全ては揃った
部屋に戻り沈黙する呉に、柴田は小さな声で言った。
「みんな、アリバイはありませんね」
「そうだね…まああってもなくても変わらないよ。動機は同じ『憎い』。そして二人には『永山隆司』が関わっている。本当に高田が憎かった人はまだいるんじゃないかな…」
独り言のように呟く呉を柴田はじっと見ていた。この人には事件の真相がわかっているんだ、と思う。水野も多分わかっている。もしかしたら、もうパズルはできているのかもしれない。
ピースは集まっている。
「もう一度、現場に行きませんか?」
「いや、行かなくていいよ」
はっきりと言い切った呉は、部屋を出て行こうとした。柴田は慌てて呉の後をいつものようについて行った。
「高島警部…」
柴田は部屋を出た途端、最悪な組み合わせを目撃してしまった。前方に立ち塞がるのは高島警部。四十代後半で頭髪の薄い、がっちりした刑事だった。
高島はいわゆる自己中心的な人間だった。いつも手柄をとって名を上げようと考えている、欲の塊のような人。そして、そんな警部と呉がそりが合わないのは言うまでもない。当人の呉はそんなことはおかまいなしに、無表情で聞いた。
「何か収穫はありましたか?」
「あったよ。それは藤本くんに聞いてくれ」
少し顔を引き攣らせた高島は、なんとか通常通りに答えた。そして足早に去っていった。
高島を見送った後、柴田と呉は顔を見合わせた。
「何でしょうか?」
「何だろうね。どうせ高田理恵、小山進一、永山萌を犯人にする証拠でも見つかったんだろうけど」
「えっ…」
「まあ聞いてみればわかるけどね」
少し遅れて姿を現した藤本刑事は急いで高島を追った。走っていた藤本は呉を見るなり立ち止まり、お辞儀をした。
「藤本くん、何がみつかったのかな?」
「はい、永山萌のペンダントのサファイヤの欠片と、小山進一のライターです」 |