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痛いのは嫌なので防御力に極振りしたいと思います。 作者:ユーキャン
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防御特化と大失敗。

いつもよりちょっと短いです。
翌朝。
楓はベッドからむくりと起き上がった。

「そわそわしてあんまり眠れなかった……」
体感七日ぶりのベッドに楓はむずむずして眠れなかったのだ。


楓は身支度を済ませると学校へと向かって歩き出した。

「今日は結構暑いなぁ」
楓は汗をかかない程度に急いで学校への道を進んだ。




教室に入ると既に理沙がいた。
二人はいつも通り早くに登校しているので教室には二人しかいない。

「おはよう楓」

「おはよう理沙!」
楓は自分の席に荷物を置くと理沙の元へ近づいていった。

「何だか学校に来るの、久しぶりな気がするよー!」

「確かに。まあ、七日も中にいればね…ああそうだ、楓も今日は気を付けた方がいいと思うよ」

「え?な、何に?」
気を付けた方がいいと言われても、楓には何に気を付ければいいのかが分からなかった。

「ゲーム内ではいつもモンスターやプレイヤーを警戒してたでしょ?ついついあっちでの習慣が出ちゃうかもしれないってこと」
理沙が言っているのはメイプルやサリーとしての一面が、気を抜いた時に出てくるかもしれないということだった。

「でも、もう結構プレイして来たけど今までそんなことなかったよ?」

「まあ、念のためね?楓は今までに七日も連続してログインすることなんてなかったでしょ?」

「確かに…うん、分かった!気を付けておくね」
そうして話しているうちにチラホラと他の生徒が教室に入ってくる。
楓は授業の始まる五分前には話を切り上げて自分の席に戻った。








その日の帰り道。
フラフラとした足取りで自室に辿り着いた楓は枕に顔を埋めると叫んだ。

「……今日をなかったことにしたいいいいいっ!」
楓は今日一日を振り返る。




一限目。

「……すぅ…すぅ」
昨日そわそわしてよく眠れなかった楓は珍しく居眠りをしてしまっていた。
席替えによって窓に近い席になり、程よく日の当たる環境も眠気を誘う原因となった。
そして、居眠りすることが珍しい人は起こされるのだ。
理沙は既に起こされないタイプの人間である。
楓の隣の席の女子が教師に言われて楓をつついて起こす。

「ん…ん?…ふぁ…もう見張り交代?…あれ?」
伸びをしつつ中々に大きな声でそう言う。
楓の発言に教室がざわっとした。
楓は自分が今どこにいるのか思い出したが、既に遅かった。

「だから気を付けろって言ったのに」
理沙が小声で呟いて楓の方を見る。

「……授業に集中するように」

「は、はい…ごめんなさい」
これがやらかしその一である。





次は三限目終了後の休み時間だった。
トイレから教室に帰る途中の廊下。
移動教室のクラスがあったのか廊下の人通りは多かった。
その時たまたま、楓の後ろを歩いていた女子が他の生徒とすれ違う際にぶつかってしまい、手に持っていた教科書や筆箱を落としてしまったのだ。
当然、地面に落ちた際には音が鳴る。

「…っ!」
楓はそれはもう綺麗にターンを決めて左手を突き出して右手を腰に持っていく。
理沙に言われて何度も繰り返し練習してきた動きだった。

場所が場所なら完璧な反応だっただろう。
ただ、大盾も短刀もここにはない。

「え?えっ?」
急に目の前でポーズをとった楓を見て女子生徒が固まる。
楓はゆっくりと腕を引くとぎこちない笑みを浮かべて誤魔化し足早にその場を後にした。
もうこの時点で楓のメンタルはボロボロである。
流石に人前で二回も大失敗をすれば誰だってテンションが下がるだろう。


楓はもう失敗しないようにと自分の言動に気を付ける。
ただ、二度ある事は三度ある。
失敗しないようにしようと思えば思うほど失敗してしまうというのはよくあることである。




昼食後、体育。

体育館でのドッジボールだ。
楓と理沙は同じチームになった。
この時点で楓のチームの全滅はなくなった。
誰がどう頑張っても理沙には当たらないのだ。
相手チームが執拗に理沙を狙っているものの当たらない。
ゲーム内とは違い、ギリギリで避ける必要もないのだから当たる筈もない。

「相変わらず凄いなぁ…」
この時点で理沙を見るのを止めていればこの後の本日最大の失敗は起こらなかったかもしれなかった。

「……楓!」
理沙ばかり狙っていた相手チームが急に狙いを変えたなら、仕留められる確率は上がるだろう。
今回、狙いを変えた先にいたのは楓だった。
楓は理沙の方を見ていたため対応が遅れてしまった。

理沙の声に反応してボールの方を見た時には既にボールは楓に向かって真っ直ぐ飛んできていた。

以前の楓なら咄嗟にしゃがむなり横に跳ぶなりしたことだろう。

ただ、ここ最近の飛んでくる何かに対する楓の回避方法はそうではなかった。

「【カバームー…あっ!」
ギリギリで気付いて両手で咄嗟に口を塞いだものの、その状態ではボールを避けることも受け止めることも出来なかった。

顔面セーフは適応されなかった。

「楓!?大丈夫?」

「大丈夫…」
楓にとって、急に楓が何かを叫んだことについて話していることを除けば問題なかった。
ここにいる女子達が理沙を除いて誰一人としてNewWorld Onlineをプレイしていなかったため、楓が何と言ったかよく分かっていなかったことは不幸中の幸いだった。

「ちょっと休んでおく…」

「それがいいよ」
楓は壁に背中を預けて項垂れた。







これが今日の失敗の全てである。

「……ちょっとの間だけゲームは止めておこう」
ここから三日間、楓は念のため一度もログインしなかった。
その成果が出たのか、それとも決意したことが効いたのか。
三日後には楓が失敗することは全くなくなった。










この「三日間」楓はNewWorld Onlineについての情報を一切取得していません。
理沙も気をつかいました。
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