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痛いのは嫌なので防御力に極振りしたいと思います。 作者:ユーキャン
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防御特化とイカ退治3。

「私の攻撃であれだったから…」
サリーがすたっと着地しながら呟く。
隣ではメイプルが落ちてきていた。
二十五メートル落ちたところでダメージなどない。
すさまじい耐久力である。
対してイカは比較的HPと防御力が低めだった。
サリーの攻撃でもHPバーがガリガリ削れていたことからもそれは明白だ。
そんな巨大イカがメイプルの強攻撃を受ければ、一撃でHPが二割減ったとしてもおかしくないことだった。

「これで、あと三時間にまで短縮出来たね」

「それでも後三時間かぁ…」
メイプルの【悪食】はもう残っていないのだ。もう一度同じことは出来ない。

「あ、またイカスミ吐いた」

「海、綺麗だったのに今となっては…」
イカスミと毒液で元の綺麗な青色はもう影も形もない。

「じゃあ、私また逃げてるね?」

「うん。【挑発】!」
メイプルは魚を引き受ける。
魚が撒き散らした水は炎系攻撃で消すことが出来るため、サリーは最低限の道を作りながら走り回る。

「よくあんなに走れるなぁ…」
ゲーム内での疲労はVRゲームへの慣れで軽減することが出来る。
走り回っても疲れないためには、長い時間プレイして慣れなければならない。
それはスキルではカバー出来ない部分である。
そうして待つこと二時間。
イカのHPは残り一割となった。

「あれ?魚が…」
魚達はその身に纏っていた青いエフェクトを失い、そのまま体の水分までも失って一瞬にして風化していった。
消えたエフェクトは宙に浮かび上がりイカの体に吸収されていく。

「何か来るよ!」

「分かった!」
メイプルは大盾を構える。
【悪食】が無くなった後でやっと盾らしい使い方が出来るのだ。


巨大イカは一つ身震いをすると魚達が纏っていたものと同じ青いエフェクトに身を包み水中から飛び出した。
力強い青い光はその巨体をしっかりと支えている。

「来る!」

「【カバームーブ】!【カバー】!」
メイプルが叫んだのとイカが突撃したのは同時だった。
念のためにと【カバー】したメイプルが跳ね飛ばされて攻撃をその身で受けてしまっているうちにサリーは回避することが出来た。
飛び出したイカは逆側の水の壁にザブンと入っていった。

メイプルのHPバーが四割程削れている。


【カバームーブ】で二倍になったダメージが入っているのだ。
メイプルの装甲を火力で貫通する相手を見たのはサリーにとってはまだ二回目である。

「パワーアップか…っ!」
サリーはメイプルに【ヒール】をかけると巨大イカを目で追う。
近づいてくるということは攻撃のチャンスでもあるのだ。

「躱して…斬る!」
サリーが意気込むがイカの狙いはメイプルだった。

「【超加速】!」
メイプルを狙うイカをサリーが狙う。
速度低下を受けつつもダガーを振り抜いていく。

「【トリプルスラッシュ】!」
サリーは六連撃を加えつつイカの真下を抜けていく。

「【ポイズンランス】」
メイプルの毒槍がイカの頭部に突き刺さる。
メイプルも突進でのダメージを受けるがイカのダメージも大きい。
ザブンと再び水中に飛び込んでいく。

「次で倒す!」

「もうちょっとだよ!頑張ろう!」
二人は突進に備えてイカの動きを追っていく。
貴重なチャンスを最大限に生かすためである。

そんな中イカが身構えて飛び出そうとする。

「来るよ!」

「うん!」
二人がバッと武器を構えたところで。



毒に侵されたイカのHPバーがついに消し飛んだ。

「「え?」」
イカの体は光となって消えていく。
汚れていた水が浄化されていく。
輝きは水中に差す太陽の光のようにキラキラと水の中で揺れて、次第に消えていった。

「………スッキリしない」

「………分かる」
二人にとって納得のいかない勝ち方だったのである。

とはいえ、勝ちは勝ちである。
二人の目の前には深い青色の魔法陣が現れた。

「乗る?」

「報酬は?」

「んー…何かあるかもしれないし、水中探してくるね?」

「お願いします!」
サリーが水の中に入っていく。
毒は無くなっているため存分に探索することが出来る。

「シロップもウミガメなら行かせてあげられたんだけどなー」
メイプルはサリーが泳ぎ回るのを眺めていたが、しばらくするとサリーが戻ってきた。

「イカの触手が一本だけ」

「メダルは?」

「うーん…無かったと思う。珊瑚の周りもきっちり探したし…何より、報酬を分かりにくいところに出したりしないと思うんだよね」

「確かに…」
メダルが無いことにがっかりしつつ二人は魔法陣に乗った。


崖の上に戻ると思っていた二人は転移先が水中だということを予想すらしていなかった。

「い、息が!ど、どうしよう!?」

「ん、ん?メイプル!息出来るよ!」

「え!?あ、あれ?本当だ…」
言葉も問題なく発することが出来る。
水の感触はあるものの窒息するようなことは無いようだ。

「不思議な場所…」

「ここが【青ク静カナ海】?」
サリーの言うように二人のいる場所は静かだった。
二人が黙ると泡の音だけが断続的に聞こえる青い海。
海の底にいるようで、それでいて水面に近いようで。
今にも眠ってしまいそうになるような、落ち着く青に支配されたその空間には、珊瑚に包まれるようにして青い宝箱が置いてあった。

「開けるよ?」
中にはメダルが二枚と巻物が二つ。
メイプルはメダルをしまい込む。
サリーは巻物を手に取って情報を見る。

「スキル名は?」

「【古代ノ海】水系のスキルを持っていることで取得出来て…さっきの青い光を纏った魚を呼び出せるってさ」
サリーの言うさっきの魚とはイカとの戦いで嫌という程見てきたあの魚達だ。
サリーが読み上げたところ、あの液体にはやはり【AGI 10%減】の能力が備わっていた。
メイプルにとってはあまり使い所のないスキルではあったが、サリーならばより戦略の幅を広げられるだろう。

「あー…【毒竜ヒドラ】じゃ駄目?」

「流石に水系ではないと思う」

「だよね」
一応試してみたもののメイプルは習得することが出来なかった。
メイプルは取り敢えず今は保留にしてインベントリに巻物をしまい込む。
宝箱を閉めると二人は寝転がった。
長い戦いと五日目の廃墟探索で疲労が溜まっている。
五日目はカナデと出会ったところから始まったのだ。
この日も濃厚な一日となったことを二人は感じていた。

「一日くらいはゆっくりしてもいいかもしれない」

「あはは…確かに」
メダルに余裕が出来れば七日目くらいはのんびり出来るかもしれないと思いつつ二人は眠ることにした。
ここは寝るにはちょうどいい場所だった。

「ちょっと…休んでいこう」

「そうだね…」
二人を包み込む静かな海は、今までで最も心地よい寝床になった。




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