挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
痛いのは嫌なので防御力に極振りしたいと思います。 作者:ユーキャン
63/162

防御特化とクエスト3。

遅れました。申し訳ないです。
メイプルは眼下に泉を捉えていた。
今回は女性が何も言わなかったため、そのまま真上までやってきたのだ。
ゴツゴツとした岩が突き立っている場所の奥地にその泉はあった。

「取り敢えず、近場に降りよう」
泉の近くにシロップを降ろすと指輪に戻して、女性と共に泉に向かう。
泉の周りはモンスターが出ないようで、何事もなく泉に辿り着けた。
女性は泉の水を汲み上げるとメイプルの方に振り返った。

「騎士様!ありがとうございます!」

「いや、本当に特に何もしてない…」

「急いで帰りましょう!」

「あ、うん。そうだね」
シロップから降りた場所に戻ると再び宙に浮き上がった。



無事に町まで戻ると女性は少女にその水を与えた。
メイプルはその光景を見守る。

「どう?」

「だ、大丈夫…心配しないで……」
少女はそう言うものの、顔色は悪く体は僅かに震えている。
大丈夫そうには見えなかった。
当然、メイプルの前に次のクエストが現れる。

クエスト【博愛の騎士3】


「うん、だと思った」
メイプルの予想通り次のクエストが発生する。
メイプルはスキル【博愛の騎士】を確認してみるものの、スキルは相変わらず名前しか表示されていない。
メイプルはそのクエストを受けることにした。

「騎士様!ありがとうございます!」

「いいよいいよ」

「遥か遠くに巨大な町があり、その辺りには、はめるだけで体を癒す指輪があるとの噂を聞いたことがあります……不確定なもので申し訳ないのですが、それを持ってきていただけますか?」

「巨大な…町?もしかして第一の町のこと?」
メイプルがこのゲームを始めた時に最初にいた町。
メイプルには巨大な町はそれしか思いつかなかった。

「ってことは…指輪ってもしかして…」
メイプルはインベントリから一つの指輪を取り出す。
メイプルが最初期に手に入れたレアドロップ。
【フォレストクインビーの指輪】だ。

「騎士様!持ってきて下さったのですね!ああ、何とお礼を言っていいか…」

「あ……これでいいんだ」
メイプルは最近は装備していなかったその指輪を女性に譲る。
指輪はレアドロップだが、二度と手に入らない訳ではない。
そのため、メイプルも渡そうと思えた。

「今はめてあげるわ…」
女性が指輪を少女にはめる。
メイプルにクエストクリアの通知が来たため、これで正しかったことが証明された。

「う、ぐっ…ガ、」

「…大丈夫?…苦しいの?」

「ぐっ……!」
少女は苦痛で歪んだ顔をしていたが、急にベッドから飛び起きると扉を乱暴に開けて外に向かって走り出した。

「ま、待って!」
女性もそれを追いかけていく。

取り残されたメイプルの目の前に新たなクエスト発生の通知が浮かび上がる。

クエスト【博愛の騎士4】

メイプルは当然それを受ける。

「取り敢えず…町の外に!」
メイプルは出来るだけ急いで町の外へと向かった。




「いた!」
町の外に出ると座り込んでいる女性の姿が目に入った。
メイプルが近寄ると女性は話し始める。

「ううっ…騎士様…!娘が……」

「どこに行ったの?無事!?」

「娘は【常闇の神殿】に向かうと…あそこは危険なのに…!」

「……私が連れ戻すよ!」

「案内します…!娘を放っておけませんから…」
メイプルとしては一人で行きたい所だったが、置いていくことは出来ないようなので仕方なく連れていくことになった。


メイプルは女性の案内に従って泉を越えて、さらに北西に進んだ場所まで来た。

そこには所々崩れている古びた神殿があった。
間違いなくこれが【常闇の神殿】だろう。

メイプルはシロップを指輪に戻すと神殿の中に入っていく。
壁と天井に囲まれた広間が一つあるだけの簡素な造りのその最奥に少女は倒れていた。
女性が駆け寄ろうとするが、その前に少女の体から漆黒の霧が噴き出る。

それはみるみるうちに人型になると女性に向かって襲いかかった。

「【カバームーブ】!【カバー】!」
女性に対して【カバームーブ】や【カバー】が出来ることは一回目のクエストで確認してあった。
メイプルは二人の間に割り込むとその攻撃を大盾で受け止める。

「……!【悪食】がっ…!」
メイプルはポンポンと勢いよくクエストが進んだせいで【悪食】が回復していないことを忘れてしまっていた。
攻撃が防がれたことを確認した謎の人型はメイプルと距離を取る。

「【毒竜ヒドラ】の使いどころは考えないと…」

「グギ…ガガガガ」

「……あれは、良くないものだよね」
メイプルは、口が無いにも関わらず不気味な声を上げる人型をモンスターとみなした。

「ギギギ……!」

「【カバー】!」
飛びかかってくる動きは単調で、メイプルの技術でもしっかりと受け止めることが出来た。
ただ、メイプルは攻撃手段が限られている。外すわけにはいかないため、慎重にタイミングを見計らう。
そのため、当然戦闘が長期化する。



そうしてしばらくメイプルが耐久していると、人型が急に頭を抱えて蹲り叫び始めた。

「グガアアアアッあアぁあア!!」
顔のパーツが無いため表情は存在しないが痛みに苦しんでいるかのようだった。
人型の腕が槍の様に尖っていく。


「っ!【カバー】」
女性に襲いかかる人型から守るために咄嗟にかばったものの、尖った両腕での攻撃は見た目通り防御力貫通攻撃だった。

「くっ……う!」
両腕の攻撃をどちらも大盾で弾くのは不可能だった。
メイプルのHPがガリガリと削られていくが、メイプルは【カバー】を止める訳にはいかなかった。
女性が受ければ無事でいられないことは明白だった。

「グガアアアアッ!ガガ…グガ…」

「え……?」
メイプルを一心不乱に攻撃していた人型が急に攻撃を止めるとメイプルと距離を取った。

「グギ…ググ…」
頭を抱えて地面に蹲った人型は次第にぼやけていき、遂には消えてしまった。

「た、助かった……?」
メイプルのHPバーは残り二割程になっていた。一発逆転のカウンターを狙っていたのだが、あのままでは危なかっただろう。

「きっと…【退魔の聖水】が効いたんですよ」

「それって…さっきの泉の…?」

「娘には…悪魔が取り憑いていたのかもしれません」
女性の言う通り、メイプルが攻撃せずとも倒せたのは【博愛の騎士2】を無事にクリアしていたためである。

あのクエストは一度も女性またはプレイヤーが死亡せずに持ち帰ることが出来れば成功となり、一度死亡すれば失敗となるのだ。

ただ、どちらでもクエストは次の段階に移る。
しかし、泉のクエストをクリアせずに大盾装備のプレイヤーが人型と戦うのは厳しいものがある。

「あ…クエストクリアだ…」
今のクエストをクリアしたものの新たなクエストは発生していない。
スキルもそのままだ。

「娘の元に行きましょう!」

「あ、うん。そうだね!」
メイプルと女性が少女の元に駆け寄り状態を確認する。
少女は死んでいるかのように眠っていた。起こそうと揺さぶっても全く反応しない。

「取り敢えず…家に連れて帰ります」
そういうと女性は少女をおぶって神殿から出ていった。

それと同時にメイプルの前に青いモニターが現れる。


クエスト【博愛の騎士5】発生。

また、【博愛の騎士】クエスト1から4での母親へのダメージが基準値を下回っているため。

エクストラクエスト【身捧ぐ慈愛】が発生しました。
どちらかのルートを選択して下さい。

「んん?」
予想外の事態にメイプルは首を捻った。



+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ