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痛いのは嫌なので防御力に極振りしたいと思います。 作者:ユーキャン
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防御特化と遭遇。

三万ポイント突破!
ありがとうございます!
「今日はこの洞窟から出られそうにないかな……」

「なら、寝床を探さないとな」
探索の目的に安全な寝床を追加して、三人は通路を右へ左へと進む。

「たまたま出口が見つかったらたらいいんだけどなぁ……」

「私もそれが一番かな…今日は疲れた」
メイプルとサリーには疲労が溜まっていた。今すぐにでも探索を止めて眠りたいくらいだった。
そして、何度目か分からない広間が通路の先に見えてきたその時。

「じ、地震か!?」

「今回は私も分かるよ!」
体感できる程には地面が揺れている。
そして、目の前の広間からはグチョグチョと気持ちの悪い音が聞こえ出した。
三人が戦う準備をしつつ広間を見る。

三人がいる通路とは別の通路から、それは姿を現した。
天井の高さから推測するに、高さおよそ五メートル、体長およそ七メートル。

巨大なカタツムリがズルズルと広間を横切っている。
幸い三人には気がつかなかったようで、別の通路へと消えていった。

「………やばい。あれは、やばい」

「HPバーが無かった……」

「ど、どうやばいの?」
メイプルが深刻そうな顔をする二人に恐る恐る聞く。

「HPバーが無いってことは……倒せないってことだ」

「鉢合わせないように安全地帯を探さないと……アウト」
三人の体は鎖によって繋がれてしまっている。
誰かが囮になることも出来ない。

「取り敢えずここから離れよう。あいつが戻ってくる前にな」

「うん、そうしよう」

「じゃあ、あっちの通路かな?」
三人は広間に入るとカタツムリが出てきた方とも、消えていった方とも違う通路へと急いで向かった。




「そうか……そのためにこのダンジョンはこの形なんだ」
サリーが呟く。
このダンジョンは蟻の巣のように伸びる通路と多くの行き止まり。
そして全ての場所で天井が高く、余計な障害物が一切無い。
そして、プレイヤー達はその体を鎖で繋がれている。
つまりカタツムリが動きやすくプレイヤーが逃げにくい構造になっていたのだ。

「もしかしたらこのダンジョンも時間によって難易度が違うのかもしれないな」
カスミの言う通りだった。
このダンジョンは午後六時を境にカタツムリの蠢く魔境に変わるのだ。
それが終わる時間も確かに存在するが、その時間を三人が知ることは出来ない。
そして、時間が経つにつれてダンジョン内の地響きが大きくなっていく。

「い、一匹じゃないのかな?」

「………かもね」
サリーが耳を澄ませて少しでも音の方向を探ろうとする。
近場からグチョグチョという音は聞こえてこない。
近くにはいなそうだ。
それでも、常に警戒しておかなければならないのは確かだ。
そのことがサリーの神経をさらにすり減らしていく。
そうして幾つかの分かれ道を進んだ時に遂にそれは起こってしまった。

「……っ!」
曲がり角を曲がった瞬間。
そこにいたのはカタツムリ。

「走れ!引き返すぞ!」
カスミとサリーが走り出すが、メイプルがついてこられない。

「やっ…ば!」
サリーがメイプルを助け起こすよりも早くカタツムリが迫ってくる。
カタツムリはその体を揺らしてビチャビチャと粘性のある液体を飛ばしてくる。

「くっ!」
大盾が液体を飲み込んだため、メイプルはすんでの所で液体を躱すことが出来た。

「サリー走るぞ!【超加速】だ!」

「っ!了解!」
どうしても逃げきれそうにない場合にと相談していた最終手段。

「「【超加速】!」」
二人の体が加速する。
メイプルの体が引きずられる。
並みのプレイヤーならこれでダメージを受けて死んでしまう。
そうなれば全滅だ。

しかし、メイプルは違う。
メイプルならばノーダメージで生き残ることが出来る。
といっても心地いいものでは無い。
それ故に最終手段なのだ。

ガシャンガシャンと鎧が音を立てた。
メイプルは大盾は咄嗟にしまったものの鎧には操作が間に合わなかった。

「後ろどう!?」

「大丈夫!追いつけてないよ!」
三人は何とか逃げきることが出来た。
しかし当分【超加速】は使えない。再使用出来ないうちに遭遇した時には死を覚悟しなければならないだろう。
そんな中、休む暇なくあのグチョグチョという音が聞こえ始める。

「……くっ…別の方からも来てる!」

「こっちだ!」
分かれ道を右へ左へと駆ける。
メイプルは装備を外してサリーが背負っている。
いつものスタイルだ。

「やっぱり!あのカタツムリ、音に反応してる!」
メイプルの鎧の音がしなくなって少しすると、近くから聞こえていたグチョグチョと言う音も遠ざかっていった。

「どうだ?いるか?」

「……近くにはいないかな?」

「はぁ……逃げ切れた…」

三人が壁にもたれかかる。
そこは通路の真ん中で安全とはとても言えないが、行き止まりに居座るよりはずっとマシだった。

「どうにか…出口を見つけないとな」

「うん、そうだね……」
相談するまでもなく方針は決まった。
長居するほど危険だ。
そのため急いで出口を探すことにしたのだ。

「このダンジョンにボス部屋はなさそうだし……メダルや装備は見つけたら回収くらいの気持ちで……」

「ああ、そうしよう。あのカタツムリがいるんだ…このダンジョンのコンセプトは探索なんだろうな」

「つまり……このダンジョン全体がボス部屋みたいな感じ?」

「まぁ、そんな感じ」
話を切り上げてサリーが出発の準備をする。

「見つかる前に行こう。入り口が上だったから……出口は下じゃないかな?」

「かもしれないね。絶対じゃないけど……」

「なら、下って行こう。上に行くよりマシなはずだ」
通路の中には緩やかな下り坂になっているものもある。それを見つけ次第その道を進んでいこうという訳だ。
三人は下へ下へと向かう。
途中で何度かカタツムリの姿を遠目に確認することが出来た。
それを見てサリーは確信する。


あのカタツムリ達がメイプルよりも速いということを。

つまり、普通に走っていては逃げられない。
曲がり角で鉢合わせた場合。
サリーがメイプルを背負うまでにはタイムラグがある。
その一瞬のうちにあの粘液をかけられればその場に捉えられてしまうだろう。
かといってメイプルが大盾をつけていてはサリーが背負うことが出来ない。
至近距離まで近づかれることは何としても避けたいところだ。

「ふぅ……集中しないと……」
疲れた体に鞭打ってサリーは集中力を高める。
サリーの索敵が三人の生命線なのだ。
慎重に慎重に音を立てないように進むうちに洞窟の見た目が変わり始めた。

「綺麗……」

「ああ…確かに」

「ちょっとは癒されたかも…」
洞窟の壁に紫の水晶が輝いている。
あちこちにあるそれは採取は出来なかったものの、その幻想的な光に三人の疲れた心は多少なりとも癒された。
さらに。

「天井が…低くなった?」
サリーの言うように天井は所々低くなっていた。カタツムリが通るにはギリギリの高さの所もある。

「でも……地響きは大きくなってるね」

「数が増えた代わりに地形が少しだけこっちに有利になったんだろう」
三人は進む。
出来れば今日の内に脱出してしまいたいというのが三人の願いだった。
あのグチョグチョという音が聞こえてこないことを祈りつつ、挟み討ちも警戒しながらの探索が始まった。

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