#3
『じゃあ、明日の午前中に打ち合わせにいくから』
樹理がそう言って電話を切った後、彼はすぐに自慰をした。
昨夜だけじゃない。思春期に入ってからというもの、何度も何度も想像の中で樹理を犯していた。
彼女の顔を見るたびに罪悪感に駆られ、そしてそれが引き金となって同じことを繰り返す。
そして中学時代、みんなから好かれていた樹理。
「オミ、またラブレターもらったよ」
男女分け隔てなく好意をもたれている樹理だったが、やはり告白や手紙をもらうことは多かった。
「ねえねえ、読んでみて。どう思う? どれぐらい本気かな、この人」
彼女はもらった手紙を彼に読ませ、告白してきた男の台詞を舞台俳優顔負けの演技力で再現してみせた。悪意無く、人の純情をもてあそぶ。
そう。こういうところ、樹理という少女はけっこうひどいやつなのだ。
(樹理、考えたことは無いのかい? 目の前の男が、自分によこしまな想いを向けて、暗い喜びに耽っているのかもしれない、と)
思春期の恋というものは、欲望と愛情の境界線が無い。
中学・高校生男子の劣情パワーをなめてはいけない。この膨大な思春期の性欲をコントロールするためには、スポーツであれ、文化・芸術であれ、エネルギーをほかの目的に転化させることが必要だ。
昨夜も妄想の中で樹理に対して陵辱の限りを尽くした。
彼の手が蛇のように彼女の体にからみつき、彼女は苦悶の吐息をあげた。
夢の中の樹理は、小見尋の欲望の餌食にされて泣きじゃくっていた。
いまは無邪気な笑顔を浮かべている。
「ごめんね。変なこと頼んじゃって。他に頼れる人がいなくてさ」
樹理は、彼の正面に腰を下ろした。
小見尋は中学校時代、学校へ行くのが苦痛だった。
樹理に対する劣情で、夜な夜な級友たちが、同じ行為に耽っているかと思うと、学校の男子を一人残らず、殺してしまいたい衝動に駆られた。
殺意を必死に押さえて授業を受けていた。
「ふざけんな、樹理をおかずにしていいのは、ぼくだけなんだぞ」
もちろん、誰から許可を得たわけでもないが。
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