#3
「そんなことより、落ち着いたんだったら服を買いにいくわよ」
(そういえば、デート用の服なんて持ってないや)
少年はまだこのリビドーの高まりから解放された訳ではないのだが、下の階には家族もいるし、不埒なふるまいに及ぶこともできない。
「美容院にも連れてった方がいいかな?」
樹理は両手の親指と人差し指でファインダーを作って、片目を閉じた。
「んー、まぁ、髪の長さはそんなもんでしょ。明日出かける前にわたしがセットしてあげる」
彼氏のファッションは樹理の沽券に関わる問題らしい。
いくつかの店をのぞきながら、最終的にデパートで服を買うことになった。
「いいって、ぼくが払うって」
そう言う小見尋を押しのけて、樹理は財布からクレジットカードを取り出した。
「いいのいいの。わたしのためにお洒落するんだし、あんたとわたしじゃ小遣いの額が違うもんね」
高校生がクレジットカード? レジで先に会計をしていたサラリーマンがぎょっとした顔で二人を見る。
樹理の父親が一族の出世頭と前にも書いたが、もっとはっきり言うと樹理はセレブなのだ。
お金の使い方ひとつも勉強だと父は考えているらしい。
男物の服を女子高生にカードで決済させている。こちらを見る店員の目が冷ややかに感じたのは、小見尋の妄想だろうか?
口元こそにこやかだが、なにか詮索されているような気がする。
父は樹理のカード明細でなにを買ったかチェックしていて、使う金額については文句を言わないそうだ。
ただ、しょうもないもの、センスの無いものを買うと、ぶちぶちと小言を言われる。
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