僕はまるで石ころのようで、星みたいな君。(60/188)縦書き表示RDF


僕はまるで石ころのようで、星みたいな君。
作:松の慎



第60話【向日葵】


「うそ・・・だって綾・・」


金星がうちの学校に来たときに、まさかとは思った。


「似てるなとは思ってたんだ。でも昔の記憶だし曖昧だったからずっと声かけられなかった」
「えっ・・じゃあ新田くんチーマーだったの?」
「そうと言えばそうだけど、違うと言えば違うかなぁ」


でも、さっきの型を見て確信した。
あれは金星だったんだと。

どういうこと?と聞き返されたから、説明を始めた。


「中1・・・中2だったかな。まぁとにかくずっと前のことなんだけどね、ロードワークで外走ってたらどっかの公園に人がいるのが見えた」


公園を覗いてみると、金髪が見えた。
ちょっと興味がわいたから公園に入ってみたんだ。

そしたら金髪の女の子が数人のいかつい男となんかやってるのが見えた。

ケンカ?と思ってしばらく見てると、女の子はすごく強くて他の男たちはまったく歯が立たない。

次々にやっつけていってるけど、でも1人が起き上がって棒みたいなので金星を後ろから殴ろうとしていた。

金星は前にいる敵と戦っててまったく気づいてなかったから、俺飛び出したんだ。


『危ないっ!!』


素人に本気出しちゃだめだと思ったけど、この場合は仕方がない。


『はぁっ!』


おもいきり蹴っ飛ばした。
そしたら棒がカランカランと音を立ててどっかに飛んでいき、男は倒れた。


『あ・・・あんた誰?!』


女の子は戦いながら聞いてきた。

俺も戦いながら答えた。


『拳法使いだ!』


実を言えばちょっとだけ楽しかったんだ。
手加減しなくて良いってことと、スリル。

何人もいたけど、その女の子は俺の背中を任せられるくらい強かったから俺は安心して前方の敵だけと戦うことが出来た。

こんなに強い子ははじめてだ。

もちろんほどほど強いのは生徒の中にもいるけど、どれも背中を任せられるほどではない。


背中をあわせながら戦える、はじめての人だった。

だから後ろからやられるとは思わなかったし、前にいる敵にも負ける気はしなかった。


数分後、男たちはみんな倒れた。

とりあえず誰かに見られたら危ないから俺は金髪の女の子の手を引いてその場から離れた。


『すごいじゃん!強いんだね、あんた!』
『まぁほどほどにね。でも君もすごいよ。俺はじめて会ったよ。俺の背中任せられる人』
『そんなん俺もだよ』


その日、彼女が拳法を教えてほしいって言うから教えた。
1、2週間くらいかな、一緒に戦ったのは。

チームのみんなにも気に入られた。


「2トップなんて言われて、楽しかったんだよな。普段あんまり本気で出来ない分、そこで発散してたようなもんだ」


でもある日、生徒に見られたのかなんなのか分からないけど親父にバレた。

こっぴどく叱られて、そこへ行くのも禁止されてしまった。


それ以来俺は行かなくなった。


「どうしてるかな、とかいろいろ気になったけどもう行けないし、名前も知らないし顔もうつろ覚えだった。覚えてるのは金髪ってことと、みんなから金星さんって呼ばれてることだけだった」


すごくたまに通りかかったときに、見ることはあった。

そのときも金星はいつものようにケンカをしてた。
今度は1人で。

いつもあそこには俺がいたんだなって思うと、少しだけ悲しかった。


「・・・・・・・由紀?由紀なの?」
「うん。黙っていなくなってごめんね」
「ほんとだよ!綾ほんっと寂しかったんだからね!」


金星は頬を膨らませて言った。


「でもそっか・・・・あれ新田くんだったんだ」
「でも途中で金星の姿が見えなくなった。やめたんだね」
「うん。たっちゃんがやめろって言ったの」
「大谷?知り合いだったの?」
「ううん。でも中2の冬くらいにたっちゃんがいきなり現れてね」
「へぇ」


大谷とも出会ってたんだ。


「あれがたっちゃんって気づいたのは今年の春なの。びっくりだよねぇ、それまでは知らずにずっと友達だったなんて」


大谷のことも覚えてなかったんだ。

俺と大谷、スタートはほとんど一緒だったのにな。
・・・いや、不良だった金星と一緒にバカやってた俺よりも、金星を光の世界へ導いた大谷のほうが金星の中では大きな存在だったのかもしれない。

じゃあもし俺があのとき止めてたら、金星は俺を好きになってくれただろうか。

でも、そうできなかったんだ。
あんだけ強い人にはじめて会ってウキウキして・・・自分のことしか考えてなかった。

拳法なんて教えてさらに暗闇に引っ張ってた俺と、大谷ではまったく違いすぎる。


「綾を助けてくれたのはたっちゃんだけど・・・でもね、あの周りがなにも見えなかった頃に新田くんに会えて、毎日がワクワクしてたってことも事実なんだよ」
「え・・・」
「親からも見捨てられて・・・ほんとに息詰まる毎日だったのを楽しくしてくれたのは新田くんなの。ほんとに嬉しかった」


金星はニコッと笑った。


「まさかまた会えるとは思ってなかったな」
「綾も。また一緒に出来たら良いね!」
「冗談。金星もうケンカしないんだろ?」
「んー・・・そっか。じゃあ今度は拳法で!」
「それなら喜んで」


そっか。
俺が楽しいって思ってたように、金星もそう思ってくれてたのか。

良かった。


そう思うと、つい笑ってしまう。


「新田くん?」


なんだよ、金星だったのか。
それならそうともっとはやく知りたかったよ。

悔しいな。

昔も今もいいところを大谷に取られてるなんて。


「いや、ちょっと嬉しくて」
「嬉しい?」
「俺が怪我治ったら手合わせ願える?」
「もちろん!じゃあ綾それまでにもっと強くなってるね!」


なにが嬉しいかって?

俺と金星が昔つながっていたという事実だよ。


俺たち昔パートナー組んでたんだな。
やっと出会えた。

長年待ち続けてた俺の相棒。


「綾の相棒は新田くんしかいないもんねっ」
「大谷じゃなくて?」
「もちろん、新田くんだよ」


できれば恋のパートナーが良いな。
まぁそれは無理かもしれないけど。

でもそれでも相棒と言ってくれるだけで嬉しい。

金星のそばにいれるんだってことが、この上なく嬉しいんだ。


「あ、写真持ってる」
「え?」
「ほら集合写真だよ。あの頃ちょうど俺いた時期だからさ」


俺は机の上にある写真立てを取り、金星に見せた。


「綾も持ってる!やだ〜新田くん写ってるの?!」
「うん。あ、ほらここに・・・・・ってめっちゃ隣に写ってるし」
「ほんとだ〜!」


この写真を見るとあの頃の俺らが信頼し合ってるってよく分かる。

写真の中央で腕を組みながら、少し背中を合わせあってる。
そして自信ありげに笑ってる。


「懐かしいな」
「ほんと。あの頃より綾たちすっごく成長したね」
「そりゃもう3,4年も経ってるもんなぁ」
「じゃあ新田くんはもっともっと強くなってるよね」
「もちろん。由紀で良いよ。あれが金星だって分かったとたんなんか新田くんって呼ばれると変な感じがする。(笑)」
「由紀って呼んでたもんねー。じゃあ由紀で」


金星がニコッと笑った。

やっぱり可愛い。


「じゃあ綾のことも綾で良いよ。なんか由紀だけって嫌だし」
「俺昔から金星だったもんな」
「そうそう。みんなが金星さんって呼んでたもんね。でも由紀は綾の相棒だったからさん付けは嫌で、やめてって言ったんだよね」
「だからあのチームで金星のこと金星って呼ぶの俺だけだったよな」


思い出せば出すほど記憶が蘇る。

あれが綾だって知ったから余計に、思い出したくなる。


「じゃあ綾、楽しみにしてるよ」
「うん!」


夏、窓から向日葵が太陽のほうを向いて頑張って生きている姿が見える。

太陽の花で、向日葵か。

ぴったりの名前だ。



花言葉は「私の目はあなただけを見つめる」だ。



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