挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
俺と花畑 作者:あーもんどツリー
2/8

俺の名前は

俺の名前が決定します。
「アンタの名前決めないとね」
杜若(かきつばた)というその娘は記憶がない俺にそう言い、俺の顔をまじまじと見て色々呟きだした。
椿(つばき)・・・男郎花(おとこえし)・・・靫蔓(うつぼかずら)・・・?」
色々言ってはいるものの、どれもしっくり来ないらしい。
「・・・俺の名前、仮のものなんだからさ」
そう。記憶を失っているだけで、俺にはきっと別に人生があって、無論名前だってある。

「・・・それじゃあ蝿取草(はえとりぐさ)?」
「断る」
なぜに食虫植物なんだよ!!
酷くない?俺人だよ?!

「困ったなぁ・・・今日中に決めないと後が詰まるんだよなぁ・・・」
「・・・後、って?」
戸籍(こせき)登録しないとアンタ、消滅するんよ?」

「・・・」
頭の中が白く染まる。
そして理解が追い付くと同時に沸き上がった、恐怖と焦り。
「それを早く言えよ!!こんなとこで消えたかないね!まだまだやることあるんだからな!!」



考え中・・・。



散々アイデアをひねり出した挙げ句、やはり決まらなかった。
俺は消えるのか・・・?
「お悩みのようね?外来人さん」
思わずあっ、と声をあげた。
それはあの若い長老だった。
「なんなら私が付けて差し上げるわよ?・・・私、花言葉には詳しいの」

おお、これは期待できそうだ!
俺は不覚にも安堵(あんど)してしまった。
「・・・それは《勝利》の花。紫陽花(あじさい)なんてどうかしら?」

そうなのか、と関心していると、杜若が突っ込んだ。
「・・・あじさいの花言葉は《裏切り》と《浮気》ですよ」

沈黙。
長老は言葉を失って唖然(あぜん)愕然(がくぜん)
やってしまった、というのを顔で体現している。
わなわなと震える長老。雷に打たれたような衝撃だったのだろう。

「・・・そう、ね。今のは試したのよ」
嘘八百だ。さっきの顔を見て誰が信用するのか。
「そういうことにしておきます」
そうなるわ。と俺は内心思っていた。
「・・・で、その《勝利》の花、ってのは?」
「・・・それはね、《月桂樹(げっけいじゅ)》よ」
ああ、聞いたことあるな。
天使の彫刻なんかが被ってるアレだな、と簡単に想像できた。
「格好良いけどさ、言い辛くないか?」
「ええ、言い辛いわよ?」
「・・・皆、急ぎの場合は縮めて呼ぶから」
杜若が教えてくれたおかげでなるほどね、と合点がいった。
「私の場合はカッキーとか言われてる」
「そりゃ良いや」



そして俺はそのまま月桂樹の名を授かり、《外来人さん》を卒業できた。
これでここで暮らせる、と思っていた。

「だらだらしないでよ、まだやることあるのに」
あ、まだ名前もらっただけじゃないか。
他にまだ何もしていなかった事を、俺というやつはすっかり忘れていた。
「ほら行くよ?《けー》」
「うん?《けー》?」
「・・・縮めた」
少し顔を赤くしていうものだから、可愛い。
「ほら行くよ!!」
「・・・おう」


家を探したりこの世界の勉強をしたり、やることはまだ沢山あったが、それはまた別の機会に記すことにしよう。

俺は月桂樹。外から迷いこんだ《勝利》の花だ。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ