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史上最大のショー

作者:火河智数
空想科学祭2009参加作品です。
コールドスリープから目覚めたオレたちは、コンピューターのマニュアル通りにしたがって配置についた。
「あっという間の五年間でしたね」

「でもまだ眠いな。もうちょっと寝たかったな」

「艦長、それをいっちゃいけませんよ」

「ただのジョークだよ、副艦長」

オレがそういうと副艦長は笑った。まわりにいた乗組員もつられて笑った。

「地球を立って五年だな……」

しみじみとオレはいった。オレのまわりに集まった乗組員たちもだまってオレの話しを聞いた。
無理もない。
オレたちは、ある使命があった。
それを成しとげなければオレたちの故郷である地球がなくなってしまう。
そのことを考えると、五年間、コールドスリープで眠っているあいだ、オレたちの乗っている宇宙戦艦はコンピューターの自動運転で目的地までついた。
地球に落ちるいん石を破壊するために。



このいん石が発見されたのが五十年前。
アメリカの天文台のコンピューターが見つけた。
最初はだれも気にしなかった。地球より遥かかなたのいん石のことなどだれが気にするのか?
ひとりの大学生がこのいん石に興味をもって、いん石をコンピューターで調べたところ、大変なことがわかった。
大学生はすぐに教授にこのことを報告した。
大学生のいうことにうたがっていた教授だったが、コンピューターのデータを見ておどろいた。
このあと、コンピューターはいん石についてくわしく調べた。
わかったことはいん石の大きさで、アメリカのテキサス州よりもすこしちいさいこと。いん石の起動は地球にぶつかるのはあと四十年ごろだとわかったことだった。
このニュースは、またたくまに全世界に広まった。
神様に祈る人々や暴動にはしる人々がいて、世の中はパニックになった。

“それではダメだ。あきらめるな。まだ四十年の時間がある”

これはだれだかわからないが、ネットにこんな書き込みがあった。
そうだ。まだ四十年もあるではないか。そして人類は国家・人種をこえて団結した。
四十年という長い歳月だったが、いん石を破壊するというのはあまりにもみじかい時間だった。
これまで人種が宇宙へ飛んで、もっとも長い距離は月だ。それもロケットで月まで飛んでいくというアポロ計画だけだった。
はっきりいって無謀だったが、人類はがんばった。
地球にいん石が落下するまで二十年がたったころになって、五機の宇宙戦艦ができた。
たった五機であるが、いまの人類の技術では精一杯だった。
この五機の宇宙戦艦が人類の希望でもあった。
五機の宇宙戦艦はいん石を破壊するために宇宙へ飛び立った。
いん石と地球の距離は長くて、コンピューターの計算によれば五年はかかるだろうとでていた。
そんな年月がかかっては艦内の乗組員の士気が下がるし、乗組員の年をとるのも問題だったが、コールドスリープの発明によって問題は解決した。
コールドスリープとは、人工的に人を冬眠させる機械で実用化は不可能とされていたが、いん石の落下のおかげで、コールドスリープの実用化が進み、宇宙戦艦に搭載された。
五機の宇宙戦艦はすべてコンピューターが管理されている。コールドスリープで休眠している乗組員たちの体調をコントロールや戦艦のメンテナンスをおこなっているから、いん石の破壊地点に到着するころには、コンピューターの自動制御装置で乗組員がコールドスリープからおきるシステムになっている。


コンピューターにおこされたオレは、いん石の破壊準備に取りかかった。
オレは五機の宇宙戦艦の五番目の艦長である。
オレは乗組員たちにいん石の破壊を指示し、乗組員たちも地球で訓練されたとおりに準備をした。

「艦長、この記録映像のカメラはどこに配置をすればよろしいでしょうか?」

「なんだそれは? オレは聞いてないぞ?」

「おかしいですね。ちゃんといん石の破壊のシーンを撮るようにいわれたのですが……」

オレはすぐにコンピューターに撮影のことについてたずねた。オレの近くのテレビモニターのひとつから、コンピューターの音声が聞こえた。

「この映像は、地球のリアリティ番組を製作しているテレビプロデューサーからの依頼です。艦長には、あなたの戦艦にいん石を破壊する映像を撮ってほしいのです」

オレの戦艦にいん石の破壊を録画しろというのだ。
オレはだまってテレビモニターを見た。

「こんな映像は二度と見られないわけです。まさに史上最大のショーではないでしょうか。それでは艦長、ちゃんと撮ってください」
コンピューターのテレビモニターの音声が終わると、ぼうぜんとしているオレに副艦長がいった。

「契約ですね。あの番組の製作会社も宇宙戦艦のオーナーのひとつというわけです」

「スポンサーのいうことか……」

「そういうわけなので、どこにカメラを置くかはコンピューターがわかっているはずです」

「わかった。副艦長、コンピューターの指示にしたがって、手のあいている乗組員にカメラを置くように」
「わかりました」

副艦長が自分の任務にもどった。
オレも艦長としての任務についたが、すべてコンピューターが管理し、処理してくれるので、艦長の仕事はほとんどなかった。

「そろそろポイントにつきます。乗組員たちは配置についてください」

宇宙戦艦のコンピューターがいった。艦内に緊張感が走った。
一番機と二番機の宇宙戦艦がいん石に攻撃をした。
ミサイルにいん石をぶつける二機の宇宙戦艦。

「艦長、これではあのいん石もひとたまりもありませんね」

「こりゃ、出番がないな」
若い乗組員たちが、楽観的にオレにいった。
オレはちがった。
テレビモニターにうつるいん石は二機の宇宙戦艦には効果はなく、キズひとつついていなかった。
ほかのテレビモニターを見ていた乗組員のひとりが悲鳴をあげた。
一番機の宇宙戦艦がいん石に当たって、木っ端みじんになったのだ。
二番機の宇宙戦艦もいん石から逃げようとしたが、いん石に引きよせられるように二番機がいん石に近づいてぶつかった。
乗組員たちの表情がかたまった。
三番機の宇宙戦艦がいん石に弾幕を張って応戦をしたが、むだに終わり、三番機もいん石にぶつかり、三番機も失敗した。
四番機の宇宙戦艦は、いん石に攻撃せずに逃げようとしたが、四番機に異変がおこった。
四番機がいん石に向きを返り、いん石に攻撃した。

「たすけてくれ!」

四番機の宇宙戦艦の艦長から連絡がきた。それは悲痛なさけびだった。

「どうしたんだ! 逃げたのではないのか?」

「どうやらそれがだめなんだ。コンピューターが……コンピューターが、戦艦を勝手にもどして、いん石に攻撃しているんだ」

「何とかならないのか」

「それが出来ないんだ。どうやら逃げられないようにプログラムされているらしい」

「ハッキングも出来ないのか?」

「できない。コンピュータールームに入ろうとした乗組員たちが、みんな殺されたんだ」

「コンピューターにか!」
「そうだ。乗組員たちはコンピューターのトラップに引っかかって殺された。もうどうすることもできない……」

四番機の連絡が途切れた。多分四番機のコンピューターが切ったのだろう。
乗組員たちは四番機の宇宙戦艦の最後を見た。
四番機は所々で爆発していた。それは四番機の乗組員が自殺をしているみたいだった。
四番機もいん石に突っ込んでいった。
四番機の最後を見たオレは何もいえなかった。副艦長も乗組員たちも何もいえなかった。
つぎは自分たちの番だからだ。
逃げようとしてもコンピューターがいん石に突っこむようプログラムされているから逃げられない。だったら最後まで戦おう。
オレはそう決めた。
オレは乗組員たちにそういおうとしたとき、いきなりコンピューターのシステムがダウンした。艦内は真っ暗になったがすぐに明るくなった。
突然、艦内に耳が痛くなる音が聞こえた。
オレをふくめ、副艦長、乗組員全員がどこから聞こえてくるかわからない音に苦しんだ。
なぞの音はまだ聞こえているが、オレや副艦長、乗組員たちは苦しんでいたのがウソのように平気になってきた。

「だいじょうぶですか?」
モニターからかわいらしい声が聞こえた。
モニターを見ると、イカが写っていた。
イカの宇宙人がオレたちにしゃべりはじめた。

「いまはだいじょうぶだが……。あの音はなんだ?」
「あの音は、あなたたちの宇宙戦艦のコンピューターを破壊する音です。この戦艦のすべてのコンピューターはつかいものになりません。それと、わたしたちの言葉がみなさんにわかるよう、脳に刺激をあたえたのです」

「なぜ、オレたちにそんなことを……」

「このいん石をあなたたちのコンピューターにいん石を破壊するのをやめてほしかったからです」

「でもそうしなければ、オレたちの地球がいん石にぶつかるじゃないか」

「それが目的なのです」

イカはいった。オレには理解できなかった。

「みんな、惑星にいん石が落下して木っ端みじんになるのを楽しみにしているのです」

「みんな? みんなというのはだれなんだ」

「いまからこの宇宙戦艦をうごかしますから」

戦艦が勝手に動きだした。どうやらイカの宇宙人が、オレたちの戦艦をハッキングして動かしているみたいだった。
連れてこられたのはいん石の後ろだった。そこにはたくさんの宇宙船があった。
「ここのひとたちも、星を破壊されるのを見にきているのです」

「どーもです」

モニターがイカからエビの宇宙人にかわった。

「じつはですね。わたしたちもこのいん石を破壊しようとしたのです。でもぜんぜん歯がたたなくてねぇ」
「それでイカ型の宇宙人にさそわれて、いっしょに行動したのですね」

「まあ、そうですね」

照れるようにエビ型の宇宙人はいった。

「そりゃ見るのはつらかったですよ。自分の故郷が破壊されるのは」

「それはつらいですね。自分の故郷がなくなるわけですから」

「はい。とてもつらかったです。なにしろ、わたしたちはなにも出来なかったのです」

「警告とか出さなかったのですか?」

「出したかったのですが……。故郷のみんなにいん石の破壊を期待していたのにけっきょく出来なくて。故郷の星に、出来ませんでしたと連絡をするのも……」
エビ型の宇宙人のいうことに一理あった。オレたちもいん石を破壊出来なかったからだ。

「それにしてもあなたたちは無茶をしますね。そんな古い兵器で、よくいん石を破壊しようとしましたね」
オレはエビ型の宇宙人に、五十年前のことを話した。すると、エビ型の宇宙人は笑いころげていた。

「あなたたちは、そのコンピューターにだまされていたのですよ」

「だまされた? コンピューターは完ぺきのはずでは……」

「そのコンピューター。あなたたちの星が破壊されると前からわかっていたとちがいますか?」

「そんなバカな……」

「あなたたちがいん石に攻撃をしにむかうころには、コンピューターは逃げようとしているにちがいありませんよ」

エビ型の宇宙人の話しを聞いてもオレは信じられなかった。オレたちは、コンピューターを信じてここまでやってきたのだ。
それじゃオレたちは、コンピューターにまんまとだまされたというわけか?
オレはだんだん腹がたってきた。
この怒りはオレだけではなかった。副艦長も乗組員たちもいっしょだった。

「どうします。これからわたしたちといっしょに行動しませんか?」

「そのほうがいいですよ。どっちみち間に合わないのですから」

「それにあなたたちはコンピューターにだまされたのですよ」

「そうですよ。いっしょにいきましょう」

イカ型やエビ型の宇宙人のほかにりヒツジや犬の顔をした宇宙人や、カバやゾウみたいな宇宙人など、オレの想像を超える宇宙人たちがいた。でも、オレたちみたいなヒト型の宇宙人はいかなった。

「どうします? 毛のない宇宙人さん」

クマ型の宇宙人がオレたちにいった。
そうだそうだ、とニワトリ型やスカンク型やほかの宇宙人たちがいった。
宇宙人たちはオレたちをめずらしい目で見ていた。どうやら体毛ののない宇宙人を見たのがはじめてだったみたいだ。

「艦長どうします?」

副艦長がオレにいった。
オレは決まっていた。

「我々宇宙戦艦も、このいん石の後ろにつき、あの宇宙人といっしょに行動をする」

オレがそう宣言すると、艦内に大きなかん声が上がった。みんな、このことをまっていたようだった。

「そういうわけだから、オレたちもついていっていいか?」

「もちろんですわ。みんな大かんげいですわ」

イカ型の宇宙人はいったので、オレたち宇宙戦艦もいん石の後ろにまわった。
地球のコンピューターはまだ知らないだろうか?
いや、コンピューターはこのことを知っていて、自分だけ助かるように、人類をだますだろう。
オレはイカ型の宇宙人に質問した。オレはイカ型の宇宙人が発したあの音のことについて聞いた。
地球に近づいたら、あのコンピューターをクラッシュさせる音を流せるかとイカ型の宇宙人に聞いたら、かんたんにできるといった。
「地球にあの音を……」

「そうだ。これはむだ死にした宇宙戦艦の仲間たちの仕返しだ」

オレは副艦長にいった。これでコンピューターに復讐をしてやる。
オレたちののった宇宙戦艦は、ほかの宇宙人たちの艦とともに、いん石の後ろについていった。
このいん石の後ろにいる宇宙人たちも、乗ってきた宇宙艦でいん石を破壊するためにやってきて失敗したのだろう。
だが、自分たちの兵器が役に立たなかったのであきらめた宇宙艦や、オレたちみたいにだまされていん石に向かった宇宙艦もいたのだろうとオレは思った。
コンピューターは、ほんとは五十年以上前にこのことを知っていたのかもしれない。

“それではだめだ。あきらめるな。まだ五十年の時間がある”

むかし、だれかわからない書き込みをして人類を勇気づけられたが、あれはコンピューターの自作自演かもしれない。

「艦長、地球にいるほかの人類を見殺しにするのですか?」

「副艦長。地球はもうコンピューターに支配されているだろう。もしかしたらコンピューターは、人類を滅ぼしているだろう」

オレたちの目標はコンピューターを破壊すること。イカ型の宇宙人にコンピューターをクラッシュさせる方法も教わった。



オレたちはもう一度コールドスリープにはいった。
コンピューターがクラッシュしたので、カニ型の宇宙人が修理をしてくれた。
今度のコンピューターはオレたちの命令を聞くようにしてくれた。
今度目覚めときは故郷であった地球だ。
そしていん石が地球にぶつかる前に、地球にあるすべてのコンピューターをクラッシュしてやる。
地球をうしなうことは悲しい。だか、コンピューターに復讐することを夢見て眠りにはいる。
目覚めたら、コンピューターにあの音を聞かせてクラッシュさせる。



故郷である地球はいん石で破壊されなくなるだろう。これをコンピューターに見れないだろう。
だがオレたちが代わりに見てやる。地球かいん石に破壊される史上最大のショーを……。
九月中旬に出す予定でしたが、父親が倒れたので遅れました。いまは徐々に回復に向かっているので大丈夫です。それにしてもSF小説は難しいですね。

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