ビターチョコレート縦書き表示RDF


ビターチョコレート
作:大島なるみ



 それは、いつからだっただろう?
 思えば私は、このほろ苦甘い感覚に、いつの間にか魅せられていたんだ。



━ビターチョコレート━



 それを口にしたその瞬間に、
「チョコレートは甘い食物だ!」
などという、偏見まがいな私の見解は見事に崩れ去った。
 それ、とはまさにビターチョコレートだ。
 チョコレート特有の甘さ、それは他のものとさほど何ら変わりはない。
 けれど、1つだけ異なる点がある。
 それが、この甘さに包まれたほろ苦さ。
 甘い食べ物でありながら、まるで正反対のほろ苦さを感じるのだ。
(美味しい…)
 私はその瞬間から、このビターチョコレートの虜になった。

 そして……。


「もうそろそろ帰らないと……」
 隣で煙草の火をくゆらせていた彼が、スッと立ち上がった。
 私の部屋に来る彼は、決まってこの時間に、この行動を繰り返している。
「そう……なら、仕方ないわね」
 私がそう言うと、彼は去りぎわに軽く1つキスをくれた。
 そして、
「また来るよ」と言葉を残しながら去っていく。

 必要とされているのは確かなのに。
 大事に思う気持ちは同じなのに。
 何かが違う。


 それはまるで、それまでの見解を一気に覆されたデジャヴ。


 私はそっと触れた唇を指でなぞる。
 何故かそこには、それに似た甘いほろ苦さが残っている。
 ……そんな感じがした。



End.














ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




◆BACK
小説家になろう