#9
この情報はすぐに樹理にも届き、手遅れになる前に聡子の目を覚まさせることにした。
「うそ! うそうそ!!」
なかなか事実を受け入れない聡子だったが、樹理も樹理で相手の男を尾行すると、その日のうちにふたまたをかけている相手を特定するに至った。
「次の日、聡子に決定的な現場を見せてあげたら、今度はさらに違う女だったのよ!」
(世の中、不公平にできている)
樹理の学校ではこれほどさかんに男と女の事件が起きているのに、小見尋の周囲のなんと平和なことか。
「はあ、そりゃ許せないね」
小見尋の言葉は棒読みだった。許せないという言葉の意味も、樹理の怒りとはすこし意味が違う。
つかつかと男に近づき、ビンタをかます聡子。
いきなりの出来事に、ポカンとしている連れの女の子。
間髪入れずに、樹理が二発目のビンタをはなった。
「フン!」
きびすを返して立ち去る樹理の背後で三発目のほほを叩く音が聞こえた。
幸い、聡子と男との関係は、まだ『手遅れ』にはいたっていない様子だった。
「聡子もさ。早く気持ちを切り替えなよ」
樹理は、友だちをプレイボーイの毒牙から守れたことに安堵していた。
また、憎き女の敵をひっぱたいたことで、胸がすっとしてもいた。
「……」
無言の聡子。
「そのときのわたしは自分の無神経さに気づいてなかったわ」
少し反省した声で小見尋に話す樹理。
「無神経?」
たしかに独りよがりで、行動が早すぎるきらいもあるのは知っているが。
「彼女を慰めようと思って、田村悠斗のこと、けちょんけちょんに言ったのね。そうしたら聡子が怒って……」
「なんで、聡子が怒るのよ?もうあんなやつのことなんてどうでもいいでしょ」
「そうよ。女々しいわよ、わたしは……」
携帯電話のメールを打ちながら、返事が返ってくるのが日に日に遅くなってくることにも気づいていた。
どうやら、恋愛に誠実な男ではないことも薄々わかっていた。
「それでも自分で確かめたかった。もう少しの間、信じていたかった」
樹理に真実を告げられて、愕然としたのは言うまでもない。
「浮気してることも想像した。だけど、自分の恋のけじめは自分でつけたかったのに。あんたは出しゃばって……」
真実を告げられた時、だだっ子のように樹理の言葉を拒絶していた。その意味が分かった。
「いや、だからそれはあなたのことを思って、早い方がいいと……」
「恋人のいない樹理には、わたしの気持ちはわからないわよ!」
「そんなことないわよ! わたしの恋人のことは、いつも言ってるでしょ」
「あんたに彼氏がいないことぐらいわかってるわよ。あんたの彼氏みたいに潔癖で誠実な人がいる訳ないでしょ」
「そ、そんなに言うなら、こんど会わせてあげるわよ」
そういって急に席から立ち上がった樹理だった。
そのまま友人たちと別れて帰宅。どうしようかと悩んでいた。
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