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痛いのは嫌なので防御力に極振りしたいと思います。 作者:ユーキャン
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防御特化とクエスト2。

「森が見えてきましたね。入り口があるのでそこから入って下さい」

「これは、飛んでいっちゃ駄目なのかな?」
メイプルは森の前にシロップで降りてくるとシロップを指輪に戻した。

「さあ、急ぎましょう!」

「うん!ここ…でいいよね?」
目の前には小道が続いている。
女性もこの小道を指差しているので間違いないだろう。

メイプルは小道を奥へ奥へと進んでいく。
【カバー】の範囲内に女性がいるため、守ることは簡単だった。
本来は森に来るまでにも戦闘を重ねることになるのだが、メイプルは特殊な手段によってスルー出来た。
勿論、シロップのことだ。

「【パラライズシャウト】!」
女性にはメイプルの攻撃は効果を発揮しないため、メイプルは囲まれても焦らずに、このスキルを発動させればいいだけだった。

「今は倒さなくてもいいもんね」
ただ、メイプルは通常のプレイヤーとは違いとにかく遅い。
それは襲撃される回数を増加させる。
女性に案内されて、森の中央にくる頃には悪食を使い切ってしまっていた。

「水晶の盾に変えておこう」
紫色に輝く大盾に装備を変えて、女性の後をついていく。

「あれです、あれが【生命の樹】です!」
女性が駆け寄った木は周りの木と比べると半分程の大きさしかなかった。

「何か、思ってたのと違う…」
メイプルは神秘的な光を放つ巨大樹を想像していた。

「この葉が病気に効くんですよ」
女性は葉を数枚枝から取るとメイプルに見せる。

「へぇ…そうなんだ。私も取ってもいいのかな?」
メイプルも取ってみようとしたが、見えない壁に阻まれて近づけなかった。
どうやら、プレイヤーには手に入れられない、イベント限定のアイテムだったようである。

「もう大丈夫です」

「じゃあ、帰ろう」
メイプルはシロップを呼び出すとふわふわと浮き上がらせてから巨大化させた。
スペースがなかったためだ。

「シロップー!お願いー!」
いつも通り咥えてもらうには少しシロップが高すぎた。
メイプルはしばらくどうしようか考えていたが、ついにいい案が思いついた。

木に登る訳ではない。
もちろん、ジャンプする訳でもない。

「【水晶壁】!」
足元から伸びた紫色の結晶がメイプルを勢いよく跳ね上げた。
もちろん本来の使い方ではない。

「シロップー!」
跳ね上がったメイプルの頭から胴体あたりまでをシロップが咥え込む。
周りから見た時にはさぞショッキングな光景だろう。

どう見ても空飛ぶ亀に捕食される図にしか見えない。
そのまま背中に投げてもらいメイプルは定位置についた。

「あ…あの人どうしよう…?」
メイプルが下にいるNPCを見てみようとした時、彼女は木の上から跳躍してシロップの足に飛びついた所だった。

「えええええ!?」

「行きましょう。娘が待ってます」

「は、はい」
メイプルは空を飛んでいく。
その時にふと思ったことを呟く。

「絶対あの人一人でも行けるよね…」
女性の能力なら普通に森の奥に行けるように思えて仕方なかった。


そうして飛んでいき森を抜けた時。

「はぁ…はぁ…守っていただきありがとうございます。あのままでは、私は死んでしまう所でした…」

「えっ!?き、急にどうしたの!?」
メイプルは特に何もしていない。
ただ空を飛んでいただけである。

いや、空を飛ぶこと自体が異常だったのだ。

本来、帰り道で強力になったモンスター相手に、攻撃力に欠ける大盾装備のプレイヤーがボロボロにされる筈だった。
女性の台詞は、それを乗り越えて初めて聞ける台詞だった。
こんな突破の仕方となったため、不自然な台詞になってしまった。

「騎士様は…お優しいですね」

「えっ…と…何か、ごめんなさい」
メイプルは何となく申し訳ない気分になって謝ったが、彼女が何か返事をすることはなかった。
メイプルはこの空気に耐えられそうになかったため、急いで町に戻っていった。




「よし!着いた!」
メイプルが町の前でシロップから降り、指輪に戻す。
目指すはこの女性の家だ。

「ありがとうございます!私、急いで行ってきます!」
女性は急いで走っていってしまった。
メイプルには追いつけない速さだ。

「……ゆっくり行こう」
メイプルが辿り着かなければ結局イベントは発生しないのだから、先に全てが終わってしまうということはない。
これはただの演出だった。



しばらく歩いて、メイプルが女性の家に辿り着く。
扉を開けると、丁度女性が少女に何かを飲ませているところだった。
濃い緑色の液体が器に入っている。


メイプルとしては、見るからに苦そうなそれは飲みたくないものだった。
飲んだ少女も顔を顰めている。

「……どう?」

「けほっ、けほっ…うん…ちょっと楽になった……ゴホッ、ゴホッ」

「酷い咳…!ああ!どうしたら!」
女性が嘆く。
その時、メイプルの前に青いモニターが現れた。

クエスト【博愛の騎士2】

新たなクエストが発生した。
当然メイプルはこれを受ける。

「騎士様!まだ助けてくださるのですか?」

「え、うん…流石に放っておけないよ」
今もゴホゴホと咳をする少女は、容態が悪くなっているように見えた。

「では…【退魔の泉】に連れて行って下さい!場所は町を出て北西です!」

「うん、分かった」
そう言うと女性はまた先に町の外へと行ってしまった。

「ん?…スキル取得してる」

【博愛の騎士】


スキル名はスキル欄に確かに追加されているものの効果が無い。
あるのはスキル名だけだ。

「んー?効果が無い?…イベントがまだ終わってないから?」
ならば尚更ここで投げ出す訳にはいかないと、メイプルは町の外へと向かった。




「北西ですよ!」

「おっけー。北西だね」
メイプルはもはや当然になった、空飛ぶシロップという移動手段を使って北西へと向かう。
周りにいたプレイヤーも、見たことのある者やその噂を聞いた者が増えてきたためか、驚かなかった。

何だ、いつものメイプルか。
そう思うようになっただけである。

非日常に出会い続けるうちにそれは日常の一部となる。
プレイヤー達が、ああ今日もメイプルが飛んでいるなぁ、などと思うようになる日もそう遠くないかもしれない。


「2では終わらないよね…3もあるよね…」
メイプルが呟く。
2というナンバリングで終わるのは中途半端過ぎるためないと感じていた。
クエストの内容も前回と大して変わっていない。
今回で終わりそうになかった。

「あっ!?【悪食】回復してない!」
メイプルはシロップの背中の上で気付くことが出来た。
戦闘になってからでは危なかったかもしれない。

「うーん…やばそうだったら引き返すしかないかなぁ…」
女性を死なせてしまっては意味がないのである。
メイプルは取り敢えず泉の辺りを上空から探索して、様子を見てから考えることにして指示された方向へと進んだ。


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