ファイル486:地獄必至!!山岳マラソン『4』
「キャアアアア!!リアン!!!」
コナン・哀・美希・ヒナギク・マリア・ナギ・千桜・潤治・七槻
「何!?」
ちょうど戦いに疲れてきていた頃であったため、9人全員がこの声に気づいた。
コナン
「行ってみよう!」
コナンを先頭にして、9人全員が声をした方に走り始めた。
一方、この声に気づいたのは彼らだけではなかった。
実は少し離れた場所で雨宿りしていたハヤテと咲夜も聞いていた。
豪雨は10分ほどして止み、出発しようとしていた所であった。
咲夜
「何や!?」
ハヤテ
「悲鳴のようですね。何か起きたのかな?」
咲夜
「行こ!!」
ハヤテ
「ええ!!」
2人も声のした方へ走り始めた。
さて、何故刃の悲鳴が聞こえてきたのか。これを説明するために、時系列は数分ほど遡る。
コナンと哀を罠に掛けようとして逆襲に遭い、さらにそれを逆恨みしてレースを妨害してやろうと意気揚揚と山の中に入った刃とユリの2人であったが、山に入ってすぐに躓いた。
実はこのレース、選手はチェックポイントと山の中さえ通ればどんなルートを通ってもかまわないのがルールである。
そのため、コナンと哀がどこを通っているかなど刃とユリが知るハズもないから、2人のレースを妨害するなど夢のまた夢であった。
それどころか、2人は道に迷い、山の中を彷徨う事となった。
ただ、その彷徨っている内にコナン達を追いかける格好になっていたのは、まさに神のみがなせる偶然と言えよう。
しかし、2人にはその事はわからなかったから、2人にとって今の状況は遭難しているも同然であった。
しかも、参加者として正式に登録していない2人を探す人間などいないから、2人を助ける人間もいない。
そんな中で、天候が悪化し豪雨になってしまったのだから、2人のストレスはピークに達した。
ユリ
「もう!!コナン君と哀ちゃんに逆襲されるわ、山の中で迷うわ、雨に降られるわ、散々だわ!!これも皆リアンのせいよ!!」
ついにユリがぶち切れ、仲間割れを起こしてしまった。
刃
「何でアタシのせいになるんよ!!」
売られたケンカを買わない思考は刃の頭から吹き飛んでいた。
ユリ
「だって、今回この計画をしたのはあなたでしょ。しかもコナン君の前で口滑らせたのも、血迷って山の中に入って迷ったのもあなたのせいでしょ!!」
刃
「何やて!!リリスかて賛成したやない!!」
ユリ
「何ですって!?自分の事は棚に上げて他人に責任を転嫁するの!?」
だんだん2人はただでさえ失っている冷静さをさらに失っていった。
お互いに怒り、罵り合い、そしてついにはお互いの理性が完全に飛んでしまった。
ユリが刃に掴みかかったのである。
もちろん、FBI捜査官として数々の修羅場を潜り抜けてきた刃が何もしないワケがない。
すぐに反撃に出た。
こうして、2人の取っ組み合いが始まったのであるが、冷静さを失った2人にはそこが崖の側である事に気づけなかった。
そして、ユリが刃を突き飛ばした瞬間であった。
刃の立っていた場所が、先ほどの雨の影響で崩れてしまった。
突き飛ばされた衝撃でバランスを失った刃はそのまま崖下へと落ちてしまった。
刃
「キャアアアア!!!」
彼女の叫び声は崖の下へと消えていった。
その様子をユリはしばらく唖然として見ていたが、数10秒後冷静さを取り戻した彼女は、崖のそばまで行き、下をのぞく。
しかし、下の方は靄がかかっていて、刃の姿は見えなかった。
ユリ
「そ、そんな・・・リアン・・・」
そして先ほどの悲鳴に戻る。
ユリが悲鳴を上げた2分後、コナン達がやって来た。
コナン
「ユ、ユリちゃん!」
哀
「あなた、どうしてここにいるの!?」
彼女を縄で縛って来た2人は何で彼女が今ここにいるのか全く理解できなかった。
一方、ユリの方は気が動転しているらしい。
ユリ
「コナン君!哀ちゃん!!助けて!!大変!!」
と言うばかりで、具体的な事を言わない。
哀
「ちょ、ちょっと落ち着いて。一体何があったの?」
哀のその一言で、ようやく少し落ち着きを取り戻したユリは説明を始めた。
ユリ
「・・・それで、刃が崖の下に。」
「何だって!!」
その場にいた全員がようやく事の重大さを理解できた。
ヒナギク
「早く助けなきゃ!!」
まずそう言ったのはヒナギクである。
咲夜
「そやけど、どうやって!?」
崖の下をのぞきながら咲夜が言った。
崖の下は相変わらず霧がかかっていて見えない。
ハヤテ
「これじゃ見えません。誰かが下まで行って見てくる以外にありませんね。」
ハヤテが冷静に言う。
潤治
「だったら、小生と七槻ちゃんがロープを持っているから、それを使えばいい。」
潤治の提案を早速実行に移す一行。
しかし、すぐに新たな問題が発生した。
美希
「これちょっと細くない?」
ロープを見た途端美希が言った。
ハヤテ
「確かに、これでは引き上げる時に切れるかも・・・」
ハヤテも少し表情を歪めた。
コナン
「だったらボクに結んでください!!」
そう言ったのはコナンである。
コナン
「ボクの体重ならそうそう簡単に切れる事はないハズです。」
しかし、すぐに哀が心配そうな表情をする。
それを予期してか、コナンは言った。
コナン
「大丈夫だって、任しとけ。オレなら大丈夫だって。」
ハヤテ
「よし。ならコナン君に行ってもらいましょう。」
こうしてコナンが刃を助けに行く事となった。
体にロープを結び、コナンは崖下へと向かって降り始めた。
そのロープの先端部分をハヤテと潤治が持ち、コナンが崖下へ落下しないようにする。
その様子を、哀を初めとする他の人間が緊張の面持ちで見ている。
ゆっくり、ゆっくりとコナンは崖下へと降りていく。
崖は意外に高さがあるようである。
コナンに悪い予感が走る。
コナン
「いくら刃ちゃんでもこれじゃただでは済まないだろうな。」
そんな事を言っている内に、底に着いた。
辺りは霧に包まれている。
時計のライトをつけ、刃の名を呼んでみる。
コナン
「刃ちゃん!!」
返事はない。
しかし、いくらなんでもそんな遠くに行っているハズがなかった。
コナンは注意しながらあたりを窺う。
そして数分後。
「・・・コナン君?」
弱々しいが、確かにそう聞こえた。
コナン
「刃ちゃん!!」
コナンは声のした方に進んだ。
そしてすぐに地面に横たわる刃を見つけた。
コナン
「刃ちゃん!大丈夫!?」
慌てて駆け寄るコナン。
刃
「ゴメン、ちょっと大丈夫やないの・・・」
刃が言う。
コナン
「どこかケガしたの?」
刃
「左足が・・・」
コナンが刃の左足を見る。
靴下から少し見える彼女の足は赤く腫れ上がっていた。
コナン
「(骨折か・・・・)」
まあこの状況では、骨折で済んだ方が幸運だったといえる。
コナン
「これじゃとても立てないよね?」
刃
「うん・・・ごめんなさい。きっと罰が当たったんや、あなた達に逆恨みして邪魔しようとしたから・・・」
コナン
「謝るなら後にして。」
コナンはそう言うと、彼女を何とか抱き上げる。
左足に刺激を与えないように慎重に。
そしてそのまま手を回して背負う。
コナン
「今は刃ちゃんを助ける方が先だから。」
そしてロープの余った部分を刃に括りつける。
コナン
「よし、できた。」
コナンはロープを強く引っ張った。
それは崖の上のハヤテ達にもわかった。
ハヤテ
「来た!!引っ張って!!」
ハヤテと潤治がロープを引っ張り始める。
コナンと刃2人合わせても50キロもない。
ハヤテ達なら楽々引き上げられる。
実際、コナンと刃はかなり速いペースで引き上げられていった。
ところが、ここでアクシデントが起こった。
それに気づいたのはマリアだった。
マリア
「ああ!!」
ナギ
「どうしたマリア!?」
いきなり叫んだマリアにナギが問う。
マリア
「大変です、ロープが切れ始めています!!」
その言葉に、ロープを引っ張っていた2人を除く全員がロープを見る。
確かに、ロープが少しずつ裂け始めていた。
ハヤテ
「ヤバい!!潤治さん急いで!!」
潤治
「わかった!!」
2人は最速で縄を引っ張る。
咲夜
「あ!見えたで!」
咲夜が叫んだ。
コナン達が視界に入ってきた。
咲夜
「後ちょっとや、がんばれハヤテ!!」
咲夜の応援に答えるように、ハヤテはがんばった。
そして、何とかコナン達を引き上げる事に成功した。
だが、コナンが立とうとした時・・・
ブチ!!
ロープがついに切れた。
この時、コナンは刃を背負っているから重心は後ろ向きであった。
当然、体は後ろに引っ張られる。
バランスを崩し、そのまま落ちそうになるコナン。
コナン
「うわぁぁ!!」
他の面々はその光景に身動きできなかった。
コナン・刃絶体絶命のピンチかと思われたその時、猛然とダッシュした影があった。
その人物は何とかコナンの片手を取る事に成功した。
コナン
「哀!!」
コナンの手を取ったのは哀であった。
その後、動けるようになった他の面々によって、何とか引っ張り上げられた。
ハヤテ
「とりあえず、これで応急処置はできました。」
ハヤテが刃の足に包帯を巻き終え言った。
ヒナギク
「これでレース再会と言いたいトコだけど・・・」
ヒナギクが口ごもる。
咲夜
「ウチら全員ボロボロやで。」
咲夜の言葉に全員頷いた。
先ほどの大混乱のバトルのおかげで、全員ボロボロで体力も気力もほとんど残っていなかった。
コナン
「もうとてもレース続ける気なんて起こらねえ。」
コナンの愚痴に、再び全員が頷いた。
七槻
「というよりも、この状況で単独で動く方が危険ったいね。」
七槻が言う。
確かに、今体力が消耗している状態で単独で動いて動けなくなったら本当にアウトである。
哀
「それに、刃ちゃんを背負って行くのも交代する必要があるから、やっぱり全員一緒に動かなきゃ危険だわ。」
哀がトドメの一言。
結局、この言葉に従って全員一緒に動く事となった。
この時には参加者全員既に最後のチェックポイントを通り過ぎ、しかも、ゴールよりに近かったから、全員ゴール目指して歩き出した。
疲れ果てている彼らの間に会話はなく、ただ黙々と歩いた。
もうレースの事や商品の事は頭になかった。
彼らの頭の中にあったのはとにかくゴールに着いて、ケガをした刃を病院へと連れて行く事だった。
そして、山の中を歩く事2時間。
もうすぐ陽が沈もうとしていた時、一行はゴールに到着したが、ここで彼らは意外な事を知った。
その真実を伝えたのは、待ち構えていた山口だった。
山口
「イヤァ皆さんお疲れ様でした。あと30分遅ければ救助隊を向かわせる所でしたよ。」
ニコニコ顔で言う山口。
しかし、彼を見る11人の目に生気はなくもはや燃え尽きていた。
とりあえず、刃を救急車に乗せる事はしたが、それが終わると全員座り込んでしまった。
ナギ
「お腹減った!!」
七槻
「お風呂入りたい!!」
咲夜
「疲れた!!」
愚痴を言い合う10人。
そこへ、山口がやって来て言った。
山口
「ほら皆さん立ってください。これから表彰式ですよ。」
コナン・哀・美希・ヒナギク・マリア・ナギ・千桜・潤治・七槻・ハヤテ・咲夜
「表彰式!?」
全員が疑問の声を上げた。
山口
「あれ?言ってませんでしたっけ?皆さん以外には完走者がいなかったので、皆さんが同着優勝ですよ。」
その言葉に再び全員声を上げた。
コナン・哀・美希・ヒナギク・マリア・ナギ・千桜・潤治・七槻・ハヤテ・咲夜
「何だって!!!」
ユリ
「え!けど私と刃、それにマリアさん達は関係ないのでは?」
5人はレースに正式参加していなかったハズだ。
山口
「ああ、刃さん達については、浅井という人から追加参加させて欲しいという連絡をもらいました。こちらも地図を渡し忘れてしまって、一応2人共コース沿いに走って来たようですから特別です。マリアさん達もチェックポイントの監視員が側の通過を確認していますし、オマケに随分とレースを盛り上げてくれましたから、3人にも特別です。11人全員にロンドン旅行をプレゼントします。それと100万円もセットで。」
コナン・哀・美希・ヒナギク・マリア・ナギ・千桜・潤治・七槻・ハヤテ・咲夜
「・・・」
一瞬の沈黙。
そして。
コナン・哀・美希・ヒナギク・マリア・ナギ・千桜・潤治・七槻・ハヤテ・咲夜
「やった〜!!!」
と、その時。
雪路
「私にもちょうだい!!」
乱入者が1人。
ヒナギク
「お姉ちゃん・・・」
ヒナギクが呟くように言った。
姉の雪路であった。
しかし、今は体中包帯を巻いている。
一体ここまでどうやって走って来たのだろうか?
山口
「あなたにはあげられません。第一チェックポイントの手前で失格したじゃないたですか。それに、下心丸見えでしたし。そんな人にはあげられませんよ。」
そう山口が言った途端、雪路がバタっと倒れた。
山口
「さ、こんな人は放っておいて、表彰式を始めましょう。」
10人は彼女を無視して表彰式へ。
全員にメダルが渡された。
旅行券は後日渡される事となった。
コナン
「ああ、疲れた。」
コナンが式が終わってから言う。
哀
「本当。けど、ロンドン旅行に行けるからいいじゃない。」
哀が言う。
コナン
「そうだな。」
そこへユリがやって来た。
ユリ
「ゴメン2人共。本当に迷惑ばかりかけて。」
頭を下げるユリ。
哀
「もういいのよユリちゃん。」
コナン
「そうだよ、全員優勝してめでたしめでたし。過去の事を一々気にしてたらキリがないよ。」
2人はユリに向かって笑顔で言った。
ユリ
「あ、ありがとう2人共。」
コナン
「さ、刃ちゃんの見舞いに行こう。」
哀
「そうね、優勝の事も伝えなきゃ。」
ユリ
「うん。」
こうして、地獄のマラソンは終わった。
11人はロンドン旅行の切符を手にした。
しかし、それだけではすまないのがこの物語。
ロンドンで、彼らを待ち受けるものは・・・? |