挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
痛いのは嫌なので防御力に極振りしたいと思います。 作者:ユーキャン
84/148

防御特化と継承。

メイプルの大盾がその力を発揮してしまったために、一時的に弾丸を飲み込んだ代わりに【悪食】を失い、その後メイプルは壁へと弾き飛ばされる。

「うわっ…!ノックバックがっ!?」
青白い弾丸は強力なノックバック性能を持っており、避けるスピードのないメイプルを残骸の山に押し付ける。
ただ、メイプルの装甲を貫くことは出来ておらず押し付けただけだ。

「あー……動けない……」
体を撃つ弾丸は心地よい刺激を与えるだけだったが、そのノックバック性能により動くことが出来なくなってしまった。

「【毒竜ヒドラ】!」
取り敢えずメイプルが機械神に向けて毒竜を撃ち込むものの、機械に毒は効かなかった。毒竜本体が与えたダメージのみで毒による追加ダメージがなかった。

「うげー……どうしよう…」
【悪食】は既に失い、【暴虐】はここに落ちてくる際に使ってしまった。
シロップはメイプルのスキルの範囲外となり同様に無傷で落ちてきていたため現在は指輪の中だ。
迂闊に出せば弾丸の餌食である。
残っている攻撃的な能力は効き目の薄い【毒竜ヒドラ】と【悪食】の結晶と【捕食者】と【滲み出る混沌】くらいである。
メイプルは超高防御かつ高い瞬間火力を持つものの、明確で変えることの出来ない弱点がある。

それは燃費の悪さである。
メイプルのスキルは装備が持つMP消費ゼロの能力によって支えられており、それは有限なのだ。
メイプルの力は長く維持出来るものではない。スキルを使えばその分だけ攻撃面は弱体化し続ける。

スキルを使い果たしてしまえばモンスターはメイプルを倒せず、メイプルもまたモンスターを倒せないという泥沼である。
今回は毒竜戦でのような捕食も出来ない相手なのだ。
錆びついた機械は食べられない。
そんなことは分かりきっている。

「【身捧ぐ慈愛】!」
貫通攻撃に不安はあるものの、メイプルは【捕食者】とシロップの攻撃を頼りにするしかなかった。
毒竜ヒドラ】の効果が薄いため、メイプルは装備を変更する。
頭にティアラ、手には純白の短刀を装備してポーションでHPを回復させる。
これでメイプルのHPは650。
防御力は低下したものの、それでも弾丸はマッサージにしかなっていない。

「よし……【捕食者】!」
メイプルは化物二匹、続いてシロップを呼び出すと深呼吸して集中する。

「シロップ!【大自然】!」
メイプルの声に応えたシロップによって蔓が地面から伸び、大地が盛り上がる。
突如現れた障害物によって弾丸がメイプルに届かなくなる。
その瞬間にメイプルは出来る限りの速度で機械神へと向かう。
シロップは役目を果たしたため、ここで元の大きさに戻される。

だが、メイプルが辿り着くよりも先に弾丸がメイプルに襲いかかった。

「ふぅっ!」
メイプルが装備を変えた理由は何も毒竜が通用しないからというだけではない。

【身捧ぐ慈愛】内のスキル。
消費HP600の大技。

「【イージス】!」
メイプル達を包み込む光のドームは十秒間全ての攻撃を問答無用で無効化する。

【大自然】で稼いだ距離とこのスキルで稼いだ距離、これらを足してもまだ届かない。
近づけば近づくほど攻撃も激しくなるのだから、まずはそれを止めなくてはならなかった。
化物達はメイプルに向かって伸ばされた武装を食い散らかして時間を作った。
それらの武装は最初のように残骸の山から補給されるとして、それでもそこには遅れが生じる。

「【カバームーブ】!」
武装を壊させているうちに元の大きさに戻しておいたシロップを先行させておいたメイプルは、そこに勢いよく追いつくだけでよかった。
化物達を帰したメイプルは機械神に肉薄し青い光の溜まった胸の部分に手を突っ込んだ。

「この光が悪いんだよっ!」
メイプルは機械神に抱きつくようにして奥底まで手を入れる。
出来る限りその体を破壊することなく、正気に戻すために。

「【滲み出る混沌】!」
メイプルの手から飛び出した化物が胸を貫いて抜けていく。
その行動はある意味正解で、ある意味間違いだった。

そこを攻撃することで正気に戻すことは出来ない。ただ【弱点】であるその部分を攻撃することで大ダメージを与えることができ、その結果機械神の様子が変わった。

「グ……カハッ……我ハ消エル……ダガ……」
メイプルは話し始めた機械神の声を一音も聞き逃さないように耳をすませる。

「……僅カニ意識ノ戻ッタ今……託ス…勇敢ナ…者……」
そう言う機械神の胸の穴には青い光が溜まり始めていた。

「……我ノ…チカラデ……我ダッタ…コイツ…ヲ……倒…セ…」
そう言う機械神はメイプルに向けて古びた歯車を投げつけた。
それはメイプルの体に吸い込まれて消えていった。

「……眠ラセテ…クレ」
それと共に機械神の様子が変わる。
全身が青白い光に包まれ、パーツの存在しない【二代目】の装備を身に纏い空へと舞い上がり青い弾丸で攻撃してきた。
メイプルは先程と同じように壁に向かって弾かれるしかなかった。

「チカラヲ託ス…無駄ナコト…」
無機質な声が上空から聞こえる。
内容からして二代目の声だろう。
一代目の体は二代目に乗り移られて無理やりに動かされている。

「……【機械神】…」
メイプルに託されたスキル、かつての神の力。それは単純で、不思議なことなど何もない力だった。

メイプルは装備を変更。
念のためにとティアラと絆の架け橋を外し、短刀を元に戻す。

「【機械神】!」
メイプルがそう叫ぶと頭の中にイメージが浮かび上がる。
メイプルは鎧と大盾と短刀を選択した。

【二代目】がどこからか機械を創り出すことが出来るのに対し、【一代目】は材料が必要だった。

即ち。
装備を破壊し、武器を生み出す力。
当然、材料が良質であればあるほど出来る武装は強力になる。

「【全武装展開】」
静かに呟いたメイプル、その身に纏う再生する黒い装備。

それらから、夜空を切り取ったような黒い武装が次々と展開される。
大盾を持つ腕の部分からガシャガシャと音を立てて銃が現れ、背中からも木の枝が伸びるようにしてメイプルの体と比較すると大きすぎる砲身が空に向けられる。
短刀を持つ方の腕は同様の黒い刃が伸ばされ、それらを支える足腰は機械を纏い強靭になった。
胸から腹部にかけては大小様々な歯車が回転しており、顔の右半分から首にかけては歯車や配線が複雑に覆っていた。

「わ、わわっ!?な、なにこれっ!?」
驚いて全身を覆う武装を眺めていたメイプルだったが、やらなければいけないことを思い出す。

「あれを倒さないとね…【挑発】!」
メイプルは絆の架け橋を付け直しシロップを呼び出すと【大自然】で伸ばした蔓と岩石によってメイプルごと空中の二代目を何重にも包み込む。
メイプルが攻撃を引き受けているうちに空中で蔓に包み込まれた二代目は、メイプルと共に押しつぶされるようにして距離を詰めることとなった。

「……これで…逃げられないね」
一代目の力を受け継いだメイプルはつまり【三代目】だ。
産まれたての機械神は二代目に対し静かに呟き武装全てを向けた。

「【攻撃開始】」
爆音と共に全ての武装が火を吹く。
これらの武装は装備に見えるが装備ではない。
代償により威力が決まっているスキルである。
つまりそこにメイプルの【STR】値は一切関与しないのだ。
ただ、一発一発の威力はそこまで高くなく連擊に偏った武装だった。
そう、今回のところは。

蔦の檻が弾け飛ぶのと同時、一代目を包んでいた青い光は消えた。
一代目はメイプルの機械に抱えられてついに眠りについた。
メイプルは地面に飛び降りると静かに彼を彼の機械にもたれかからせた。

「…………よし」
メイプルは青い光がなくなったことを確認すると何度か一代目の方を振り返りつつ戻っていった。



メイプルがしんみりとして上へと戻っていっている頃。
とあるギルドの一室で四人のプレイヤーが話していた。
一人は【聖剣】ペイン。
一人は【神速】ドレッド。
一人はフレデリカ。
一人は第一回イベント5位。
【地割り】ドラグ。


彼らは話し合っていた。
引き入れることが出来なかった十位以内の者達について。
また気掛かりなとあるギルド、【楓の木】について話し合っていたのだった。









全身から兵器を生やして、金髪青目で天使の羽と輪があり、両脇に化物を従え、天には亀を浮かせ、毒竜と化物の口を放ち、最後には自身が化物となる。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ