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矛盾犯罪
作:樒 麻容



被害者の同僚の娘


「憎いですよ」
 永山萌。高校一年生。少し顔色が悪かったが、大きい瞳は強かった。彼女が容疑者になったのは、父親が原因だった。父、隆司が高田のミスを押し付けられ、退社。その事実は証明された。現場にあったタンスから事細かに記された手帳が見つかったからだった。しかし、事故とは直接関係はない。隆司は自らその責任を負った。それを高田は止めた。責任は自分にあるから、と。しかし、隆司は高田は将来会社の為になるからと、断として聞かなかった。退社後、高田はずっと気にしていたようだった。これからどうするつもりなのだろうか、や有難かったなどの言葉で手帳は埋め尽くされていた。
 事故直前、二人は酒を飲み交わしていた。隆司の就職が決まったからだ。いつもは飲まない隆司はビールを五杯飲み、高田が心配するほど酔っていた。そして別れてから数分後、悲劇は起きた。信号無視をしてしまい、トラックに轢かれ、即死。その三日後、後を追うように母が自殺。事実を知らなかったらしく、何度も高田が殺したんだ、と言っていたようだった。肺を患っていた弟も精神的に弱ってしまい、四日後に他界。この一週間で家族を全員失ってしまったのだった。
「それはそうだろうね。…君は家に行ったことがあるんだったね」
「はい。お正月に毎年行きました。それ以外ではお祝いとか、特別なことがあったときなど…最近では父のお葬式があった日です。父の遺留品を引き取りに母と。六日前ですね」
 確かに四日前、萌は母親と共に高田家を訪れていた。少量の遺留品を取りに。それは理恵が証言してくれた。その時の憔悴しきった母親と、怒りのこもった瞳をした萌の姿が忘れられなかったらしい。
「じゃあ、午前二時のアリバイはあるかな?」
「…寝ていました。この一週間、あまり寝れませんでしたから。十二時から七時までずっと、寝てました。それに今、家では一人ですから簡単にアリバイなんて見つかりません」
 萌は視線を落とし、ペンダントを見た。ゆっくりと触れ、目を閉じた。それに気付き、呉はゆっくりと尋ねた。まるで世間話をするように。
「あれ、そのペンダント…」
「これですか? これは父が私の誕生日にくれた、オーダーメイドのペンダントです。私の誕生日は昨日の九月十七日、弟が死んだ日です。宅配便で来たんです、これ」
 小さなダイヤモンドと砂のように散りばめられたサファイヤ。十六歳になった娘を祝うために作らせた、世界で一つの宝物だった。
「父親からの最後のプレゼント、かな」












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