挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
痛いのは嫌なので防御力に極振りしたいと思います。 作者:ユーキャン
41/152

防御特化と水晶洞窟。

体調不良と急用が重なり更新が遅れたことをお詫びします。
申し訳ありませんでした。
「さてと…安全地帯があるかどうか…」
サリーが呟く。
サリーは自分の集中力が切れ始めていているのを実感していた。
そろそろ致命的なミスが起こってもおかしくない。
そして、索敵を一手に受け持つサリーがミスすることはそのまま全員の死につながりかねない。

「頑張らないと…」
頬をペチペチと叩いて気合いを入れ直すと耳を澄ませる。

「左の道からは微かに音が聞こえる。右は大丈夫」
二人も耳を澄ませてみるも地響きに隠されてよく聞こえない。
代わりを務めることは出来そうになかった。

「急ごう、右にも現れたらまずい」

「ああ、分かった」

「うん、行こう!」
三人が早足で右の通路を進む。
そこにカタツムリの姿は無く、奥へと向かうことが出来た。

もしも三人が左に進んでいればの話だがその時はカタツムリに見つかっていた。
サリーの索敵はギリギリのところでその効力を失わずにいたのだ。


三人はしばらく進んだところで突き当たりにぶつかってしまった。
しかし、悪いことばかりではなかったようである。

「何かあるぞ!」
カスミが指差す先には一際大きな紫水晶があった。
そしてその中に閉じ込められるようにして入っていたのは古びた鍵と桜を模したイヤリングだった。
三人が近寄って見てみると、その紫水晶にはHPバーがあった。
つまりは破壊可能ということだろう。

「鍵は必要そうだし…持って行かないと駄目かな…」

「うん、私もそう思う」

「なら…私がやろう」
カスミが刀を抜いて構える。

「【四ノ太刀・旋風】!」
斬り上げ、斬り下ろしがそれぞれ二回。
高速の四連撃が水晶に吸い込まれる。
水晶はその連撃に耐え切ることが出来ずに、ガラスの割れるようなパリンという音と共に砕け散った。
カスミは地面に落ちた鍵とイヤリングを拾い上げるとそれを確認する。

「鍵には……説明文が無い。イヤリングは唯の装備だな。特に脱出に関係しそうではないぞ」
そう言って二人にも確認させる。

「うん、確かにそうだね」

「鍵は…どこで使うのかな?」

「さあ…?取り敢えずこのイヤリングはカスミの物で」
サリーがイヤリングをカスミに手渡す。
その後、少し話し合うと鍵もカスミに渡すことにした。

「それじゃあ…探索に戻ろう」
ここは行き止まりなので逃げ場がない。
三人は急いで引き返すことにした。

そうして、引き返した三人がしばらく探索して見つけたのは天井付近にある横穴だ。
通路の中程にあるそれは今までに見たことのないものだった。
三人がその中に何かあると思ったのも自然なことだ。

「あれ、入れるかな?」

「うーん……【跳躍】では届かないと思う…」
高さ十メートルの位置にある横穴に入るには【跳躍】では足りない。
三人が思案していたその時。

「………待って、静かに!…来てる!」
サリーの耳はあのグチョグチョという音を確かに聞き取った。


それも、両側から。


「挟み討ちは警戒してたのに!」
今まで一度も挟み討ちになることなく、そもそも遭遇すら少なくやってこれたのはサリーが全力で位置を読んでいたからである。
地響きの方向、大きさから距離と位置をおおよそ把握することで最適なルートを選んできていたのだ。
それがここにきて初めて崩れた。
カタツムリ一匹分の動きを読み違えたのである。

「あの横穴に入るしか…!」

「サリー、【跳躍】だ!後は私が何とかする!」
カスミが何をするつもりなのか聞いている時間は既に無かった。
両側からカタツムリが姿を現したのだ。

「【跳躍】!」
サリーがもしかすると届くかもしれないと、僅かな希望に縋ってみるものの、二人分の重量もプラスされたこの状況ではやはり足りなかった。

「【三ノ太刀・孤月】!」
カスミの体が空中で加速する。
システムにサポートされてカスミの体が撃ち出されるように上に跳ね上がる。
もちろん二人も引っ張られる。

カスミの体は空中で一回転して斬撃のエフェクトを残しながら前方向に進みつつ落ちていく。
それはちょうど横穴の入り口に向かっていた。
三人は転がり込むように横穴に突っ込んだ。サリーはすぐに下にいるカタツムリを確認する。
カタツムリはベチャベチャと粘液を振り撒いていたものの上までは届いていなかった。

「上がってくる手段は無さそう…かな」
サリーは一安心というふうに座り込んで水晶の壁に背中を預ける。

「はは…上手くいってよかった……」

「ありがとうカスミ。私の【跳躍】だけじゃ届かなかった」

「うん!凄かったよ!」

「孤月は外した時の硬直が長くてな……届かなければ動けずにカタツムリにやられていただろう…私としても賭けだったんだ」
一か八かの賭けは見事に成功した。
お陰で三人は久しぶりの休息を取ることが出来る。
この横穴はカタツムリが入れる大きさではないのだ。

「休むのもいいけど…先に奥をチラッと見ておかない?他のモンスターがいないとも限らないし…」

「………そうだな。それがいいかもしれない。ここのモンスターはカタツムリだけだと思い込んでしまっていた」

「うん、私もそれがいいと思うな」
三人の意見が一致する。
三人は立ち上がると横穴の奥へと向かった。
横穴は円形の広間に繋がっていた。
地面までの距離五メートル程の場所で、その部屋には六つの通路がある。
遠目に見てもカタツムリも通ることが出来る高さだと分かる。
そして、三人のいる横穴のちょうど正面の壁には一つの扉があった。
高さは二メートル程。
今までのボス部屋のような巨大な扉ではなかった。

「あれが出口なのかな?」

「ちょっと待ってろ。【遠見】!………鍵穴がある。恐らくさっきの鍵を使うのだろうな。間違いなく何かはあると思うぞ」

「なら……行ってみる?カタツムリの音はどの通路からもしないし」

「本当?」

「間違いないのか?」
二人にそう言われてサリーは再び耳を澄ませる。
どの通路からも音は聞こえない。
数分間耳を澄ませてみたものの結局カタツムリの音が聞こえることは無かった。

「大丈夫。何の音も聞こえないよ」

「なら……行くか」

「うん、そうしよう」
三人は地面に降り立った。



メイプルとカスミはサリーの索敵能力を信頼していた。
サリーは自分の能力に絶対の自信があった。
そしてその能力から導き出された答えに間違いなど無かった。
どの通路にもカタツムリはいなかった、いやそれどころかモンスター一匹いなかったのだ。



だが、結論を先に述べるとするならば。
やはり彼女達はあの横穴で休息を取っておくべきだったのだ。
彼女達の気付かないうちにその思考能力は確かに低下していたのだから。


そう。



降り立った後でその環境が変化するかもしれないということに三人共全く気付かなかったのだから。



水晶が急成長して横穴を塞ぐ。
そして全ての通路から、あの嫌な音が聞こえ始めた。
あのグチョグチョという気味の悪い音が。

「ま、まずいよ!」

「どうする!?」

「駆け抜けよう!それしかない!」
メイプルは今はフル装備だ。
しかし、装備を外して抱えている暇などない。既に通路からはカタツムリ達が這い出てきているのだ。
扉までの距離は二十五メートル。
普段なら大したことのない距離が、三人には酷く遠いように感じられた。


+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ