パラレルワールド 涙刃SIDEPDFで表示縦書き表示RDF


「パラレルワールド」の別人物視点の物語です。どっちから読んでも内容はまったく変わってないので大丈夫です。
パラレルワールド 涙刃SIDE
作:司


 ある日の夕方。 散歩をしていたらあなたに出逢った。
 ちゃんと見ても、あなただった。

 手ぶらだし、私と同じで散歩中なのかな。 涙刃はそう考えて聞いた。
「散歩、ですか?」
 その人、同じクラスの大切な友達、高谷祐一はちょっとだけ驚いていた…気がする。

「…えっ……と…?」
 それは肯定で
「散歩は好き?」 と、涙刃の耳は都合良くそう聞こえてしまったらしい。
「私は…うん、世界が見れるから、散歩は好きです」
 涙刃が答えたとき、一瞬だけ祐一が呆れたような目で見ていたような…気のせいかな。
「あの…すみませんが、どちらさまですか?」
「………?」
 祐一さんって冗談を言う方でしたっけ?と、涙刃は首を傾げた。
 ここは" ある意味で "乗ってあげた方が良いかな。
「覚えて、ない…?」
 涙刃が言った瞬間、祐一も首を傾げた。
「覚えて、ない…じゃなくて…えと」
 たぶん彼にとって予想外な返事だったと思う。 「私のことを忘れるなんて…ひどいです」とか、そういう答えを求めてたのかもしれない。
 もうちょっと、からかってあげよう。
「涙に刃と書いて…うるは、涙刃です」
 涙刃の心の中は
「してやったり」という感じで、ふふ、と笑っていた。
「涙刃、さん」
 マジメな顔で祐一は言った。
 そのせいか心の中の
「してやったり」が" どきっ "という何かの衝撃で壊された。
「僕は涙刃さんと会ったこと、ない…ですよね?」
 …? どうしたのでしょう、今日の祐一さんは。
「ない、のですか?」
 どう返答しようか、なんて考えてなかったので、反射的にまたオウム返しをしてしまった。
「そう思うんですけど…あ、そうだ」
 いつもとは違う、敬語口調だし、どこか薄気味が悪い。 だから早く終わらせたい。 そう思う一心で、ゆっくりと、的確に涙刃は言った。
「高谷祐一さん…高校二年生…組は1-A…身長、体重………」
 本当に色々なことを言った。 これなら
「わかった。恥ずかしいから、もうやめてくれ」たぶんこう言うと思う。
 なぜ他人の情報を知っているかというと、これは学校の規則で、月の始めに教員に自分の情報を提供して、何か変化があったら掲示板に公開される。そういうオカシイシステムなのだ。 特に祐一さんは、規則に習って絶対に月の始めに提供するから、覚えやすい。 けれどもすぐに提供しない生徒は、少なくもない。
 正直言うと、まだ自分はこの規則に慣れていない。 嫌悪感を抱いてしまう。
 掲示板、つまり学校内でのネットワークみたいなもの。 そこに自分の体重とか、スリーサイズとかが公開されるなんて…あんまり考えたくはないけど、実際にあるのだから仕方がない。 しかも男の子も見るから…やはり考えたくない。
 でも涙刃は何かと理由を付けて月の始めには提供しない。 変化があってもなくても、必ず月の最後辺りに提供するのだ。 そうすれば見る者なんて誰もいないはず。と考えていた。
内申点とかが下がるかもしれないけど…女心を優先したい年頃。

 それにしても自分に驚いた。 なんでこんなに覚えてるのだろう?

 …そんな話を聞いても祐一は…驚いてるだけだった。 これは、もしかしたら本当に…。
「……その表情から察するに、本当に覚えてないみたいですね。 私、祐一さんとは同じクラスですよ? ど忘れでもしたのですか?」
「…僕はあなたを知らない。だけど、あなたは僕を知っている、個人情報、全てまで。 …ありえないんじゃないですか?」
 …本当に記憶喪失なのかもしれない。 これは大変な出来事。 一刻も早く助けなければ。
「私たちの学校の規則では、月に一回、自分の個人情報を教員に報告して、変化があったら掲示板に公開…でしたよね?」
「え?」
 ……疑問系。
 果たして大丈夫なのだろうか? とりあえず出来る限りの努力をしないと。
「ということは、祐一さんも私の情報を知ってるはずですよ?掲示板を見ているならば」
 そう、" 見ているならば "
 今回だけは、運良く見たことがあることを願う。
「………わけ…?」
 祐一はぼそぼそと何かを喋っていたが、一端区切って今度ははっきりとした声で喋った。
「みなさめ…水雨、涙刃。僕と一緒のクラスで、最近のスリーサイズは」
  " 最近のスリーサイズ "これを言われた事によって、涙刃は非常に驚いた。 顔はかなり赤くなってるはず。
「…はっ…!? ぼ、僕は、何をっ…」
 気づくのが遅いです…。そう言いたかった涙刃であったが、必死に堪えた。
「…昨日公開されたばかりです…もうそこまで…」
 真っ赤な顔を隠すように俯き気味に、涙刃は言った。

 でも、これで記憶喪失の可能性はなくなった。 ど忘れだったのだろう。
「とにかく、祐一さんは私を知ってるわけです やっぱりど忘れだったんですね」
「……そ、そう。ど忘れ…」
 小声で
「良かった……」と安心して、胸を撫で下ろした。
「祐一さん、記憶喪失にでもなってしまったのではないかと、驚きました」
「う…ん」
 ちらりと上を見ると、今までの朱色の空が漆黒の空に変わっていた。
「あら、もう暗くなってしまいましたね。 私は帰宅します。 では、また明日学校でお会いしましょう」
 そして足早に自宅へと向かった。



 適当に付けた番組を見てみると、怪しい格好をした人物が何かを語っていた。

『私たちの世界は全く以て広い、広すぎる世界なのです』
 オカルトな番組。一瞬で理解した。
 でも涙刃はこういうジャンルは嫌いではなかった。 一応、雑学にもなるわけだし…どこかで使えるのではないかと考えているから。
『世界には平行世界、つまり、パラレルワールドという、私たちの知らない、数多の世界が存在します』
 パラレルワールド…。 同じ" 私 "がいるけれど、違う" 私 "がいる世界…。 あるいは、" 私 "の代わりの" 誰か "がいる世界…。
『そして…』
 その人物は何やら図が書かれている紙を取り出して言った。
『簡単に説明すると、ここの空間の人間が別の所に行くと、そこの空間にどんどん慣れて、いつしか" ここの空間とそこの空間 "…二つの空間が混ざり合い、空間は潰されて、なくなってしまうのです』

 その世界は同じ人物が二人いてはならない。
 仮説を話そう(仮説A) <世界A>に<涙刃A>がいて、<世界B>に<涙刃B>がいたとする。 そこで何らかの次元の手違いが起きて、<涙刃A>が<世界B>に来てしまったら、<涙刃B>は<世界A>に来てしまう…俗の単語で" 交換 "されてしまうのだ。
 だけどまた次元の手違いが起きたら、<涙刃A>は<世界A>に。 <涙刃B>は<世界B>に。 二人は" 交換 "される…もっと簡単に言うと、" 元 "に戻される
 それを何度も繰り返してしまったら…やがて" 交換 "されなくなる。 つまり" 元 "に戻されなくなる。
 <可能性A>は<涙刃A>が<世界B>に住み着いて<涙刃B>は<世界A>に行けなくなり、そのまま普通の時を過ごす。ということは" 交換 "の法則が発揮されないので<涙刃A>は元いた世界に戻れなくなる。
 <可能性B>は<涙刃B>が<世界A>に住み着いて<涙刃A>は<世界B>に行けなくなり、そのまま普通の時を過ごす。後は同じ法則。
 つまり、ほぼ真逆の可能性。 共通する点は…住み着いてしまったら帰れないところ、と、もう一人の自分に会ったらびっくりするところ。

 根本的には一緒だけど、話を別視点から見てみる(仮説B) 仮として、<世界A>に<涙刃>がいて、 <世界B>には私の存在だけどまったく別の<他人>がいると…後はさっきの話と同じ。 あまりにもオカシイものだ。

 他にも仮説はいっぱい存在するのだが…考えすぎた。 頭痛がする。
 今日は早く寝よう。


 翌日。

「なあ、美燦灯」
「え?」
 いきなり左隣の席の男の子…祐一さんが話しかけてきた…のかな? こっち向いてるし…たぶん、あの…先生のことをお母さんと呼んでしまったときと同じ…かな。
「…あれ?美燦灯じゃない?」
 …照れ隠しと判断しても宜しいのでしょうか? 祐一さん。
「ここは…炎粉美燦灯の席じゃないっけ?」
 …照れ隠しと判断します。ごめんなさい、祐一さん。「紛れもなく、私の席ですよ?」
「あれ? ……そう…か…?」
 …あるいは記憶喪失じゃなくて、他人の概念が入り込むことによって発祥する記憶生成…? …可哀想です、祐一さん。


「今日は月の始めだから、情報収集するぞー」
 あ、そういえば……。
 気づいたときには、時、既に遅し。 今回はどんな言い訳をすれば…。
「……次!関口!」
 考えてる内に物事は進んでいく。
「……次!高谷!」
 …ああ、祐一さんのように自分を曝け出すことが出来る人間なら…。と、毎度毎度考える涙刃だが、今回はその考えはちょっぴり薄まることになった。
「……あの、あれ…忘れました」
 ……どうしたのでしょう。 祐一さんが言い訳するなんて滅多に…いえ、今回は本当に忘れた…という可能性が強いかも…。

 そしていつものように完璧にさらりと言い訳を言う涙刃の姿があった。

「ふう…やっぱり疲れます……」
 席に戻ったときに、また左隣の…祐一が話しかけてきた。
「う…涙刃…」
「はい?」
「今日の放課後……話があるんだけど…」
 そんなに改まって…どうしたのですか?と言いたかったけど、言えなかった。 「はい…」と答えたら
「…ありがとう」との返事。
「ちょっと、学校の門で待ってて」



 そして、放課後。

 一分、二分、三分、と経ったところでやっと祐一さんが来た。
「……涙刃?」
「あ……祐一さん」
「…うして………所に………じゃないや。 昨日、本当に忘れてて…ごめん」
 前半部分は聞き取れなかったけど、追究するつもりもないので、気にしないようにした。
 だけど…気になってしまう部分が一つだけ。
「いえ…それは別に気にしなくても大丈夫です……ところで、お話はそれだけですか?」
 そう。 約束した二人きりでの会話内容がこれだけだと、寂しいような…と考えてしまう。
「うん…? 一応まだあるけど……え?」
 良かった。 なぜか安心した。
「まだあるのですね。どうぞ、話して下さい」
「えーと……うーん…そう、なんでこんな所にいるんだ?」
 …でも、安心の雲はすぐに曇った。
「なんでって、祐一さんが
「話があるから、放課後、門で待っててほしい」って…」
 祐一は急に顔色を悪くして、体をふらふらと揺らしていた。 今にも倒れそうなくらいに。
「ぼ…僕は今日、涙刃に会ってないんだ。 そんなことは…絶対にない」
 彼の言っている、言葉の意味が理解出来なかった。
「…? 私は祐一さんに会いましたよ?」
 実際に、この目でちゃんと祐一を見たのだ。 間違いない。
 …またど忘れでしょうか。

「…涙刃の席にはアイツがいたのに…」

 ちょっと小声だったけど、たしかにそう聞こえた。
 「あいつがいた」この発言は……。
 そのとき、頭に何かが入り込んでくる感覚がした。

「…あいつ…炎粉…美燦灯さん…?」
「うん、美燦灯………………」

 炎粉美燦灯(ほむらみさと)…高校二年生…私の…代わり…?
 何故かは知らない。 彼女の、炎粉美燦灯の、全てを知ってしまった。
 会ったこともないのに、容姿とか、性格とか…全部。

 この矛盾だらけの話は…もしかしたら…。

「……なんで" あいつ "だけで?」
 …ここは正直に答えるべきなのか。 いや、でも、どうやって説明すれば良い? いきなり、概念が……ううん、これじゃダメ。
 そうだ。さっき祐一さんが言ってたから。これで良い。
「え……今日の朝、急に
「ここ、炎粉…炎粉美燦灯の席だよな?」って…」
 違う。 これもダメだった。 辻褄が合わない。
 ……仕方がない。このまま…。
「祐一さんが聞いてきましたから…」
 その言葉を言い終えると、祐一は
「………わかった。話はもう終わり」
 と言って、振り向いて走っていった。
 何に気づき、どこに行くのだろう?
「…ゆ、祐一さんっ?」
 叫んでも、戻ってはこなかった。
 後ろ姿を見ていると、" 祐一さん "は一生戻ってこない気がした。 …たしかに戻ってこない方が良い。 けど、…戻ってきてほしい。 そんなことも思った。



 私は、軽くオカルトマニアなのかもしれない。
 世界をもっと良く知って、色々なことを体験したい。
 …でも、自分だけの為に世界を壊すわけにいかない。

 百年後には…普通に楽しめる世界になってたら…良いな。


 その日から三日経っても、" あの祐一 "とは会えなかった。 ……理解している人なら喜んだ方が良い。
 涙刃も理解している人物に当てはまるが、あまり喜べなかった。
 次にこんな体験をしたときは…世界中に知らせよう。
 それを最後に、手を合わせて願い。 頭の中の曇った雲が、消える感覚がした。



「……? 私は…?」



 適当に、ニュースを見てみた。
 涙刃の好きそうなオカルト番組に出てる人が失踪したらしい。
 オカルト番組…? いつやってたんだろ。見たかったなあ。 そんな場違いなことを思ってた。
 失踪者の名前は、ハウル=ナメサミ。 写真では日本人に見えるけど…偽名?芸名?


 どっちにしろ、変な名前。 そう思った。


また意味不明な結果で終わっちゃいました…けど。話を繋げて謎を解明すれば、意味は理解出来るんじゃないかと思います。是非、「パラレルワールド」の方も参考にして推理して下さい。













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