#7
娘が、急にぺたりと地面にひざをつき、顔をおさえているのだ。
「どうした、急病人か?」
駆け寄ろうとする小見尋を樹理が止めた。
「たぶん、大丈夫よ」
「どうしてわかるんだ?」
「ただ……、なんとなくかな」
「なんだよ、それ?」
四人の耳に母と娘の会話が聞こえてくる。
「ど、どうしたの? どこか痛いの?」
娘は首を振っている。目からあふれる涙の理由を本人も理解できないでいるらしい。
「わからない、わからないよ。なのに涙が止まらないの?」
(なんだろう。思春期にありがちな突発的な感情の乱れだろうか? 人ごみに酔ったか? それともパニック障害とか?)
娘は母親に肩を支えられ、ふたたび立ち上がった。彼女がふりむき、その顔を小見尋も見た。
(なんだろう? どこかで会ったような)
小見尋は既視感を感じた。四人と向き合う少女も小見尋だけを見つめている。目には大粒の涙。ハンカチでふいたばかりなのに、溢れて止まらない。
そのとき、小見尋の脳裏に花火のような光が走った。
一人の少女、いや幼児と言っていい年齢の女の子がいまと同じように涙を流している。背景が暗いのは風景を伴わない記憶だからか? それとも、暗い場所に一人置かれているからなのか。
(このイメージ、この子と同一人物か?)
少女はなにか言いたそうな、でもなにを言っていいのかわからないといった表情で、やがてあきらめたように歩き出した。
四人も再び歩き出し、親子は雑踏に消えた。
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