#2
スタバのフロアで隅の席に向かう四人。
聡子は、『委員長』タイプのまじめそうな女の子だ。
別に眼鏡をかけてるわけでもないし、髪型もおさげではない。けれど真ん中分けの日本的な弥生美人。
春香は、樹理とはまた違ったタイプの元気あふれる快活そうな女の子。なんとなく南国生まれを連想させる。
男子校の級友たちは、小見尋がこうして他校の女生徒に囲まれているなどと、想像もできまい。
少し緊張した小見尋は、コーヒーに口をつける。エスプレッソに冷たいミルクをたっぷり注いだアイス・ラテ。
深夜に樹理から電話をもらった後、一睡もできなかった。
「樹理には本当は恋人がいなくて、ぼくが樹理の恋人」
うわごとのように繰り返すたび、テンションがあがり続けている。
たとえ芝居とはいえ、夢のような申し出に鼓動は高まるばかり。眠れるわけがない。
(ぼくがえらばれたこと。少しは期待してもいいのだろうか? それとも、男として意識していないからこそ、無難に頼めるということなのだろうか?)
そんなことを考えると、頭がさえて眠れなかった。
過去の記憶から、あらゆる姿の樹理が現れて消える。
父にしかられた小見尋に優しい言葉をかけてくれる、天使のような樹理。
彼と喧嘩して『おまえなんか大嫌いだ』と叫んだ樹理。
彼女の心がどこにあるのか。答えがでないことをわかっていながら、一晩中問答を繰り返す。
好き。嫌い。好き。嫌い。花びらの数で占うのと大差ない問答だ。
寝付けないまま夜が明け、朝早くに樹理が彼の部屋を訪れた。
「やほおー、オミ」
階段を駆け上がり、ノックもせずにドアを開ける。
「おはよう。朝から元気だね、樹理」
これが朝でよかった。夜の明ける前だったら、獣のような彼の本性を彼女は垣間みることになっただろう。
「あれ? オミ、なんか元気ない?」
「まだ八時前だから、頭が冴えてないだけさ」
嘘をついた。
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