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僕はまるで石ころのようで、星みたいな君。
作:松の慎



第36話【小雪】


「なに、テスト勉?俺んちもちょうどテスト一週間前なんだよね」
「じゃあ三人でやろうぜ。な、綾」
「うん!」


蒼も含めて、三人で綾の部屋で勉強することになった。

綾が英語を出し、俺が物理を出すと蒼も物理を出した。
俺はすかさず蒼に言い寄る。


「お、蒼も物理か。分かんないとこ俺が教えてやるぜ♪」
「じょーだん!お前俺の天才さ知らないだろ」
「ほぉ?言ってみ」
「我が校始まって以来の天才ってね。ほんとかどうかは知らないけど、まぁ学校でトップってのは本当だね」
「ぐーぜん!俺もそうなんだよねぇ」
「は?!」
「俺も学校でトップですー」


俺がそう言うと、蒼は信じられないというような顔で俺を見た。
そして綾に真意を尋ねた。

すると綾は


「綾が一番だよ!この前のはたまたまたっちゃんに負けただけだもん!」
「えっなに、綾も?」
「なに言ってるの蒼ちゃん。蒼ちゃんがトップなら綾もトップに決まってるでしょー」


綾はケラケラ笑った。

いや、双子だからってそれはないと思う。
心の中でつっこんでみる。(笑)


「へぇ、龍と綾がトップ争いねぇ。あの学校も落ちたもんだ」
「「なにー?!」」
「うそうそ。すげぇな、じゃあここにトップ三人もいんのかよ」


蒼がはにかんだ。

なんだ、笑えるんじゃん。
笑った顔はじめて見た。

笑い方とかは全然違うけど、でもやっぱり笑った顔は綾にそっくりだ。
でもやっぱり男っぽいっていうか。

怒ったり泣いたり笑ったり、可愛いもんだな蒼も。
普段クールっていうか、大人っぽく見えるのに。


「んー・・・なぁ蒼、これってこの公式だろ?なんで答え出ねぇんだ?」
「ああ、それはちょっとひねってあんだよ。この公式に代入してからこっちに・・・」


俺が聞くと蒼は丁寧に教えてくれた。
さすが、分かりやすい。

あの名門でトップっていうのもまんざら嘘じゃねぇな。

やっぱ遺伝子か?
綾にも蒼と同じ遺伝子があるんだろうなぁ。


「なんか二人って良いコンビだね」


綾が微笑みながら言った。

俺と蒼は顔を見合わせて「そうか?」と言った。
見事に声がハモり、それがうけたのか綾はクスクス笑った。


「・・・まぁ龍は良い奴ってのは認めるけどな」


ちょっと恥ずかしそうに蒼は言った。

なんとなく嬉しかった。
出あったばっかりなのに、他人のように思えないのはなぜだろう。

綾の兄貴だから?
いや、たぶん・・・相性が良いんだろうな。


「俺も蒼好きよー。特に笑った顔が」


ニマッとすると、蒼は顔を赤くした。


「なっ・・・・ばっかじゃねぇの!」
「照れんなって」


慎に少し似てる。
性格とか、ふだん大人っぽいくせに実は喜怒哀楽激しかったりするところとか。

俺ってこういうタイプが合うんだな。

そういえば慎の奴、奈留とどうなんだろう。
津野田と張り合ってる最中なんだよな、今。

そもそも奈留の好きな奴ってだれだ?
まだ会長か?
いや、それはないだろうな。

やっぱ俺からしたら慎とくっついて欲しいよなぁ。


「あ、そういえばさ、早乙女・・・・なんつったけな、早乙女・・・」


蒼が突然話題を出した。
どうやら早乙女という人物の話のようだ。


「なんだっけ・・・新之助?いや、慎太郎じゃなくて・・・」
「「慎一?」」


俺と綾が声を合わせて言った。
早乙女ってだけなら他にもいるけど、慎という名前が出たらもうこれは慎一のことしかない。

俺たちがそう言うと、蒼はそれだ!と言った。


「なんで蒼ちゃん慎ちゃんのこと知ってるの?」
「綾たちの知り合い?」
「おー。俺の親友。もう一人奈留ってのがいて、4人でよくつるんでる」
「そうか。じゃあちょっと明日の休日うちに連れてこれない?」
「うちに?慎ちゃんを?」
「ああ、実はさ・・・」


蒼が理由を話し始めた。

蒼には親友の女の子がいるらしい。
もちろん男友達もたくさんいるけど、その女の子が一番気が合うらしい。

付き合っているわけではなく、ただの親友で、でもご飯を一緒に食べたりとかはするらしい。
ほんとに友達以上恋人未満ってとこだよな。

本題はこっからだ。
慎の親は医者で、前に話を聞いたけどあんま覚えてないんだけど・・・とにかく偉い人らしい。
それでその蒼の親友の親も医者で、その親は慎の親の部下だとか。

親同士で婚約の話が進んでいるらしく、先日彼女がその話を父親にされたばかりだと。


「んで小雪(親友)が一度その早乙女って奴に会いたいって言ってるんだ。もちろん親には内緒で」


なるほど。
しっかしやっぱりそういうのってあるんだな。

俺の場合は綾のおじさんにもOKもらってるしな。
あ、でも俺んちの親はどう思っているんだろう。

寺のほうが良いとして、問題は華道のほうだよな。
母さんは家元なわけだ。
やっぱり華道ができる人をって考えているのかな。

そう思うと、慎と蒼の親友の婚約が人事のようには思えなくなる。


「分かった。じゃあ明日つれてくる。綾いないほうが良い?」
「いや、どっちでも。ああ・・・でも龍にいて欲しい」


蒼が少し不安げに言った。

ピンときた。
そうか、こいつその小雪って子のこと好きなんだな。


「蒼、お前さ・・・その子のこと好きなんだろ?」
「え?そんなことはないよ。ただの親友」
「ほんとに?」
「もちろん。だから小雪がそいつと婚約したいってんなら応援するさ。たとえ早乙女って奴に彼女とかいてもね」


気づいてないんだ、自分の気持ち。
気づいてないとあとあと苦労して後悔するだけだ。


「じゃあ俺明日も来るよ。慎つれて」
「さんきゅ」


複雑だ。
まず小雪ちゃんはどう思ってるんだろうな、慎のこと。
それ一番重要だよな。

蒼は小雪ちゃんが好きで、慎は奈留が好きなんだよな。
小雪ちゃんは・・・どっちが好きなんだろう。
蒼を好きなら両思いだ。
でも、慎のことを好きだっていうなら蒼にとっても小雪ちゃんにとっても叶わぬ恋になる。

むしろ他に好きな人がいるとか。


でも俺は蒼の応援をしたいな。
もし小雪ちゃんが慎を好きだと言うのなら、慎のためにも蒼のためにも全身全霊をかけて蒼に頑張らせるさ。


「たっちゃん、奈留には内緒?」
「そうだな。とりあえず様子を見よう」


蒼に聞こえないくらいの小さな声で綾が尋ねてきた。
俺も小声で返事をする。


どうして人は人を好きになるんだろう。
どうして相思相愛じゃない愛があるんだろう。

俺が今こうして両思いでいられるのも偶然に偶然が重なっただけなんだろうな。

そう思うと、この世の儚さが目に見えたような気がした。



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