!?」
何かイヤな予感がする理沙であった。
「それはだな、オマエもロンドンへ行ってコナン君達の警護をしてくるのだ。今すぐに。」
理沙
「ええ!?そんなムチャな!?」
いくらなんでもそれはイヤである。
コナン達と合流するまでは1人で行かなくてはならない。
しかも、そのコナンは事件難に祟られている。
「そうかイヤか・・・じゃあ、禁固2日間な。」
理沙
「えええ!!!」
禁固2日間という事は、つまり牢屋に2日間入っていろという事だ。
「さあどうする?」
どっちに転んでもイヤである。
理沙
「(どうしよう・・・コナン君達の所に行ってもどうせろくでもない事に巻き込まれるに決まっている。けど、ここで2日間の禁固刑もごめんこうむりたい。だったら・・・)わかった。行くよ。」
「よし。じゃあ急いで必要な荷物を持って5分以内にここに戻れ。」
理沙
「え!?何でここ?」
「つべこべ言わず、すぐにやらんかい!!」
理沙
「はいはい!!」
理沙は自室に戻って急いで当座の着替えと、生活用品、そしてパスポートと財布を持って再び地下に戻った。
ただ、この時理沙は大きな失敗をしていたのだが、彼女がそれに気づく事はできなかった。 |