挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
痛いのは嫌なので防御力に極振りしたいと思います。 作者:ユーキャン
85/166

防御特化と生産役。

「さて、ギルド対抗イベントだが……気掛かりなギルドは二つだ。一回イベントで四位、七位、八位、十位がメンバーの巨大ギルド【炎帝ノ国】と、少数だが三位、六位、九位が所属する【楓の木】」
ペインは一人で戦局を変えられるようなプレイヤーがいるとすればこの二つのギルドだと考えた。

「【楓の木】には第二回イベントで話題になってた青服の子もいるんじゃなかったっけー?あれもやばそうだよねー」
フレデリカがそう言う。
どうやばいかが明確に分かっていないのは【楓の木】の情報が圧倒的に少ないためである。
特にメイプルとカナデに関しては情報が少ない。
ユイとマイに関しては絶無である。
存在すら知られていない。

「イベント内容にもよるけどさぁ、物量で押し潰せばいいんじゃねー?最悪ペインがなんとかすればいいだろ…」
ドレッドの言うように彼ら四人の所属するギルドと【楓の木】では所属する人数が違いすぎる。
少数ギルドに何かしらの優遇があるとしてもそれを上回るだろう物量があった。

「俺らのギルドは全体的に強い奴が集まってる、問題ねぇだろ。全員に毒耐性を付けさせ、余裕がある奴は麻痺耐性にも手を伸ばしてんだ。こうなりゃ警戒するのは【炎帝ノ国】の方だろ?」
そうドラグが言って聞かせる。

「それにー、私達のギルドは生産職さん達にダンジョンに行ってもらって、装備作ってるでしょー?」
フレデリカの言うダンジョンとは三層で見つかった二つ目のダンジョンで、生産職しか入れないものの、史上初めて【スキルの付いた装備】を作ることの出来る素材が手に入るというものだった。
そこをパーティーで周回し耐性のある装備を大量に用意しているのである。

「メイプルちゃんだっけ?攻撃手段は状態異常と盾でしょ?後は亀?信じられないけど、極振りっぽいしー……封じ込められると思うよ」

「ふむ……取り敢えずフレデリカは情報収集を頼む。【楓の木】もきっちりな」

「ペインは心配性だねー?まあいいけどさっ!」
そう言うとフレデリカは杖を片手に部屋を出ていった。
それに続くようにしてドレッドとドラグも部屋から出ていく。
一人になったペインが呟く。

「……未知は何より恐ろしい。【楓の木】の情報がなさ過ぎだ」
彼らはクロムの装備の力を知らない。
カナデの魔法を知らない。
サリーの回避を体験したことがない。
ユイとマイの破壊力を知らない。
そして何より。

ほぼ全てのメンバーがメイプルは毒と盾により敵を倒すものだと思っている。
彼らは天使も化物も機械神もシロップが光線を吐くことも知らない。

唯一、ペインだけはそうではないのではと直感していたがそれを裏付けるものはどこにもなかった。





ペインが【楓の木】を警戒している頃、イズはギルドホームの椅子に座って、腰まで伸びた水色の髪を揺らしながらそわそわとしていた。
イズの耳にも新ダンジョンについての話が入ってきていた。
いつもは外に出ることの少ないイズもこれには行かねばと心を動かされた。

「うー…メイプルちゃんかサリーちゃんに借りたいところだわ……」
借りたいとはもちろんシロップと朧のことである。
二匹がいればダンジョン途中でやられてしまうことはないだろう。
デスペナルティとしてゴールドと一部アイテムのロスト、また一定時間ステータスダウンもかかる。
それは避けたい所だった。
ただ、この時はちょうど二人ともギルドにいなかったのだ。

そうして待っていること五分。
たった五分でイズは我慢の限界に達し、インベントリに可能な限りの戦闘道具と採取用のアイテムを持って飛び出した。


そうして機械で飛行すること五分。
イズはダンジョンに飛び込んだ。

「さて……採掘ね」
イズは見つけた鉱石や結晶をガンガン採掘していく。
生産職は武器スキルや火魔法などの魔法を一切覚えることが出来ないかわりに専用のスキルを覚えられる。
それは【鍛冶】だったり【調合】だったりするわけだ。
ただ、それらは工房でしか使えない。
例外として【調合】はレベルⅤまでに作成出来るものはどこでも作ることが出来るが、当然素材が必要であり、ものによっては持てる数に制限がある。

例えば生産職の貴重な攻撃手段である爆弾は工房でしか作れず、持てる数が五個と少ない。
ポーションは二番目に回復能力の低いものまでしか作れない。

また、武器攻撃でのダメージが減少するという面倒臭いおまけつきだ。
その代わり、【鍛冶】などのスキルで装備を完成させた際に経験値が入る。
つまり生産職に戦闘は厳しいということである。

生産職とはそれでも構わないと生産にのめり込んだ者達なのだ。
もちろんイズも例外ではない。
むしろ、イズは生産界のトップである。
生産に関わるあらゆるスキルを上げるため発売日からひたすら鉱石を掘り、鍛冶をし、裁縫をし、栽培をし、調合をし、時には徹夜しつつのめり込んだ。
時間は強さに変わり、生産能力では右にならぶものはいない。

その代わりに生産職の貴重な攻撃スキルである【投擲】のレベルが低めである。
【投擲】とはナイフなどのアイテムをぶん投げることで与えられるダメージを増加させるスキルである。
イズは素材は取ってきてもらうに徹していたので、【投擲】が低くなったのだ。

「こっちには釣りスポットもあるのね」
イズは釣竿を取り出すと釣りを始める。
釣れるのはこれまた見たことのない素材をドロップする魚達。
イズの目は無邪気な小学生並みにキラキラと輝いていた。
イズの釣竿は自作である。
ここでの素材は【スキル付き装備】を作ることを可能にしたが、それはあくまでも【装備】である。
一部アイテムには以前からもスキルを付けることが出来ていた。

イズが持つピッケルや釣竿はレアドロップ率が上がり、かなり破損しにくくなり、アイテムドロップ量が上がり、採取速度が上がりと凄まじい性能である。
これらはイズが大量の素材と時間を費やして作った物であり周りの生産者との差を広げている部分だった。

イズは釣りを終えると更に奥へと進んでいく。

「モンスターが全然出てこないわね。私としてはありがたいけどね」
生産者しか入れないダンジョンに生産者では倒せない敵ばかりを配置するわけにもいかない。
その延長線で、ここはモンスターが特定の場所でしか出なくなっていた。
ボスモンスターとだけしか戦わないことも可能である。

イズは途中の部屋で背中に結晶を生やしたモンスターと出会ったが、戦闘を避けた。
理由はボスの情報を既に持っていたからである。
ボス部屋には入った瞬間から脱出用の魔法陣が輝いており、ボスを倒さなくても脱出することが可能だということも、ボスが纏う結晶が目当ての素材であり、ピッケルで常に採取出来ることも知っていたのだ。
そのため、ピッケルを使えば良いと考えられたものの余計な消費は避けておいたのである。

そうして雑魚との戦闘を避けて採取を繰り返しているうちに辿りついたボス部屋の扉をぐっと押し開け中に入る。

部屋は全てが美しく輝く白水晶に覆われていた。
そして部屋の奥で丸まっていた、背中に同色の水晶を蓄えに蓄えた大きなトカゲがゆっくりと起き上がった。

「背中の水晶…もらうわね?」
そう言うとイズはピッケルを構えた。

少し裏話。
メイプルは初期案では速度極振り。
イベント中に悪食ですれ違うプレイヤーやモンスターをかじっていき【食人鬼】と呼ばれる。
ゲームを始めた理由はゲーム内なら食べても太らないから。

こんな話もあったのでした。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ