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僕はまるで石ころのようで、星みたいな君。
作:松の慎



第51話【インタビュー】


慎ちゃんと奈留が付き合い出してから数日経って、明日で夏休みを迎える。


「たっちゃん、勝負だからね!」
「言っとくけど絶対負けねぇよ。そんであの財布げっとだ!」
「綾が勝って特大キティちゃんぬいぐるみ買ってもらうからっ」


今回はたっちゃんと期末で賭けをしたんだ。
綾が勝ったらキティちゃんぬいぐるみ(3万円)買ってもらって、たっちゃんが勝ったら財布(2万9千円)を買ってあげるの。


期末の結果は中間のときとは違って中央廊下に張り出されるんだ。
1位から20位まで。

それも名前の横に各教科ごとの点数も書かれてる。


「じゃ見に行こうぜ」
「うん」


たっちゃんと一緒に見に行く。
廊下は人だかり。

みんな結果を見に行くんだな。

内心ドキドキしてる。
今回もたっちゃんや蒼ちゃんに教えてもらいながら頑張ったけど、どうかなぁ。

期末はみんな頑張るんだよね。
もちろん一番のライバルのたっちゃんもきっとすごい点数良いはず。


ようやく中央廊下に着いたけど、人だかりで結果が見えない。

ピョンピョンと飛び上がって見ようとしたけど、やっぱり見えない。
背が高くて視力2,0のたっちゃんには見えてるんだろうな。


「たっちゃん〜・・・見えないよぉ」
「しゃーねぇな。ほら行くぞ」


たっちゃんが綾の手を引っ張って人ごみに入っていった。


「ちょ・・・たっちゃん」


人を掻き分けて、ようやく紙が見えるところまで来た。

ゆっくりと1位から目に通す。


「「えっ」」


つい声がハモった。


「えー?!同点1位?!」
「まじかよ!なんだよ、つまんねー!!」


結果は綾もたっちゃんも同点で1位だった。

キティちゃん買ってもらえないのは残念だけど、でも一番驚いたのはその下だった。


「お、やった」


後ろから声がした。

振り返ると慎ちゃんが奈留と一緒にいた。


「えー!慎ほんとに3番取っちゃった!すごいっ」
「自分でもびっくりだよ」


まさか慎ちゃんが3位にくるとは。
それも綾たちとたったの16点差だ。


「慎ちゃん、本気出したね!」
「俺今回めっちゃ頑張ったよ。来期は抜かすかもね♪」
「「絶対負けない!」」


まさかこんなところにも強敵がいようとは。

慎ちゃんの本気ってすごいな。
生物満点だって。
綾だって89点なのに・・・けっこう難しかったよね。

さすがお医者様。
生物系に抜かりはなしってことね。


「あ。そうだ、綾ね、夏休みピアノコンクール出ようと思ってるんだ」
「コンクール?なに、お前ピアニスト狙ってんの?」
「んー・・・まだ決まってないけど、でも出たいなって」


そういえばまだ決めてない。
ピアノ関係に就くってことは確実なんだけどね。

ピアニストかピアノの先生かとか・・・
ピアノさえ弾ければなんでも良いんだけど。


「なに弾くの?」


慎ちゃんが言った。


「俺的にはショパンが良いけどな」
「たっちゃんはショパン派か」
「えーあたしシューベルト」


ショパンにシューベルトか。
確かに審査員受けしそうだもんね。

でもやっぱり


「「ベートーベンが一番だよ」」


慎ちゃんと声が合った。


「やっぱり?やっぱベートーベンだよね!」
「ベートーベンのピアノソナタで決まりだろ」
「うん!」


あたしの中ではベートーベンが一番かな。

やっぱ弾くなら好きな人の曲が良いし。
他の人が嫌いってわけじゃないけど、好きな音楽家の曲を弾いてると自分もその人になりきってるような気がして楽しいんだ。

ただ、一番の心配はたっちゃんち家のこと。

綾は音楽関係に就きたいけど、でももしたっちゃんと結婚することになったら・・・・
だってたっちゃんは華道を継ぐんでしょ。

綾もそしたらやっぱり華道やんなきゃいけないのかなぁ。
そしたら音楽なんて・・・できないよね。

たっちゃんのほうをチラッと見上げた。


「ん?」
「なんでもない・・・」


はやめに諦めたほうが良いのかな。
でも、やっぱり音楽やりたいよ。




****************




「あら龍、お帰りなさい」
「母さん」


学校が終わって家へ帰ると、母さんがいた。

いつもならこの時間は稽古中なのに。


「なに、どした?今稽古中じゃないの?」
「ええ。龍にも混ざってもらおうと思って」
「えー。俺言ったじゃん、稽古には参加しないって。なんで俺がお弟子さんと一緒に今更習わなきゃなんないんだよ」
「違うわよ、今日は特別」
「特別〜?」


母さんが俺に着替えろとせかすもんだから、仕方なく着物の着替える。
わけを聞くと母さんはため息をつきながら言った。


「あなたこの前展示に出したでしょ。それがとても評判が良くてね、今日はインタビューに来るらしいのよ」
「インタビュー?まじかよ、めんどくせぇ」
「そう言うと思ったわ。私も稽古中にってのはどうかと思うけど・・・先方がどうしても華を生けてるところを写真に撮りたいんですって」
「へーへー」


まぁ確かにこの前出した奴は自信作だけどさ。
そんなに良かったか?

着替え終わって、稽古部屋へ行く。
お弟子さんたちはもうみんな来ている。


「こんにちは、龍さん」
「あーども」


母さんの一番弟子の曽根さんに話しかけられた。
曽根さんの腕前もすごいんだ。

確か展示には曽根さんの作品も出したはず。


「今日は先生として龍に参加してもらうわ。途中で記者さんが来るけれどみんな集中するように」


母さんの言葉に、みんな元気よく返事をした。

なんだ、先生としてやるのか。
そりゃそうだよな。
今更弟子と一緒のことやるわけないもんな。


「じゃあまずは私と龍が生けます」


花たちが運ばれてくる。

ほんとはみんなの前で生けるのは好きじゃないけど、でもしょうがない。
やってやるか。

生けていると、記者が来た。
手を止めようとしたけど、記者側が続けてくれって言うから続けていると、写真を2、3枚撮られた。

上手く写ってますように。
なんてね。


今回のテーマは「夏」
だから爽やかな色の花、そしてはっきりとした色。

少しでも見栄えをよくするためにバックの花は大きく鮮やかに。

軽やかにハサミをさばいて、花を生けてく。


「できた」


出来上がった花を見るなり弟子たちは歓声を上げた。

うん、これには俺も満足だな。
夏って言われるとどうしても花生けにくいんだけど、これは上出来だ。

記者がその花と一緒に1枚、と言った。
とりあえず愛想よく笑ってみた。


そのあと少し弟子たちに教えながら生けさせて、俺だけ別部屋でインタビューを受けることになった。

有名な新聞社だから下手なこと言ったらまずいな。
上手いこと言って切り抜けよう。


「じゃあ龍くんはもう跡取りとして正式に決まってるんですね?」
「ええ」
「何歳頃から華道をやってますか?」
「そうですね、生まれたときから側に花がありました。寺は兄が継ぐとおそらく初めから決まってたでしょうし」


こんな会話がいくつも続いた。
そのうち学校の話題に持っていかれた。

成績やら運動神経やら生活やらとにかくありきたりな質問をたくさんされる。
そろそろうんざりしたなと思った頃、こんな質問をされた。


「彼女はいますか?」


これは・・・答えて良いのか?
別に彼女いるってことくらいは言っても平気だよな。

いる、と言おうとした瞬間、記者が言った。


「家元は華道をやってる人を是非嫁にと言ってましたけど、彼女も華道をやってますか?」
「え?そんなこと言ってたんですか?」
「前にインタビューしたときにですけど」


まじかよ・・・
どうするか。

彼女が音楽関係なんて言ったらどうなるんだろう。


さぁ、どうするどうする。
下手に答えたらまずい。


「えー・・・っと、その件に関してはノーコメントでお願いします」
「と、言いますと?お母様には内緒ということでお付き合いを?」
「ノーコメントです」


記者はなにやらメモを取り、そしてそのあともたわいもない質問をいくつかされてやっとインタビューが終わった。

帰り間際に「本が出来たらお送りします」と言って帰っていった。

やっと終わったかと思って、椅子に深く腰をかけた。
ため息をつく。


やっぱり母さんは華道やってる人が良いのか・・・

でもそれは無理だよな。
綾に華道をやれなんて無理な話だ。
綾にだって夢はある。

弱ったな・・・



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